イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

決戦の木曜日2、再び歯医者とワクチンと日本語能力試験対策

 今日は夫の2回目のワクチン接種の日でした。1回目の接種の前は、ただでさえ針が嫌いで、薬やワクチンには懐疑的な夫が、ワクチン反対派の知人や友人が送ってくるメッセージや情報に、どうしようかな、延期しようかな、やめようかなと言い続けていたので、当日会場に行ってくれるまで、果たして本当に接種を受けてくれるのだろうかと心配していたのですが、今日はすんなりと、時間前に自分から出かけていってくれたので、ほっとしました。


 そうして、前回は夫は、職場からワクチン接種に行って職場に戻ったのですが、今朝は在宅勤務でした。というわけで、接種会場にはうちから向かったのですが、なかなか戻って来ません。最初は、会場で待たなければいけないのだろう、途中で渋滞でもあったのだろうかと思っていたのですが、さすがに出かけてから2時間も経つと心配になってきました。ファイザーのワクチンですし、心配はないだろうと思いつつ、ひょっとしたら何か起こってニュースになってはいないかとまで思い、インターネットで検索して、何も出てこないので安心しました。夫は、それからしばらくして、無事戻ってきました。

 わたしは今日は、午後3時からオンライン会議、午後5時半から日本語の授業があったので、今朝は昨夜に引き続き、その準備をしていたのですが、実は正午から、歯医者の予約も入っていました。そうして、朝11時ごろになって、そろそろ会議や授業の準備を終えて、したくをして歯医者に行こうと思ったら、今している大きな仕事の契約の関係で、形式的でしち面倒くさい手続きに関する業者からの連絡と、夕方に予定されている授業についての生徒からの連絡があり、どちらにも返事をしたのに、さらに返答を必要とする返事が立て続けに届きます。連絡してきた業者は仕事の仲介業者なのですが、大本の業者にわたしたちが言われていることと、仲介業者がわたしたちに言うことが食い違っているため、返事をしながらもどうしたらいいものか困りました。生徒の方は、前回の授業のあとに、今日の午後5時半から授業をしようという話をしていたのに、すっかり忘れていたようで、それで何度も、互いに確認のためのメッセージをやりとりすることになりました。

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Santuario della Verna, Chiusi della Verna (AR), Toscana 27/6/2021

 おかげで、歯医者に着くのが、正午を若干過ぎてしまいました。この歯医者で、虫歯の治療や歯石除去が6月半ばに終わったその頃から、実は刺激を与えると鈍い痛みがある奥歯があったのですが、近くにある治療したばかりの歯の神経が過敏になっているのだろうと判断されていたのです。それが、いつまで経っても痛みが収まらず、食べているときにまで感じることがあるようになったので、火曜に電話をかけたのですが、予約が取れたのは、今日木曜の正午でした。

 じっくり診てもらった結果、「治療してまもない親知らずが、まだ神経過敏で痛むのでしょう」とのことで、いったんは様子を見ることになったのですが、わたしが、「奥歯の間にずっと何かがはさまっているような感覚があるのに、それが自分では取れないのですが、そういう気がするだけでしょうか」と言って、左下の親知らずのあたりを見てもらったら、左下の奥歯の中に、敏感になっている歯があるのに気づいた歯医者がレントゲンを撮って、歯茎の下に隠れていた小さな虫歯が発覚したのでありました。というわけで悲しいかな、来週もまた歯医者に戻って、虫歯の治療を受けなければいけません。

 昼食を終えた頃に、「今日の授業では問題集のこのページから勉強したいと思います。」というメッセージが若者から届いていたので、オンライン会議が終わってから、準備をして、午後5時半からの授業に備えました。

 今日の授業では、これまでずっと見てきていた日本語能力試験(JLPT)の上級レベル、N1の模擬試験を終えて、読解の問題集を解き始めることになっていました。日本語能力試験にある模擬試験へのリンクは以下のとおりです。


 上級レベルの試験では、本当に力がある人が選別できるように、ひどく難しい問題を出す必要があることはよく分かります。かつて高校で国語を教えていた頃、先輩の先生方との試験問題検討会で、「石井さん、ぼくはこの選択肢、正解はアだと思うよ」と、先輩の先生方から厳しい指摘を受けたこともあるわたしは、日本語の上級レベルの、しかも選択肢だけの問題を作る難しさは、よく承知しているつもりです。

 それにしても、今日は、午後4時にオンライン会議が終わったあと、5時半からの授業で見ていく次の問題を見て、この問題は本当に、日本語の力を見る問題だろうか、それとも、日本の教育制度の知識や注意力を問う問題だろうかという疑問が湧き起こりました。

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引用元:『新しい「日本語能力試験」問題例集 - N1 試験問題例(PDF)

 わたしが教え始めた6年前、初級後半レベル、N4の合格レベルを目指していた頃から、若者は、漢字については、自分でも複数の問題集や参考書を購入して、ノートに書いたりして勉強をしていました。日本語で漫画を読むばかりではなく、数年前からは小説も読むようになり、本を読むことを通しても、漢字や語彙を学んでいます。

 それでも、「奨学金」や「橋」、「若人(わこうど)」の読みにつまずいているのを見て、日本でずっと暮らして学校教育を受けている生徒や学生と、外国に暮らして日本語を学ぶ人では、インプットとなる語彙や身につけている語彙に違いがあるのだなと、改めて思いました。「奨学金」や「橋」は、わたしがかつて高校で教えていた、どんなに国語が苦手な高校生たちでも、読むことができて、意味も知っていたはずです。

 「若人」が読めないのはさもありなんなのですが、「素人」や「玄人」、「仲人」は知っておいた方がいいと言い、「素人」は若者もすでに知っていたのですが、「なこうど」は言葉も、仲人の役割を果たす人の存在も知らなかったと聞いて、驚きました。

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引用元:『新しい「日本語能力試験」問題例集 - N1 試験問題例(PDF)

 33番の問題は、応募できる奨学金はどれだろうと、表のすべての項目をていねいに見ていかないと、正解を出すのが難しいと思います。34番の問題も、選択肢にある四つの奨学金の内容をつぶさに見ないと正解を出すことができません。

 そして、今日若者がため息をつきながら言っていたように、この問題は、与えられた制限時間ではとても解く時間が足りない読解問題の、最後の最後にあります。そのため、「たいていは、時間がないので適当に記号を選ぶことになる」のだそうですが、正解を出すまでにひどく時間がかかる上に、日本語力よりも、むしろ注意力を見るようなこの問題には、あまり時間をかけず、じっくり読めば正解になりやすい、本当に日本語の力を評価する問題に時間をかけた方がいいように思います。

 日本語の上級レベルの試験に受かろうと勉強する外国の方たちの立場に立って、実際に問題を自分で解いてみて、正解が気になるという方は、こちらのページに正解がありますので、ご覧ください。

 このあと、いっしょに解いた読解問題集の問題文も考えさせる文章だったのですが、すでに記事がかなり長くなり、夜も遅くなってしまいましたので、その問題文については、また別の機会にお話しできればと考えています。

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 どんなに難しいことも、少しずつ取り組んでいくことで、道が開けていくということから、6月27日日曜の夕方に訪ねたラヴェルナで見た、ラヴェルナ修道院と岩壁が夕日に茜色に染まる様子と、修道院からペンナ山の山頂へと登っていく階段の写真を添えておきます。前回の「決戦は木曜日」の記事のときにも、やはりラヴェルナ修道院の写真を添えていたことでもありますし。ダンテ没後700周年を記念しての天国ジェラートは、この日、ラヴェルナに向かう途中に、近くのバールに寄って買って食べました。

関連記事へのリンク
- 日本語能力試験 実力試しと弱点克服、JLPT公式サイトを模擬試験に活用
- 天国のジェラートおいしいダンテ没後700年記念

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by cocue-cocue at 2021-07-09 13:34
こんにちは。
問題を両方とも解いてみました。
また、意義のあるご指摘を興味深く拝読しました。

ご指摘のとおり、日本語能力を問うというよりは、日本社会で適切に対応する力ーールールを読み取るとか、細かい条件を見落とさないとか、そういったものを判断している試験に思えてなりません。

少し前に、私立や国立の進学を目指す「中学受験塾」の先生にこんな話をお聞きしました。
最近の首都圏の中学入試問題は、国語のみでなく、たとえば理科であっても読解力を求めているものが多く、下手すると理科の知識は不要で読み取り力だけで正解できるものが大半なんだそうです。
なんとなくですが、今回あげてくださった日本語能力試験の出題例と重なるように感じます。

ものすごく否定的な見方をするならば、このような検定試験の背後にある日本社会や、入試を実施する学校において、詳しく説明を必要とせずに物事をサッと理解でき、問い合わせや誤解に基づくトラブルなどの余計な手間を必要としない人を選び出す目的があるのかもしれません。

そんな邪推をしたくなる面が、今の日本社会にあるのもまぎれもない事実だと思うと、あまりいい気分にはなれません。
語学が文化や社会の影響から独立して存在することはできませんが、さは去りながら「日本社会への適応度合いの踏み絵」としての語学試験というのは、何かおかしい気がします。
Commented by milletti_naoko at 2021-07-10 21:42
cocue-cocueさん、こんにちは。問題を両方解いてくださったんですね。コメントもありがとうございます。

母語である日本語の力は、考えて判断を下す際の根本にあるものですから、結果的にはどの教科でも関わってくるとは言え、理科の知識を問わず、国語の力だけで解けてしまう問題では、本当に理科の力をはかることにはならないので困りますね。こうした受験塾の先生の言葉や経験が、今後、理科の問題が改善されていくことにつながってくれるといいのですが。試験というのは、受験者の勉強方法や勉強内容や、教える人の方向づけをしてしまう面もありますので、受験対策をしながら、理科や日本語の力が真の意味でつけていける、そういう試験であってほしいと切に思います。

おっしゃるとおり、几帳面に言われたことを遂行すること、間違いのないように精一杯心がけることは、日本社会ではことさら重要視されていますよね。日本語能力の試験であること、受験するために日本語を勉強している人のことを思うと、もっと日本語の力そのものを問う問題、言葉の意味や文脈が理解できているかを問う問題であってほしいし、そうでなければならないと思います。
by milletti_naoko | 2021-07-09 07:33 | Altro | Comments(2)