イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

歯医者・抗生剤哀歌と秋の庭の花

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 イタリアの行きつけの私立歯科医院での、わたしの左の奥歯の神経を抜く治療は、7月8日に歯医者に行って見つかった、歯茎の下に隠れていたという軽い虫歯を、7月15日に治療していた際に、虫歯が軽微であるにも関わらず、麻酔がまったく効かずに、わたしが痛みを訴え続けたことから、歯医者が方針を変更して始まったものです。


 大臼歯(molare)で神経が3本あるので時間がかかるとは聞いていたものの、あまりに何度も通うので、義父母たちから、「腕は大丈夫なのかい。歯医者を変えた方がいいんじゃないかい」と、歯医者に行くことを告げるたびに心配されていました。9月に入って歯医者から「あと2回ほどで終わると思いますよ」と聞いていたのに、その後、治療が終わってから、「根管が閉じているから、これはまだ長丁場になります」と言われ、先週はようやく、「すべてうまく行けば、来週には閉じることができると思いますよ」と聞いたので、ようやく辛い治療が終わるのかと期待しました。ところが昨日も、予期していたよりも早く治療が終わり、「すべて順調に行っているのですが、炎症があるので、3日間朝晩抗生剤を服用してください。次の治療で、終わりになりますよ。」ということになりました。

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 そうして、歯医者が抗生剤(antibiotico)を処方してくれたのですが、判読が難しいので、医師に聞いて、裏に「3日間朝晩服用すること」とわたし自身がペンで書いておきました。

 問題はこのあとです。薬局で抗生剤を購入するには、歯科医が書いてくれた処方箋を、診療所にいるかかりつけ医(medico di famiglia)に見せて、impegnativaを発行してもらう必要があるからです。impegnativaの語義は、伊和辞典には「(健康保険医の公的機関への)レセプト、医療費請求書、診療報酬請求明細書」と書かれているのですが、イタリアでは、公立の医療機関での専門医の診療を予約したり、血液検査やX線検査など、様々な検査をしたり、専門医が発行してくれた処方箋に基づいて薬を購入したり、検査・リハビリを予約したりするためには、まずは窓口となって仲立ちをしてくれるかかりつけ医を、診療時間中に診療所で訪ねて、専門医の診療・検査の予約や薬の購入のために、A5サイズの文書を発行してもらって、それを持って予約や購入に行く必要があり、その文書をimpegnativaと言います。

 従来は、火曜日はちょうど午後5時からが、わたしのかかりつけ医が診療所にいて対応してくれる時間帯だったのですが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が深刻であった頃は、電話で予約しないと診療を受けられないと、ウンブリア州の保健所のサイトに書かれていました。また、抗生剤は、以前にわたしも夫も、やはり歯の治療か発熱のために購入したことがあるので、家にまだ残っている可能性があります。それで、とりあえずうちに帰って、使用期限が切れていない抗生剤がないことを確認してから、インターネットでかかりつけ医の診療日時を調べました。わたしがインターネットで見つけた情報では、火曜日の夕方には診療を行うものの、予約(appuntamento)が必要となっているのですが、それで何度も診療医に電話をするのに、電話がつながりません。時間を置いて何度も電話したのには、わけがあります。今回のように、専門医が書いてくれた処方箋をもとに、impegnativaを発行してもらうだけで、病状などをかかりつけ医自身に診てもらう必要がない場合には、わたしたちのかかりつけ医は、電話で頼んでおけば、処方箋を書いて、近くにある薬局に届け、わたしたちが薬局に行ったら、すぐに購入できるように、便宜を図ってくれていました。診療時間に行って、待合室で待つと、待ち時間がかなり長くなることが予想されたので、できれば電話だけで処方箋を書いてもらえたらと思って、電話してみたのです。

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 せっかく診療所に行っても、「予約していないから話はできません」と言われても困ると思って、それで何度も電話したのですが、いつまでもつながらず、埒が明かないので、結局診療所に行ってみることにしました。午後6時前に診療所に着くと、待合室には患者が数人いて、全員がわたしと同じ医師の診療を待っているとのことです。診療所の入り口に張られた医師たちの診療時間表を見ると、幸い、わたしたちの医師は火曜日は予約が不要とのことだったので、席に座って自分の順番を待ちました。

 わたしの順番が回ってきたのは、約1時間後のことです。実はかかりつけ医は、夫と義弟の古い友人で、かつて二人が属していた合唱団で、一時期テノールとして歌っていたことがあるそうです。昨日、わたしの電話に答えなかったのは、車の運転中だったからとのことで、また、義弟によると、義父母や義弟たちのかかりつけ医は、感染がウンブリアでは収まってきた今も、予約なしでは診療が受けられないようになっているそうなのですが、わたしたちのかかりつけ医は、「ぼくはいつでもずっと、予約なしで診療を受け付けているよ。次回からは専門医の処方箋がある場合には、メールで知らせてくれれば、impegnativaを出せるよ。長い間待ってもらうことになったのは申しわけないけれど、おかげで久しぶりに会えてよかった。」と言ってくれました。

 こうして、うちで1時間いろいろ調べ、さらに診療所の待合室で1時間待った挙句、ようやくimpegnativaを手にすることができたので、すぐに薬局に行って、抗生剤をもらいました。自己負担金が少しはあるだろうと思って、財布も用意していたのですが、幸い無料だったのです。ちなみに、専門医の手書きの処方箋だけでも、薬局で薬を購入することができる場合もあるのですが、その場合は値引きなしの料金で購入することになります。



 薬局で、抗生剤の箱が鮮やかなピンクであることに驚きました。そうして、抗生剤の写真だけ載せるのもいかがなものかと、今は購入当時とは別のピンク色をしている、6月半ばにボルセーナで買った紫陽花、こんぺいとうの花といっしょに撮影してみました。

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 花の咲く位置が高すぎるので、箱といっしょに撮影できませんでしたが、庭では今、サルスベリも、鮮やかなピンクの花を咲かせています。

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 サルビアの花も、時々ではありますが雨が降り始めた最近になって、ようやく花がたくさん元気に咲くようになりました。

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 マレンマ旅行に友人たちとの山歩きと、留守にする日が続いた間に、テラスの鉢のバジルに花が咲いていました。葉に茂っていてもらうためには、今のうちにつぼみや花を摘み取ってしまうのがいいのですが、秋になり、もう緑の葉が茂る季節も過ぎるだろうと思うと、せっかく咲いてくれた花を楽しみたいようにも思います。とりあえず、緑の葉がたくさんあるうちに、ペスト・アッラ・ジェノヴェーゼを作ろうと、今日は松の実とパルミジャーノ・レッジャーノの粉末を購入しました。


 あと1週間でどうか治療が終わりますようにと願いつつ、庭の秋を楽しむ今日この頃です。

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Dopo due ore (ricerca info, telefonate, attesa, ecc.), finalmente ho potuto ottenere
l'antibiotico che mi aveva prescritto il dentista. La devitalizzazione del dente, iniziata
l'8 luglio, continua ancora ma spero davvero che, come mi ha detto il dentista, finisca
la prossima settimana.
Invece, è bello vedere il continuare a fiorire dell'ortensia.
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Articolo scritto da Naoko Ishii

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ブログテーマ:【自宅できる】あなたの家庭菜園・ガーデニングを紹介して
Commented by tokotakikuh at 2021-09-30 09:58
こんにちは
読むにつけ、複雑に絡みましたね
たかが・虫歯・・されど・になってしまいましたね

治療には、大概3か月は要しますが
治すうちに、見つかることがあると、1年はかかった
という人も、まれにいます
歯科医は、命とは多少無縁ですから
せきも、慌てもしないのでしょうね

ただ、患者にすれば、歯痛程、不愉快なものは無いです
どうぞ、お大事に・そして、少し気長に構えて
治療してくださいね
「セカンドオピニオン」も視野にいれてみるのも
いいかも・・です
Commented by milletti_naoko at 2021-09-30 14:29
zakkkanさん、おはようございます。
先週末に会った友人たちも、「ぼくらの歯医者なら、1、2度で終わるよ」と言っていたこともあって、ますますどうかなあと思っていたのですが、日本でもそれだけ時間を要する場合もあるんですね。
イタリアは歯の治療に保険が効かないので値段がとても高く、それで治療を始める前に、セカンドオピニオンを聞くことはよくあるようなのですが、今回は治療がすでに始まっていますので、次のときはその可能性も念頭に置き、来週こそ神経を抜く治療が終わることを願っています。そうこうしている間に、他にできたのではないかという虫歯も実はあるのですけれども。
Commented by katananke05 at 2021-09-30 23:13
イタリアに長く住み 漫画が当たった山崎マリさんという 漫画家が言ってますが 歯の治療は 絶対イタリアでやらない、、
彼女は死にそうな目にあったようで
よっぽど怖かった?
歯の治療だけは 丁寧で確かな日本に帰ってやる  と書いてます〜   我慢するのもたいへんだから 早くに済ませたいですよね〜
Commented by meife-no-shiawase at 2021-09-30 23:21
ご両親も優しいですね。
なおこさんのことをそのように心配してくださって。
歯医者さんは当たり外れがけっこうあったりしますもんね。
信頼できる先生を見つけるまでは結構大変です。
こちらは歯医者さんがとっても多いんです。
ありすぎてどのクリニックに行けばいいのか迷ってしまうぐらいです。

なおこさんのところはけっこう歯医者さんが多いのでしょうか?
でもまもなく治療が終了ならばよかったです。
なんだかんだと歯医者さんの治療は疲れますからね・・・。
Commented by milletti_naoko at 2021-10-01 00:57
katananke05さん、それは大変な思いをされたのでしょうね。うちの夫も幼い頃に、田舎の医者にとんでもない歯の治療をされたことがあるらしく、彼の医者嫌いや不信はそういうところから来ているようです。

イタリアでもいい歯医者さんはいくらもいるようなのですが、やはり当たりはずれ、運不運も残念ながらありますよね。その上下の差が、何かにつけて日本よりも激しいように思います。
Commented by milletti_naoko at 2021-10-01 01:03
メイフェさん、ありがとうございます。
イタリアはどうもその当たりはずれが、日本に比べてさらに大きいように思います。夫が同僚や友人たちに聞いて見つけた歯医者ではあるのですが、夫自身は実は今は、気に入らないことがあって、歯に問題があるのに、この歯医者には戻っていません。

来週こそは、どうか治療が終わりますように。
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by milletti_naoko | 2021-09-29 23:12 | Salute | Comments(6)