イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

第107号「歴史・美術記事を読む〜フィレンツェドゥオーモびっくり情報」

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 2016年2月29日発行のイタリア語学習メルマガ第107号「歴史・美術記事を読む〜フィレンツェドゥオーモびっくり情報」を、このブログに移行しています。


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Firenze, Toscana 19/10/2013


 今回は、まずフィレンツェの著名な建造物に関するオンライン記事の見出しを読んでみましょう。


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 何について書かれているか、すぐ分かりましたか。


"La facciata trecentesca della Cattedrale di Firenze

Forse tutti non conoscevano l'aspetto della prima facciata incompiuta del Duomo avviata da Arnolfo di Cambio; nel nuovo Museo una grandiosa ricostruzione."

- 引用元の記事: Opera Magazine 20 novembre 2015


 まず題を見てみましょう。


"La facciata trecentesca della Cattedrale di Firenze"


 facciataは、「顔」を意味する名詞、facciaから派生した単語で、「(建物の)正面・ファサード」を意味します。

 形容詞、trecentescoがどんな名詞から派生しているか、お分かりですか? そうです。数字の「300」を意味するtrecentoで、イタリア語では il Trecentoと、大文字で書き出して定冠詞ilを前につけると、「1300年代、14世紀」を指すため、trecentescoは「14世紀の」という意味になります。

 ですから題名を訳すと、「フィレンツェ(司教座)大聖堂の14世紀のファサード」となります。

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Cattedrale di Santa Maria del Fiore (Duomo di Firenze), Firenze, Toscana


 続いて、副題を見てみましょう。


"Forse tutti non conoscevano l'aspetto della prima facciata incompiuta del Duomo avviata da Arnolfo di Cambio; nel nuovo Museo una grandiosa ricostruzione."


 2文目は、述語が省略された破格構文となっています。ニュースの骨子を簡潔に伝えるために、記事の見出しや副題では、名詞構文や述語省略文がよく使われます。

 tuttiの使い方に注意しましょう。前後の文脈や指示する対象なしに単独で使われる場合、男性複数形のtuttiは「すべての人、全員」、男性単数形のtuttoは「すべて、すべてのもの」という意味で使われます。

 訳してみますね。

「おそらくだれもが、アルノルフォ・ディ・カンビオが築き始めたドゥオーモの最初の未完のファサードの外観を、知らずにいたことだろう。新しく改装した(ドゥオーモ付属)博物館に、壮大な(かつての正面の)復元」(「 」内は石井訳、以下同様)


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Modello in legno della Facciata trecentesca del Duomo di Firenze 28/1/2016
実物大に再現された14世紀のファサード、ドゥオーモ付属博物館
 

 題だけ読んで、フィレンツェのドゥオーモのファサードなら、有名だから知っているのに、なぜだろうと思われた方もいるかと思いますが、実は、現在のファサードは19世紀に築かれた新しいものなのです。

 古いファサードの運命については、上の記事の最終段落に次のように記されています。


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Facciata trecentesca del Duomo di Firenze
フィレンツェのドゥオーモの14世紀のファサードの模型


“Mai proseguita al di sopra delle porte, la facciata originaria fu rimossa nel 1587 per volontà del granduca Francesco I de’ Medici che sognava di realizzare una di tipo rinascimentale.”


 難しい語彙が多いという人は、次の言葉の説明を参考にして、文章を理解するべく、繰り返し読んでみましょう。

“Mai proseguita al di sopra delle porte, la facciata originaria fu rimossa nel 1587 per volontà del granduca Francesco I de’ Medici che sognava di realizzare una di tipo rinascimentale.”

proseguita - proseguire「続ける、続く」の過去分詞 proseguitoの単数女性形。
al di sopra di… 〜の上に
rimossa - rimuovere「取り除く、撤去する」の過去分詞 rimossoの単数女性形。
・originario agg.(形容詞) 2.本来の、元来の;最初の
volontà s.f. 意志、意向
sognare vt 夢見る
realizzare vt 実現する、現実のものとする
rinascimentale agg ルネサンスの

 では、訳してみますね。


「扉より上部には建造が続行されることが決してなかった最初のファサードは、ルネサンス様式のファサードを1587年に(メディチチェ家のトスカーナ)大公フランチェスコ1世の意向によって、取り払われた。」


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Modello di Buontalenti per la nuova facciata del duomo di firenze, 1587-89 ca.
大公に再建を勧めたブオンタレンティ自身が新たなファサードとして考えて作った模型


 形容詞、rinascimentaleは、「ルネサンス、文芸復興」を意味する名詞、Rinascimentoから派生した形容詞ですが、イタリア語にはこんなふうに、名詞の語尾に-alがついてできた形容詞が多数あります。

 参考例をいくつか挙げておきますので、語彙強化にお役立てください。

《名詞+-al → 形容詞》

1. nazione s.f. 国民、国 → nazionale agg. 国の、国立の、国民の
2. fine s.f. 終わり、結末 → finale agg. 最後の
3. vita s.f. 生命、人生  → vitale agg. 生命の、重要な


 新しく改装されたドゥオーモ付属博物館に、14世紀当時の大聖堂のファサードが、実物大で再現されていること、その最初のファサードがどんなものであったかが、今回紹介したオンライン記事には書かれているのですが、そうした事情及び、本来のファサードの外観やさまざまな芸術家が提案したファサードの設計案、ファサードをめぐる歴史に興味のある方は、次のブログ記事をご覧ください。




 イタリアでは現在、全国各地で悪天候による被害が続出しています。旅行や留学を予定されている方は、身の安全を図るためにも、天気予報やニュースの情報をよくご確認ください。

Repubblica.it - Maltempo: sale a 6 il bilancio delle vittime. Fino a domani allerta nel Centronord 
第8号(1)「天気のイタリア語、イタリアの天気予報サイトの使い方」


*2021年3月追記:冒頭に添えた写真は、

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Firenze, Toscana 19/10/2013

2013年秋に、ブロガー招待イベントで、フィレンツェのドゥオーモのクーポラに登ったときに、クーポラからズームを使って撮影した写真です。




 また、今号をブログに移行するにあたって、次の号で紹介している新しいデ・マウロのイタリア語基本語彙辞典に基づいて、


記事の説明中の単語を、次のように色分けしてあります。

基本語彙2000語現代イタリア語で使われる語彙の86%を占める
次いで使用頻度の高い3000語
上のいずれにも該当しないものの、イタリア人話者がよく使うと知覚している約2500語


*ヤフージオシティーズのサービス終了のため、現在このブログに、イタリア語学習メルマガ「もっと知りたい! イタリアの言葉と文化」のバックナンバーを移行中です。バックナンバー一覧はこちら、メルマガ登録(無料)ページへのリンクはこちらです。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by ciao66 at 2021-03-31 09:23
フィレンツェのドゥオーモのファサードが今のものが素敵だと思うのですが、そこへ2度も行きながら、19世紀になって模様替えされたものだったとは初めて知りました。イタリアの美意識が凝縮したような、他に類を見ないような素晴らしいファサードですね。
Commented by tokotakikuh at 2021-03-31 15:26
懐かしいです・
この風景に・魅せられて・イタリアへ行きましたもの
その風景そのものでした
私が見た・フレンチェ・・
赤い屋根を、橋から眺めた日を思い出します
Commented by meife-no-shiawase at 2021-03-31 20:51
フィレンツェ。
20代のまだ若い頃に一度だけ行きましたs。
かなり昔ですが(笑)なおこさんのお写真を拝見したら、
あ~この色だったな~と街の色の印象が蘇りました。
懐かしいです。

今の状況が終わったらまた行きたいです~イタリア♡
Commented by milletti_naoko at 2021-04-03 05:30
ciao66さん、わたしも初めて知って驚いたのですが、イタリア人でもおそらく知らない人の方が多いと思います。このオンライン記事も、そういう前提で書かれていますもの。16世紀以降に考えられた様々なファサード案も、博物館では見ることができて、興味深かったです。
Commented by milletti_naoko at 2021-04-03 05:33
zakkkanさん、フィレンツェの風景に魅かれてイタリアに来られたんですね。思い出の風景が今も、まぶたにも心にも残るほど、きっとすてきな旅だったのでしょうね。
Commented by milletti_naoko at 2021-04-03 05:38
メイフェさん、なんと20代でイタリアを旅行されたんですね。そう言えばわたしも初めての海外旅行は20代で、赤毛のアンのふるさと、プリンス・エドワード島でした。

20代の頃と今ではきっと感じることや印象に残ることも違ってくることでしょうね。いつかきっとメイフェさんがイタリアに来られる日が早く戻ってきますように♪
by milletti_naoko | 2016-02-29 12:00 | Lingua Italiana | Comments(6)