イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

思いがけぬことと災難 山を登れば、シビッリーニ山脈 ファルニョ渓谷

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 先日、切り立つ赤い岩が美しいファルニョ渓谷(Valle del Fargno)を歩いたときのことです。

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Valle del Fargno, Monti Sibillini, Marche 9/7/2021

 みごとな岩を撮影しようと、夫から遅れて歩いていると、「危険だから、ぼくのすぐ後ろを歩くように」と言います。

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 照りつける太陽と暑さを逃れるためでしょう、羊の群れが、行く手の岩壁の下にいるのを発見したからです。

 羊そのものは無害なのですが、羊の群れがいるときは、たいてい牧羊犬たちも近くにいて、わたしたちは、ペルージャ郊外やカステッルッチョの野山で、遠くからでも牧羊犬が吠えながら走り寄ってきたり、体当たりするように走りながら車を追いかけてきたりするのを見たことがあるので、ひょっとしたら犬たちが吠えたてて襲ってくるかもしれないと、夫は考えたのでしょう。羊飼いが近くにいれば、犬も言うことを聞いておとなしくする可能性が高いのですが、犬も人も姿が見えません。最近ではテッツィオ山でもシビッリーニ山脈でもオオカミがいるため、羊の群れの周囲には何匹かは牧羊犬がいるはずです。

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 牧羊犬は羊を守るのが任務ですから、よそ者が羊の群れに近づくのを見ると、それがたとえかなり遠くからであっても、吠えながら駆けてくることが少なくありません。

 そのためでしょう。そのままトレッキングコースを進んでいたら、羊たちのすぐそばを通ることになるため、どこかにいるに違いない犬たちが警戒してやって来ないようにと、「道の右を流れる川を渡って、しばらく向こう岸を歩こう」と、夫が言いました。

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 苦労しながら川を渡り、羊たちが後方に遠ざかるまで向こう岸を歩いてから、

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再び川を渡って、トレッキングコースに戻りました。この写真で前方、奥の方に見える山の高みまで、わたしたちはこの日、このあとに登りました。

 こうして川を渡ったすぐあとに、トレッキングコースに従って、また右の岸へと戻らなければいけなかったのですが、ちょうどその渡った先に、牧羊犬たちと羊飼いがいて、犬たちは皆、日陰での昼寝の最中でした。とてもおとなしい犬たちで、まったく吠えないので、ほっとしました。

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 そうして、緑の山の間に突然現れた断崖を後にして、

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目的地の山小屋に向かって、急な斜面を、まずは川の右手に向かって登り始めました。

 思いがけないこと、予期しないことというのがあるのが人生だと、ディーパクもよく言っています。そうして、危険だと身構えても、幸い危険ではないこともあります。



 実はこの日は、長い山歩きを終えて、ようやく駐車場に戻ろうとしていたとき、2匹の犬が吠えたてながらわたしたちに向かって駆けてきたので、驚きました。トレッキングコースの出発地点には、広い駐車場と給水場があるのですが、そこに大きなキャンピングカーが3台とまり、テントを立てて火を起こし、肉を焼く男が一人いて、その男の犬2匹が、つながれていないので、こちらに吠えかかってきたわけです。シビッリーニ山脈自然公園では、犬と歩くことが禁じられている場所が多いのですが、このトレッキングコースは犬と歩いてもいいことになっています。ただし、リードにはつないでおかなければいけないことになっています。にも関わらず、放し飼いの大きな犬が2匹、吠えながらやって来たので、夫が石を手に持って威嚇したら、その男が怒り出し、自分が悪いのに反省する気もなく、わたしたちが来たから犬がおびえてあんなふうに振る舞ったのだと言います。しかも、まるで自分が正しいように、近くにいるキャンピングカーの仲間たちに大声で話すのが聞こえるのです。長時間で標高差も高いトレッキングコースを炎天下に歩いて、疲れてはいたものの、すばらしい山歩きをすることができたと喜んでいたわたしたちは、すっかり気分を害されてしまい、そうして、この渓谷を後にしました。

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 翌日になって、この渓谷があるボロンニョーラ村の役場の人に連絡すると、その駐車場では、犬の放し飼いはもちろん、火を起こすのもキャンピングカーの駐車も禁止されているので、即刻、森林監視隊に連絡すると言ってくれました。規則を守って山歩きを楽しむ人々が安心して歩けないような違反行為をして迷惑をかけておいて、まるで自分が正しいように振る舞うなど、許されないことだと思います。3台ものキャンピングカーが駐車され、テントを立てて、焼くための肉まで準備していたということは、それだけ、夏にはここにキャンピングカーが駐車して、あるいはテントを立て、火を起こして、泊まる人が少なくないということでしょう。森林監視隊が、これからは目を光らせてくれて、こういう事態が起こらないようになることを願っています。

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All'ombra della roccia si riparano dal sole le pecore.
Meno male, erano tranquilli i cani da pastore.
Valle del Fargno, Monti Sibillini
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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ブログテーマ:お気に入りの場所やお勧めスポット・お店を教えて!
Commented by yako12ya at 2021-07-13 11:09
こんにちは。
尚子さんのブログを読ませていただきまして、どこにいようとも、危険はいつせまってくるかわかりませんし、人生、予期せぬ危険を考えていなければなりませんね。

なおこさんもいろいろ出歩いて、足が丈夫でなによりです。
最初の牧羊犬は大人しくて良かったですけど、放し飼いをして、自分のマナーの悪さを棚に上げ、尚子さんご夫婦を怒るとは非常識はどちらですか!ですよね。でも、ご主人さんは、いろんな事を知って歩いていらして頼もしいですね。(^_^)v
Commented by milletti_naoko at 2021-07-13 15:03
yakoさん、こんにちは。コメントをありがとうございます。何が起こるか分からないから、道の曲がり角が好きだと、赤毛のアンが言っていましたが、残念ながら、起こる予期せぬことが悪いことである場合もあるので、気をつけなければいけないなと思います。

こんなに行儀のいい牧羊犬たちには初めて出会いました。近くにいた羊飼いが「人に対してはおとなしいから」と言っていましたが、本当にその言葉のとおりでした。夫はいろんな意味で頼もしいのですが、最近はささいなことがきっかけて口論となり、ひどいときには殺人事件にまで発展する事件もまれにですが耳にするため、言い合いを傍らで聞きながら、はらはらしました。久しぶりに長い間歩いて、美しい風景を楽しむことができて、よかったです。
Commented by ciao66 at 2021-07-13 17:22
気持ちよく歩いていて、突然犬に吠えられるのも困ったもので、迷惑なばかりでなく、逆に居直ってしまう飼い主には困惑しますね。日本でも時々こういうことが有りますが、きちっとした牧羊犬のほうがずっと賢いと思ったのです!お怪我がなくて良かったです。
Commented by BBpinevalley at 2021-07-13 18:41
naokoさん、こんにちは。
イタリアは素晴らしい国ですが、規則を守らない人が多いところですね。
それが普通になってるような面もあって、市バスに無賃乗車したりが多いのには驚きました。
取り締まる方にも問題があるような?
公共のキャンプグラウンドなどには常にレンジャーが廻っていないとダメですよね。
人情味があって感性に富んだイタリア人は、四角張らないのが良いところでもありますが、裏目に出る場合もあるんですね。
Commented by milletti_naoko at 2021-07-13 19:49
ciao66さん、確かに飼い主にとってはよい子なのかもしれませんが、「戻ってこい」と飼い主が言っても言うことを聞くそぶりもなく、そういう犬を公共の禁じられている場所で放し飼いにして、しかも反省の念がかけらもないのは困ったものです。そうなんです。先に見た牧羊犬の方がはるかに賢いと思いました。

犬が人を噛む例も少なくなく、わたし自身知人の犬に噛まれたこともあり、ニュースでも友人からも聞いていますので、実際には怪我がなくて、本当によかったです。
Commented by milletti_naoko at 2021-07-13 19:58
BBpinevalleyさん、こんにちは。
人情味があっておおらかなのは、イタリアのいいところだと思うのですが、先日は、守るべきことを守らず、しかもまるで自分が正しいかのように振る舞われて、憤慨しました。バスや電車については、わたしも、そもそも賃金の払い方や取り締まり方を見直す時期に来ているのではないかという気がしています。いくら時々取り締まりがあって、多額の罰金を課しても、結局はまた繰り返す人も少なくないでしょうし、こうやって無賃乗車する人たちのために、ただでさえ苦しい公共交通機関の運営がさらに厳しくなっているだろうと思うからです。

たまに起こってしまう事件や事故を防ぐためにも、本当に日頃から点検をしてもらいたいものです。
Commented by 3841arischan at 2021-07-13 20:11
なおこさん、放し飼いの犬のお話は、以前も聞いたのですが、やはりいるのですね~
私も、近所の山道への散歩のときは、夫と一緒だと安心なのですが、一人だとやはり放し飼いの犬がいるので、そのコースは避けます!どこの国にも非常識な人はいますね!
オオカミが居るというのも、ヨ―ロッパですね!怖いです!

でも、この寄岩のところにいた犬は、大人しい犬で良かったですね~(*^_^*)
Commented by milletti_naoko at 2021-07-14 00:24
アリスさん、飼い主のできるだけ自由に犬を歩かせたいという気持ちも分からなくはないのですが、皆が歩く公共の道なのですから、皆の安全のために、やはり放し飼いは、牧羊犬の場合は許されてもいますし、それも仕方がないと思うのですが、してはいけないと思います。幸いラヴェルナではそういうことはあまりないのですが、誰もいないと思うのか放し飼いにしている犬がこちらに向かってきて、飼い主がリードにつなぐことが、残念ながらあります。万一大雨が降っても、土砂崩れが起こらないように日頃から対策を立てておくこと、もし人がいたら、その人に危害を与えることがないように、公共の場では犬をきちんとつないでおく、そうでないと、犬や飼い主は自由でも、他の人に迷惑や危害や不安を与えることになって、それは法でも禁じられているので、守らなければいけないと思うのです。奇岩の牧羊犬たちがおとなしくて、助かりました♪

出会って危険である確率は、おそらくオオカミよりもイノシシの方が高く、オオカミは人間を恐れているので自分からは近づかない(ただし犬が同伴している場合はその限りではない)と言われています。日本は、熊が出て危険という場所が多いなと、山登りをされる方のブログの記事を読んで、驚いています。
Commented by meife-no-shiawase at 2021-07-14 10:07
なおこさん、怖い思いをされましたね。
私もワンコを飼っているのに実は犬は怖いです。
小さい時に大きな犬に追いかけられたのがトラウマになっているのだと思います。

こちらでもリードをしないでお散歩をしている人がたくさんで
大きな犬でもそういう飼い主さんがいるので、
近寄ってくると心臓がバクバクします。

犬が苦手な人や怖い人もいるのでそのあたりはきちんと
配慮しないといけないです。
なおこさんが出会ったその飼い主さんの逆ギレにはちょっと「?」ですね。

お怪我がなくて本当に良かったです。
Commented by milletti_naoko at 2021-07-15 15:12
メイフェさんはなんと幼い頃に大きな犬に追いかけられたことがおありなんですね。飼い主にはかわいくても、他の人や犬にはどう反応するか予測できないところもありますし、イタリアでは、放し飼いの犬がつながれている犬に吠え立てたり、遊ぼうとするのか、襲いかかろうとするのか、そうやって近づいていくこともあり、つないである犬やその飼い主が困惑するのを見かけることも時々あります。自分のことだけしか考えない人が増えてきていること、少しぐらいいいやという思いが、こういう犬の放し飼いにもつながっているように思います。ありがとうございます。本当に、けががなくてよかったです。

ジェイちゃんはいつもとてもかわいらしいですね♪
by milletti_naoko | 2021-07-13 08:18 | Marche | Comments(10)