イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

馬がつかず離れずなめた夫の車、恋か自己愛か食いしん坊か

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 土曜の夕方、クッコ山(Monte Cucco、1566m)で、標高1197mの駐車場に車を置いて、すぐ近くの小高い丘(標高1242m)まで歩いて登ってから、

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12/6/2021

再び駐車場へと、丘を下っていたときのことです。

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 かなり先を歩いていた、視力のいい夫に言われて、駐車場に置いた車の方を見やると、

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 どういうわけか、馬が1頭、他の馬たちから離れて、ぴたりと夫の車の横に寄り添っています。かなり近距離から、車の方をじっと見つめているように見えます。

 この馬はいったい何をしているのだろうと、わたしは馬を警戒させぬように、丘を下ってからは、駐車場の車の左を通って、いったん草原に出て、

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少し離れたところから、馬の様子を見守ったのですが、どうやらお馬さんは、わたしの視線に気づいたようで、車の左横から前へと歩いていきます。

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 でもやはり、車から離れがたいのか、馬がしばらく立ち止まっていたら、そのうち夫も車まで戻ってきました。

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 そうして、夫とこうしてあいさつを交わしていました。

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 車の周囲をぐるりと回って、異常がないかどうか確認してみると、後部ガラスに、お馬さんが長い間、舌でなめ回したか、それとも鼻面を押し当て続けたかと思わせるような痕が残っています。そうして、ハッチドアの左端に、普通に道路を走っていただけではつくはずのない草が、あちこちにへばりついていて、お馬さんはここも、なめたり鼻面を押し当てたりしていたようです。

 馬がこんなに車に魅かれるなんてと、初めてのできごとに、夫もわたしもほほえましいとは思いつつ、さらに車をよく観察しました。前にも横にも、同じように草やなめたと思われる痕はあるものの、痕跡が一番はっきり残っているのは、やはり車の後部です。とりあえず、車への害はないようです。

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 そうやって、わたしたちが車を点検したり、リュックサックを後部座席に置いたりしている間に、馬はいったん、車から離れて他の馬たちの方へ行ってしまいました。

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 ちょうどこのとき、夕日がクッコ山の向こうに隠れようとしていました。

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 そうして、その7、8分後、先ほどまで向こうにいた馬たちが、皆夫の車の近くにやって来ました。それまでいたところが日陰になってしまうので、まだ日が当たるところまで移動したのではないかと思うのですが、

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さっきのお馬さんがまた車の前までやって来て、鼻面が車に触れそうな距離まで近づいて、じっと車を見つめていたので、ひょっとしたら車が恋しいお馬さんが、1頭では恥ずかしいからと、他の馬たちにいっしょに来てほしいと声援を求めたようにさえ感じられます。

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 小馬も、顔をすりつけようとしているのではないかと思われるほど、車に接近しています。

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 車がすっかり馬に取り囲まれてしまい、後ろにも馬がいたので、車に乗り込んだわたしたちは、車が馬にぶつかってしまわないように、馬たちに遠ざかるように言い、そうして、山を下って、かなり遅めの夕食にと予約したレストランに向かいました。

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 山を下っている途中に、牛たちも見かけました。

 夫はこのとき、冬に凍結防止のために道路に撒かれていた塩が、車体のあちこちに残っていて、馬はそれをなめていたのではないかと言っていました。

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 でも、夫の車は窓ガラスも車体も、日光の当たる角度や日当たり加減によっては、こんなふうにきれいに、周囲の風景を鏡のように映し出すことがあるので、わたしはひょっとしたら馬は、車の窓ガラスや車体に映った自分の姿に興味を持って、あるいは魅かれて、いつまでも離れずに、なめたり見つめたりしていたのではないかとも思うのです。実際、野鳥の中には、家の窓ガラスや車のサイドミラーに映る自分の影を敵だと思って、攻撃しょうとくちばしでつつき続ける鳥もいて、これまでに何度か、そういう鳥を見かけたことや聞いたことがあります。ひょっとしたら、日の光にきらりと輝き、周囲の風景を映す車そのものがかっこいい、これは何だろうと思っていたのかもしれません。

 今もあのお馬さんは夫の車を恋しがっているのだろうか、それとも、週末は他にも多くの車が訪れただろうから、近づけたりなめたりできる車には事欠かなかっただろうかなどと、うれしそうに車を見つめるお馬さんとその表情を思い出しながら、ふと思うのでありました。

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Un cavallo stava vicino vicino alla macchina di mio marito
sulla quale rimanevano i segni di leccamento ed erbe.
Cavallo innamorato dell'auto, incuriositosto dal proprio riflesso
oppure goloso del sale rimasto sulla macchina?
Monte Cucco, Umbria, Italy 12/6/2021
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関連記事へのリンク
- 花いっぱい馬が草食むクッコ山
- 敵と恐怖を頭が作る

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by tokotakikuh at 2021-06-16 12:03
動物って
ガラス状に興味を示しますね
馬がこうした衝動をするとは?知らなかったですが
猫の場合
必ず、グルーミングをガラス窓にします
愛くるしい姿ですが、かなり汚れます(* ´艸`)クスクス

でも、自然のこの光景に、圧巻です
馬がここまで近づくとは?
癒されますね、ただし、やや怖いです、私は(* ´艸`)クスクス
Commented by milletti_naoko at 2021-06-16 15:34
zakkkanさん、たくさん馬がいる中で、この馬一頭だけが車に近づいて離れなかったというのも、なんとなめまわしさえしたのも、不思議でおもしろいのですが、なるほど、猫もそんなふうにガラス窓を使うことがあるんですね。

たまたまこのお馬さんが車の方を見やったときに、ガラス窓の方から自分と同じ方を見つめている馬がいて、さらにずっと自分の方を見つめ続けていたので、離れられなかったのかしらなどと、考えて楽しんでいます。自然の眺めもすばらしかったですし、馬に愛されてなめられる車というのも、そうそうないだろうと、興味深かったです。
Commented by mahoroba-diary at 2021-06-16 15:40
なおこさん、こんにちは。

お馬ちゃんや牛ちゃんたち、とっても可愛いですね。
車の中を見ていたのかな?ってちょっと思いました。
それとも車が美味しかったのかな?笑
お写真もとても綺麗ですね!雄大な自然が感じられます。
なおこさんがワクチンを打たれた場所のソロメオ村ですが、実はごく最近、ブルネロ・クチネリ著の人間主義的経営(日本語訳での表題)という本を読みまして、むせび泣くほどの感動でした。クチネリの経営哲学、その根底に流れる思想について考えていたところで、なおこさんの記事を拝読したので、またまた泣きたくなるほどの感動!だったのです。
近いうちに拙ブログでも本について触れられたらと思っています。
Commented by meife-no-shiawase at 2021-06-16 23:14
え~なんでしょう?
すごく不思議なことですね。
それにお馬さんたち、すごく穏やかそうで
ご主人さまが触っていらっしゃるのが微笑ましい~♪

それに車の窓にお馬さんの残した形跡。
ちょっと笑っちゃいました。
うちはワンコが外を見たくて窓に顔を近づけるので
湿った鼻についている水分(鼻水?笑)が
車の窓にくっつきます。
すぐに拭かないとへばりつくのですが、そんな
後も愛おしいと思ってしまいます。
お馬さんのそんななめた跡を想像しちゃいました。
Commented by yuki0901671 at 2021-06-17 08:39
おはようございます!

私も北海道に行ったときいらい、
馬の可愛さにまいっています。
とくに牧場にいるときの馬は魅力的
ですね。使役や競馬馬になっていると
きとは全然違う顔をしていて癒されます。
Commented by nonkonogoro at 2021-06-17 10:35
馬に愛された車~
なんだか小説の題材になりそうですね。

愛されたのは
ご主人さまでは ないのね~

私は動物の生態を描いたコミックが好きで
いくつか読んでいますが
馬はおりこうさんのようですね。


Commented by sunandshadows2020 at 2021-06-18 22:14
穏やかな馬で良かったです。
何していたのか気になるところですね。
我がキャンピングカーが熊にぐるりと一周されたことがあります。足跡で分かりました。彼らはキャンピングカーの中の食品を狙っていた様ですが幸い窓など割られず助かりました。他の乗用車は車高が低いので簡単に窓を破られ中のお菓子などを取られた様でした。こちらの山岳地帯でよくある事です。
Commented by milletti_naoko at 2021-06-20 01:26
まほろばさん、時々山道を進んでいたら、通せんぼをする馬たちがいたり、顔をすり寄せたりしてくる牛がいたりするという経験はこれまであったのですが、一頭の馬がいつまでもいつまでも名残惜しそうに車から離れないのは初めて見ました。前の車は緑だったので、あまり風景や姿が映るということがなかったからかもしれません。

世界広しと言えども、馬に好かれてなめられた車というのは少ないだろうと、思い出してもなんだか不思議で、かわいらしくまた楽しくなるのですが、お馬さんが寂しがっていませんように。花がきれいで、風景もすばらしかったです。

ソロメーオについて書こうとして、日本では知られているのだろうかと調べてみて、著書のことを知ったのですが、まほろばさんは読まれて、そんなにも感動されるほどの本だったのですね。クチネッリは、ノルチャなど被災地復興の支援にも大きく貢献していて、わたしもすばらしいと感嘆しています。いつかまた機会があれば、わたしもぜひ読んでみたいと思います。まずは購入した本で読んでみたい本を読み終えていかなければ。

まほろばさんがいつか書かれるであろう記事、楽しみにしていますね。
Commented by milletti_naoko at 2021-06-20 01:31
メイフェさん、わたしもびっくりしました!

他に車も人もなく、馬たちも警戒心なしに、ずっとそこに止まっていて何も起こらなかった車や夫に近づいてきたということでしょうか。

そうなんです。車じゅうになめまわしたあとがあって、草がところどころに残っていて、どんな思いでなめたのだろうと、不思議に思いつつも、かわいらしかったです。

ジェイちゃんも窓ガラスに顔をくっつけることがよくあるのですね。馬は、こういう車の座席に入って、窓ガラスを中から見たこともないので、いったい何だろうと興味深くもあったのでしょうか。
Commented by milletti_naoko at 2021-06-20 04:18
yuki0901671さん、こんばんは!
北海道の牧場で馬をご覧になったんですね。
そうですよね。人でもやはり重労働や真剣な競争の最中とは違った穏やかな顔を、自然の穏やかな風景の中でも見せますもの。馬はなおさらそうでしょうね。
Commented by milletti_naoko at 2021-06-20 04:26
のんさん、小説や童話の物語が広がっていきそうですね。誤解を招きかねない題名であると知りつつ、こういう題名をつけてみました。なめてはないものの、夫自身からも、このお馬さんはつかず離れずだったように思います。

馬はおりこうさんなんですね! わたしも、昔むかし、『花とゆめ』を購読していた頃、動物のお医者さんを楽しみに呼んでいました。
Commented by milletti_naoko at 2021-06-20 04:35
お転婆シニアさん、確かにサルや牛やクマやイノシシだと、大変なことになる可能性もあるのですが、こういう場所に放牧されている馬は穏やかな性質の場合が多く、なめまわしたあとを見て、驚きました。馬と話ができたらいいのですが、話ができないので、理由はなぞのままです。

クマがキャンピングカーの周囲を回ったことがあって、なんと窓を破られて食べ物を取られた方もいるとは、それはどんなにこわい思いをされたことでしょう。イタリアでもクマはアブルッツォなどにはいて、ごくまれに村にも出没したりするようですが、今は日が暮れかけると、もっぱらこわいのはイノシシやオオカミ、そうして牧羊犬です。それにしても、山岳地帯でそんなにクマの出没や被害が多いとは!
by milletti_naoko | 2021-06-16 08:18 | Umbria | Comments(12)