イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

第131号「自由をはき違えるワクチン反対者 他の人々の健康と命を危険に、イタリア首相・大統領の戒め」

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 不安から自分はワクチンは接種したくないという人から、「ワクチン接種を受けない自由の侵害だ」、「行動の自由を制限するグリーンパスに反対だ」と抗議する人まで、イタリアでNo Vaxと呼ばれるワクチン反対者は様々です。ラ・レプッブリカ紙が7月下旬に報じたミラノ大学の調査結果によると、また、実際には、イタリアのワクチン反対派は、成人人口のわずか3%で、半数のイタリア人(la metà degli italiani)ワクチン(vaccino)の義務化に賛成であるとのことです。


 イタリアでは、ワクチン接種推進のおかげで感染を抑止することができ、経済活動や旅行などの余暇活動を楽しめる状況になっているにも関わらず、


 グリーンパスが必要な場面や機会、ワクチン接種が義務となる職種を増やしていくことが議会や政府で検討されている昨今では、ワクチン反対派が、各地で集会を催し、9月1日には、未遂に終わったものの、イタリア各地で鉄道の運行を阻止するとまで予告し、医師や政治家の自宅前に押し寄せたり、脅迫をしたりという過激行動に走る反対者も出てきました。

 先日は、警察(Polizia)が、武器や爆薬を用いてのテロ行為を計画していたワクチン反対者がイタリア各地にいることを突き止め、ミラノ、ベルガモ、ベネチア、パドヴァ、レッジョ・エミリアで強制捜査(perquisizione、perquisizioniは複数形が行われたという報道があり、ニュースでは、「ローマに着いたら、まずはジャーナリストを標的にして、テレビ局のバンを爆発させよう」という8人のワクチン反対派のチャットでのやりとりも報じていました。



 こうした状況の中、イタリア政府は、まずは国民の命と健康を第一にと考えて、まずはドラーギ首相が、さらに、マッタレッラ大統領も、感染拡大を抑止するには、接種可能な人がワクチン接種を受けることが不可欠であるとして、ワクチン反対者を断固として戒めています。




"L'appello a non vaccinarsi è un appello a morire, sostanzialmente. Non ti vaccini, ti ammali, muori. Oppure fai morire: non ti vaccini, ti ammali, contagi, lui o lei muore. Questo è."

「ワクチン接種を受けないようにという呼びかけは、つまるところ、死ぬようにと呼びかけるのと同じことです。ワクチン接種を受けない。病気になって、死ぬ。あるいは、人を死なせる。ワクチン接種を受けないで、病気になって、感染させ、彼や彼女が死んでしまう。こういうことです。」(「  」内は石井訳、以下同様)




 
 マッタレッラ大統領の言葉も、上のリンク先の記事に映像があるのですが、ここでは、要旨をまとめた記事から引用します。記事では割愛されているため、下記の言葉の中にはありませんが、大統領は、「健康上の理由からワクチンを接種しない人は別として」という前提で話を進めています。

"Non si invochi la libertà per sottrarsi dalla vaccinazione, perché quella invocazione equivale alla richiesta di licenza di mettere a rischio la salute altrui e la loro vita. Chi pretende di non vaccinarsi pur potendo e di svolgere una vita normale frequentando luoghi di lavoro o svago, costringe tutti gli altri a limitare la propria libertà, a rinunciare alla propria possibilità di recuperare in pieno luoghi e modi e tempi di vita."

「ワクチン接種を受けなくてもいい自由を、求めてはいけません。なぜなら、ワクチン接種を受けなくてもいい自由を求めることは、他人の健康や命を危険にさらす許可を求めることにほかならないからです。接種を受けられるにも関わらず、ワクチン接種を受けずに、職場や楽しむことができる場所に通い続けて普通の生活を送ることを求める者は、他のすべての人に、自由を制限することを余儀なくさせ、以前とまったく同じように暮らしの中で様々な場所を訪ねたり、生活をしたり、時を過ごしたりできる可能性を断念せざるを得ない状況に追い込んでしまうからです。」(後半は意訳)

invocare 【他動詞】…を希求する、嘆願する、求める、主張する
sottrarsi a... …から逃れる、免れる、避ける(映像では、大統領はsottrarsi alla...と言っています)
equivalere a... …に等しい、相当する、…と同じだ
richiesta 【女性名詞】 要求、要望、請求
licenza 【女性名詞】 許可、認可
pretendere 強く求める、法外な要求をする、断固として求める
svago 【男性名詞】 気晴らし、娯楽、楽しみ、趣味
frequentare 【他動詞】 …に通う、頻繁に行く、出入りする



 今日の午後のニュースでも、ワクチンでどれだけ感染や重症化・死亡の危険が防げるかという報道があり、また、ワクチン反対派の言うことに惑わされて、接種を受けなかったばかりに、亡くなった家族を悼み、接種を呼びかける記事やツイートも、最近では少なからず見かけるようになってきました。


 9月9日付のANSAのニュースは、39歳のワクチン反対者の女性が、新型コロナウイルスに感染し、2歳と7歳の子供を残して亡くなったと伝えています。家族と出かけた旅行先から帰宅後に感染が発覚して、ミラノで亡くなったこの女性は、断固としてワクチン反対を通し、家族全員がワクチン未接種だったとのことです。そして、夫や父親、母親も感染してしまい、母親は今、病院に入院中で、重態であるとのことです。

 このイタリア語学習メルマガにしても、ブログにしても、また、寄稿記事にしても、従来は、新型コロナウイルス感染症関連情報ばかりにならぬように意識して書いているわたしですが、最近SNSを通して、イタリアはもちろん、日本でいまだに声高に、ワクチンは陰謀であるとか、害の方が多いとかいう偽情報を流して、人々がワクチン接種を思いとどまる、あるいは反対するように仕向けている投稿を見かけることが多いので、危機感を抱き、今号でも、前号に引き続き、COVID-19関連情報をお伝えしています。

 せっかく大勢の命を救い、新型コロナウイルス感染を抑止し、撲滅していける頼みの綱であるワクチン接種が、どうかこうした誤った扇動的な情報で妨げられることなく、進んでいきますように。現在イタリアでは、いまだに接種できるワクチンがないために、子供たちは、接種を受けられずに感染して亡くなってしまう可能性があり、実際にそういう事例も発生してきています。自らや大切な人の健康と命はもちろん、子供たちや健康上の理由でワクチン接種を受けられない人々を感染から守るためにも、また、ワクチン接種を完了していても、わずかながら、重症化したり亡くなったりしてしまう可能性がある高齢者や基礎疾患のある人の命を守るためにも、接種可能な人ができるだけ接種しておくことが必要となります。皆の健康と命を守るためにも、世界中の各国ができるだけ早く取りはからって、多くの人が安全なワクチン接種を受けられることになりますように。そして、ワクチン接種を受けても問題のない多くの人が、偽情報に惑わされることなく、可能な機会が訪れれば接種を受けて、自分や家族、そして接する大勢の人の健康や命を守ることができますように。

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Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by BBpinevalley at 2021-09-12 12:50
こんにちは。
なおこさんのイタリア語訳と単語のリストがとても役に立ちます。

今回のテーマのAnti-Vaxxerについては、本当に腹立たしい気持ちになりますね。
アメリカでは、州知事が堂々とマスク反対論を押し付けていて、一体何を考えているのかと思います。
もちろん、そういう州の感染者数、死亡率はべらぼうに高いわけです。
ここまではっきりしたデータが出ても分からないとすれば、養老先生のおっしゃる『バカの壁』か、性格異常者としか思えません。
日本の昔からの諺、〇〇は死ななきゃ治らない、を思い出してしまいます。

ここに提示されたように、ハードコアなワクチン反対者は数字的には少ないので、そう行き渡るものではありません。
個人レベルでは、二人知っていますが、どちらも性格的に問題があるように思います。
両人とも、育った環境で極端に厳しい父親に反発して生きてきたこと。
上から押し付けられることを極端に嫌い、そのために余裕のない自分勝手な行動にばかり走ります。
ここでもまた日本の諺を思い出してしまいますが、三つ子の魂とは、本当に凄いものだと思います。
Commented by milletti_naoko at 2021-09-12 15:25
BBpinevalleyさん、お役に立てたと知ってうれしいです。今回は学習教材としての効率よりも、できるだけ多くの方に情報を知っていただこうという思いが先に立ったので、単語リストだけになってしまったこともありますので。

英語では、Anti-Vaxxerと言うのですね。BBCもイタリアのメディアも、次から次へとワクチン反対派が根拠として信じる偽情報のどこか誤っているのかを検証し、知らせるコーナーを設けたりもしていますが、残念ながら、日本でも、少数である反対派の方がSNSでの発信が多く、共有やいいねも多いのが気になって、この記事を書きました。人の不安や主義につけ込んで反対を煽ることも問題である上に、イタリアの場合は、極右などがその扇動や集会などでの暴力行動を計画したり実行に移したりしているという危険もあります。

英米でまったく対策を取らなかった国で、感染が急速に拡大したこと、当時ワクチンが存在していなかったけれど、より感染力の強い変異株が、英国で広まったことなど、考えれば分かりそうなものなのに、人の命に関わるというのに、いったい何を考えているのでしょう。世界保健機構や各国政府にだまされないと言って、でたらめな、国や人々を感染に導きやすい誤った情報を垂れ流すSNSなどにおける情報を信じて、しかもそれを拡散するとは。

イタリアではそれが、自由や政府に対する懐疑心がある人が多いからか、わたしたちの友人の中にも、ここまで極端ではないまでも反対者がいるんです。記事中ご紹介したように、だれかこう思い込んで家族さえ洗脳してしまい、本人どころか家族も感染して、命を落としたり重体になったりして、そうして感染を通して他の人の健康や命を危険にさらしたり、医療機関の逼迫につながったり、そういうことが実際に少なからず起こってきている状況であり、知らないがための、情報に振り回されたがための悲劇と結果として起こりうる国や地域における感染拡大、重傷者や死者の増加を、少しでも防ぐ一助になれたらと思い、記事を書いてみました。
Commented by tokotakikuh at 2021-09-12 15:30
日本人は
おおぴらに抗議するのが下手で、そして、しないことを
美徳と思う傾向ありです
ワクチン接種、私の友人も
受けてないのです、副反応・持病への懸念です
ただ、自粛を徹底してます

はき違えないでほしいのは
「他人にうつさない」これだと思いますよ

ワクチンしか、予防策がないのですから、今は
出来れば・進んで受けてほしいです
ただ、どうしても受けられない事情は考慮して
ただ、そのことで
「反対論者」が牙を向くのは、思考外です

日本で今一番嫌味なこと
それは、ノーマスクで歩いていると
あからさまに・嫌味な視線と、行動を目にします
これはね、おかしいですよ
誰にもあわない、大自然の中なのに
たまに出くわす時、その視線を浴びると
気分がダウンします

日本人の生真面目さですがね・・(笑)
Commented by milletti_naoko at 2021-09-12 15:49
zakkkanさん、持病から、またワクチン接種を受けて健康や生命に危険があるのであれば、受けないのはもっともだと思います。イタリアではむしろ、自身はワクチン接種を受けられない人たちの命を守るためにも、可能な人がワクチン接種をすることを、政府や保健省が推奨している状況です。

イタリアで問題になっているワクチン反対者は、医療従事者のワクチン義務化や学校の教職員が学校に入るのにグリーンパスが必須となること、あるいはレストランや映画館などの屋内でグリーンパスが必要となることに対して反対集会を開いているのですが、ワクチンは受けないけれども、自らの行動を制限したくない、自分は自由に屋内席で食事もしたいし、映画を鑑賞したりサッカーのスタジアムで応援したりしたいと考えていることや、誤った情報を流して、本来ならばワクチンを接種して命や健康を守れた人の命まで危険にさらしたりしていることです。

互いに十分に距離が取れるのに、それでも顔をしかめるのは困りますね。日本ではそういうことはおそらくまずないのでしょうが、わたしも、互いの距離が1メートルもない距離まで近づくのに、相手がマスクをしていないとそうおいう顔になってしまうように思います。
Commented by ニャン子 at 2021-09-17 00:47 x
私は知人が何人も副反応で辛い思いをしていたので(痙攣数回、一月以上続く吐き気、視力激低下、高熱など、人それぞれです)ちょっと怖くて迷ってます。
なおこさんはとても知識も学力も高い方なので、なぜワクチン反対派の人があんなに反対してるのか、解明してみてください!
すこくたくさん副反応の人の写真やビデオや体験談があって、それを見ると怖いんですよね....
Commented by milletti_naoko at 2021-09-20 15:55
ニャン子さん、副反応で辛い思いをした方をたくさんご存じなのですね。昨秋からこの春にかけては、ウンブリア州の特にペルージャ県では感染がひどく深刻で、わたしは新型コロナウイルスで元気だったのに亡くなった人や、生死の境をさまよった人を実際に数多く知っています。実際に副反応があった方ももちろんおいででしょうが、統計的には本当に深刻な反応があった人はごく一部であり、反対を煽るような偽情報に踊らされている人が多いのではないかと思います。

厚生労働省の次のページが、そういう情報の真偽について詳しく説明していますので、ぜひお読みください。

・厚生労働省 - 新型コロナワクチンQ&A - これは本当ですか?
https://www.cov19-vaccine.mhlw.go.jp/qa/truth/
by milletti_naoko | 2021-09-11 22:22 | Covid-19 Italia | Trackback | Comments(6)