日曜から月曜にかけて見たオンライン日本映画祭の3作品で、一番胸に飛び込んできて、わたしが感動したのは、
『サマーフィルムにのって』(It's a Summer Film!)です。
でも、実現するための障害は多い。あの人の気持ちは分からない。
Lago Trasimeno, San Feliciano, Magione (PG), Umbria 18/6/2021
にも関わらず、がむしゃらに、夢を実現させようと頑張って、友人をはじめ周囲の人を巻き込んでいく、その主人公たちの熱い思いやひたむきに突っ走る様子が、ああ青春だなあ、いいなあと感動しました。個性がそれぞれに違う皆が、友達を大切にして、協力して映画を作り上げようとしていく姿もよかったです。
いっしょにいられるのは今このときだけ、でも、と言うよりは、だからこそ当たって砕けることとなるかもしれなくても、勝負しよう、ぶつかろう。今を大切にしよう。
その「今だけだからこそこのときを」という思いは、別の事情で、やはり高校が主な舞台となる映画、『ReLIFE リライフ』(ReLIFE)でも、ひしひしと感じられ、
https://jff.jpf.go.jp/watch/jffonline2022/film-lineup/118684-2/
主人公たちの友情や恋が胸に迫って感じられて、とてもよかったです。
前者では時間を超えての旅行者が大切な役割を果たし、後者では、主人公が再び高校生に戻って1年間人生を過ごすという設定になって、それぞれ元の世界に帰らなければならないために、この「いっしょにいられるのは今だけ」という思いがさらに募るのですが、実際には、そういう非現実的な設定がなくとも、高校3年間というときは、あるいは大人になっても、あるいは高校に入る前でも、どんなときでも、一生に一度、そのときしかないかけがえのないものであるわけで、そのことが、「恋する人と離れて、2度と会えない元の世界に戻らなければならない」、「恋する人がまもなく、2度と会えない世界に行ってしまう」という設定によって、より際立って、切なく感じられるように思います。 そうして、自分が高校生であった頃はもとより、日本の高校で12年間教えた間に出会った生徒たちを、この2作を見ながら懐かしく思い出しました。文化祭で、クラスですることになった屋台のクレープ作りを、目を輝かせて率先して取り組んでいた女子生徒や、びっくりするほど気が利いて、何かと助けてくれた男子生徒。わたしが担任だったクラスが、人権集会の発表を担当することとなり、「刑を終えて出所した人への差別や偏見を主題とした劇を演じよう」と話し合って決めた生徒たちが、自分たちでどんどん意見を出し合って脚本を作っていくことに驚き、頼もしくて感動したこと……
まだまだ実社会の足枷や枠にとらわれず、自分の好きなことやしたいことを追いかけて、夢見て過ごすことができる、誰もがそういう高校時代を送れるわけではないと思うのですが、そのまだ決まらない未来やあれこれしてみたいことを模索する若さ、青春のひたむきさがいいなあと改めて思いながら、映画を見て感動しました。
https://jff.jpf.go.jp/watch/jffonline2022/film-lineup/118674-2/
一方、この2作品を見る前に見た『あのこは貴族』(Aristocrats)では、そうした高校時代を過ぎて、大学に入り、親や世間の期待に応えなければならないと、自分でも気づかぬうちにしがらみを負った若い女性が主人公になっています。
社会にはこんなにも階層や富裕の差というものがあるのだと、知ってはいたものの、この映画を見て改めて愕然としました。家庭の事情のために大学を中退しなければならなくなった地方出身の美紀と、周囲の友人たちの人生や家族の言葉から、30を前にすれば女性は結婚をしなければならないものと思ってお見合いを繰り返し、ああこの人だと思って結婚した好きだった相手、さらに階層が上のその男性との暮らしに、けれども寂しさだけを感じてしまう華子。
社会では女性はこういう仕事をこんなふうにするべきだ。 女性はただ嫁いだ家のしきたりを守って、家で夫を待つべきだ。
美紀と華子が、紆余曲折の末にようやく少女のように無邪気な笑顔を見せるのは、そうした社会の偏見によるしがらみから解放され、自分らしい生き方や仕事を、友人と共に見つけ出すことができてからであって、そういう意味で二人は、ようやくまた、先にご紹介した2作品の主人公たち、高校生たちのように、社会の束縛を離れた出発地点、より自由に自分たちで進路を選んで行ける人生すごろくを歩み始めることができたから、再び夢や希望を持つことができたのではないかと思います。
そういう意味では、自分が本当にしてみたいことはなにかを、常に心に問いかけながら生きてみれば、もちろんいつも希望どおりにはならないとしても、今を生きて、自分が一瞬でも楽しめる、喜べるときを大切にしていけば、いくつになっても青春を楽しみ、夢や希望を持っていけるのではないかと、今回この3作を見て、そんなふうに感じました。
たとえ記憶や形に永遠に残らなくとも、このときこんなふうに経験を分かち合った、誰かを大切に思った、一生懸命に取り組んだ、感動した、そういう瞬間は、わたしたち一人ひとりの大切な糧に、一部になっていくのだと、『ReLIFE』や『サマーフィルムにのって』の主人公たちが熱く語るように、それはそうなのだと思うのです。
ですから、老若男女を問わず、「命短かし恋せよ、人生を生きよう」、つくづくとそう感じています。
写真は、昨年6月に見たトラジメーノ湖の夕景です。ああ美しいと思って見るその日そのときの感動が、何らかの形で胸の奥深くに残り、心の土壌を豊かにしてくれているように思います。
Articolo scritto da Naoko Ishii
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