イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

美しい山 道阻む羊と忘れた登山靴、シビッリーニ山脈

 昨日は久しぶりに、最後まで青空の下で、シビッリーニ山脈(Monti Sibilini)を歩くことができました。

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Monti Sibillini 3/9/2021

 目指すアンブロ川の水源へは、急な傾斜をジグザグに下っていかなければならず、標高差もかなりあります。



 そのため、その下り道までできるだけ体力を消耗せずに行けるように、上の写真にある、土砂崩れのため、今は車での通行が禁止されている道路を歩いていって、尾根道の低い地点を通って、向こう側へと行くトレッキングコース(地図にオレンジ色で示したコース)の方が、距離がずっと短いのでいいのではないかと、わたしは前夜からずっと考えていました。

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http://www.sibillini.net/il_parco/gps/mappaSisma.jpg?v=1.0

 夫の持つ古いシビッリーニ山脈の登山ガイドの本には、「尾根道の低い地点へと登っていく道は急斜面にある」とありますが、ピントゥーラからこうして尾根を越えて歩いていくトレッキングコースは「楽に歩けるトレッキングコース(Percorso facile)」と書かれています。それを読んで、なんとか夫を説得しようと、地図をコピーしたり、本を読み返したりしていたら、けれども、出発地点のピントゥーラ(Pintura di Bolognola)に着いて、さあ歩こうというときに、登山靴をうちに忘れてきたことに気づきました。

 登山靴を忘れたことに気づく直前に、なんとか夫の説得に成功していたものの、前述の「尾根道の低い地点へと登っていく急斜面にある道」は、運動靴でも登れるものかどうか分からなかったため、結局、夫が考えていた前回とほぼ同じ道(地図にピンクで示した道)を歩いていくことになりました。

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11:45

 ただし今回は途中ですぐに左手に曲がり、前回はたどり着くのに急斜面を登って苦労した道を、早くから歩き始めました。昨日歩いた道は、地図に青色で示しているトレッキングコースです。

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13:41

 長い登り道のあとで、右手に大きく曲がり、標高1708mの地点まで来ると、前方にシビッリーニ山脈の高峰が見えてきます。写真のほぼ中央、山頂が最も近くに見える山は、プリオーラ山(Monte Priora、2332m)、その右手に見える尾根道がなだらかに右へと下っている山はピッツォ・ベッロ山(Pizzo Berro、2259m)、そのすぐ右、山小屋のすぐ後ろにそびえる山は、ピッツォ・トレ・ヴェスコヴィ山(Pizzo Tre Vescovi、2092m)で、右端に頂上が一部小さく見える山はアクート山(Monte Acuto、2035m)です。そして、プリオーラ山の左手奥、写真の左端に山頂が見えているのが、シビッリーニ山脈(Monti Sibillini)の名が由来するシビッラ山(Monte Sibilla、2173m)です。

 先日は、ここで道の左手に見えていたアマンドラ山の山頂(写真には写っていません。記事はこちら)まで歩いて、出発地点に引き返したのですが、昨日は、アンブロ川の水源へと下る分岐点まで、この244番トレキングコースをまっすぐ歩いていきました。前方に見える山小屋のテラスで、昼食を食べると、見晴らしがすばらしかったです。

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14.55

 昼食後、さらに道を歩いていくと、高峰が間近に迫り、左手に、243番トレッキングコースが見えてきます。やはり左手に見える建物は、Casale Ara del Reだと、今調べて知りました。

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15:02

 アンブロ川の水源(sorgente dell'Ambro)へと下っていく砂利道とトレッキングコースがある分岐点(1648m)までやって来ました。写真はその分岐点から、水源がある方向を撮影したものです。目前にプリオーラ山(Monte Priora、2332m)、その右にピッツォ・ベッロ山(Pizzo Berro、2259m)の山頂が見えています。

 けれども、その時点で午後3時になっていて、この標高1648mの分岐点から標高1245mの水源まで下って、さらに再びここまで登り、出発地点まで戻っていては、帰りが遅くなってしまいます。出発地点から家までは車で約1時間半で、夫が欧州女子バレー選手権大会の準決勝、イタリア対オランダ戦を午後8時から観戦したいと考えていたこともあり、昨日は、水源までは行かずに、出発地点に戻ることにしました。

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15:12

 この写真で、左手に見えるのが、わたしたちがこれまで歩いてきた道で、この道はこのあと、斜面を下っていき、途中で、アンブロ川の水源に向かうトレッキングコースと合流します。この道を引き返せば、来た道を通って、出発地点のピントゥーラに戻ることができます。

 夫もわたしも疲れていたので、もともとわたしが歩いていきたいと考えていた近道、つまり、上の写真の右手の道、夫が歩いている244番トレッキングコースを登って、右手に見える尾根道の最も低い地点を越えて、出発地点に戻ることにしました。

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15:27

 峠へと登る途中で下方を見やると、わたしたちが歩いてきた道とアンブロ川の水源へとジグザグに下っていく道、緑の渓谷とその向こうの景色が見えて、眺めがすばらしかったです。

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15.36

 ようやく尾根道の最も低い地点にあるバッセーテ峠(Forcella Bassete、1701m)に到着しました。ここでトレッキングコースは、ピッツォ・トレ・ヴェスコヴィ山の山頂へと進むE6番トレッキングコースと、夫の姿が見える右手へと反対側の斜面を下って、ピントゥーラとファルニョの山小屋(Rifugio del Fargno)を結ぶ道、313番トレッキングコースへと向かう道に分かれます。

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15:40

 道は心配していたよりもずっと歩きやすく、見晴らしもすばらしく、ところどころにきちんと道しるべもあったのですが、下方に目指す313番トレッキングコースが見えてきたとき、夫がそのわたしたちが歩こうとしている道に、羊の群れがいることに気づきました。

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15:51

 途中からトレッキングコースが急になり、また砂利道で歩きにくいので、注意しながら下っていきました。ところが、もう少しで313番トレッキングコースである道路に出ようというとき、わたしたちが斜面から道路へと降りなければいけない、その辺りに、ちょうど羊の群れがいて、もちろん牧羊犬たちもいます。

 トレッキングコースはさらにしばらく左手へと向かい、そうして下方の道路へと下っていくように見えました。

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15.53

 いつまで経っても羊の群れが動かず、と言うよりは、どんどんこちらにやって来て、また、どちらの方向に向かっていくかが分からないため、わたしたちもどう動いていいか分かりません。そこで夫が、こんなところに立って、下方の羊飼いと話をするのですが、崖っぷちで危ないので、こういうところに立つのはやめてほしいと、常々思っています。

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 羊たちがこうして次から次へとやって来たのは、この崖の下に、給水場、Fonte Basseteがあったからです。

 夫があれこれと羊飼いに尋ねたのは、牧羊犬がおとなしく危害を加えないかどうか、羊たちがどちらに向かうのかを知りたかったからなのですが、この羊飼いはぶっきらぼうで、「トレッキングコースはここではなく別の方向に向かっているんだ」と答えるばかりだったようです。そうして、おそらくは本来わたしたちが下っていくべきコースだった細道を羊たちが次々に登ってきます。

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 おかげですぐ下方に見えていた道路まで下ることができず、羊の群れや牧羊犬からできるだけ離れようと、こんなふうに、道なき山の急斜面を、草に滑りながら歩くことになり、羊たちがはるかかなたに遠ざかってから、道路に降りて、出発地点へと道を歩いていきました。

 この道は、おそらくは行きに通った方が眺めがよりすばらしかったように思うのですが、それでも、ふり返りながら美しい高峰や渓谷を見ることができ、行きとは違う風景を楽しむことができました。歩く距離や時間も、行きに比べて、少なかったように思います。アンブロ川の水源までは行くことができず、羊の群れに遭遇して困りましたが、山や渓谷の美しい眺めを存分に楽しむことができて、よかったです。

 冒頭の写真は、ピントゥーラへと戻る途中に、時々見かけたアカバナ属の花(epilobio)がきれいで、見られてうれしかったので、来た道をふり返って撮影したものです。同じアカバナ属でも、アルプスやグラン・サッソで見かけるものと比べて、花はよく似ていても、つぼみのつき方が違い、丈もずっと低いので、また時間のあるときに、名前が分かるよう、調べてみたいと考えています。

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Un'altra bella passeggiata sui Monti Sibillini.
Stupendi i panorami soprattutto mentre camminavamo
sul sentiero 244 verso Forcella Bassete.
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関連記事へのリンク
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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ブログテーマ:お気に入りの場所やお勧めスポット・お店を教えて!
Commented by django32002 at 2021-09-05 12:27
”等高線”は世界共通の言語なんだなと感じてしまいました。
素晴らしい天気に恵まれてなによりでしたね!
Commented by sunandshadows2020 at 2021-09-05 14:48
画像を拝見して、今すぐ登山靴をスーツケースに入れたくなりました。
30分でスーツケース詰められます。
九十九折のトレイルを歩いてみたいです。
何となく秋の気配が漂っていますね。
Commented by milletti_naoko at 2021-09-05 19:41
django32002さん、ありがとうございます。最近は、登るたびに、午後になると黒雲が空を覆うことが多かったんです。久しぶりに晴天の下、すばらしい眺めを楽しみながら歩くことができました♪
Commented by milletti_naoko at 2021-09-05 19:51
お転婆シニアさん、30分でスーツケースをつめられるとはすばらしいですね! 自転車にしてもトレッキングにしても、つづら折りの道がお好きなんですね。確かに無理をせずにゆっくりと登り下りできますよね。

平日の金曜とは言え、今回も歩いていて十数人を見かけたものの、前回に比べるとぐっと登山客が減ったように思います。それもやはり夏が過ぎ去ろうとしているからでしょうね。
Commented by meife-no-shiawase at 2021-09-05 21:23
すごいですね~♪
羊の大群。数えきれないぐらいいます!!!
羊はおとなしくても、牧羊犬はやはり心配なのですね。
これだけの羊たちを誘導するわけですから
やっぱり威厳のあるワンちゃんじゃないと務まらないですもんね。

山が本当に美しいです。
心が洗われます。
Commented by milletti_naoko at 2021-09-06 00:16
メイフェさん、幸い最近出会った羊飼いたちは親切な人が多く、ぼくらの犬はおとなしくて人には危害を加えたことがないから大丈夫と言い、念のためにあえてわたしたちの近くにいてくれたのですが、今回は羊飼いがこういう人で、ひょっとしたら犬も気が荒いかも知れず、避けて遠回りをしました。

ありがとうございます。こんなふうに真上からですが、間近にたくさん羊を見たのは久しぶりです。風景が美しくて、感動しました♪
Commented by tokotakikuh at 2021-09-06 10:21
素晴らしい
パもラマに広がる光景は流石ですね
羊の群れを眼下にですね

何時も・リアルタイムで、見せて頂けると
旅へ誘ってもらっています
Commented by milletti_naoko at 2021-09-06 15:11
zakkkanさん、空が晴れていると、やはり見晴らしがことさらにすばらしく、下方の渓谷や遠くの山もよりくっきりと見えたので、登山が楽しかったです♪

こちらこそありがとうございます。わたしもzakkkanさんと共に、京都や周辺を散歩、旅するような思いで、記事を楽しみに拝見しています。
Commented by ciao66 at 2021-09-06 18:02
ずいぶん長い時間を歩かれていますね!
アンブロ川の水源に行けずに残念だったでしょうか、
もう少しで水源に迫ろうかという、
山の上からの眺めは絶景ですね。(15:27の写真)
次に期待がつながりそうな、
楽しみを後に残したような山行きでしたね!
冒頭の道ばたの赤い花が美しいと思い、
塊りになったヤギの大群にはビックリしました。
Commented by milletti_naoko at 2021-09-06 21:25
ciao66さん、ありがとうございます。水源は見られませんでしたが、晴れ渡った空の下、渓谷の眺めがすばらしかったです。

羊の大群、最近はあちこちで行きあたるのですが、この頃は親切な羊飼いや人にはおとなしい牧羊犬と会うことが多かったので、こんなふうに遠回りしたのは久しぶりです。羊の群れって、こんなふうに皆が群れて1箇所にいたり、移動したりすることが多いんですよ。
by milletti_naoko | 2021-09-04 23:59 | Marche | Comments(10)