イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

第134号「必ず投票を 〜政治への無関心と棄権は憲法の敵〜 ロベルト・ベニーニの言葉から」

 大切な選挙の前に、政治に関心を持つことと、投票することが、わたしたちや大切な家族、そして国の将来のためにどんなに必要であるか。映画、『ライフ・イズ・ビューティフル』で主役を演じ、監督も務めたロベルト・ベニーニ(ベニンニ、Roberto Benigni)のすばらしい言葉を通して、皆さんにお伝えできればと思います。

 今号で紹介するのは、ベニーニが熱く語る映像とその言葉の日本語訳ですが、映像はイタリア語字幕つきで見ることが可能ですし、また、その原文のほぼ全文を掲載した記事へのリンクも、記事末でご紹介しています。





 「皆さんに言いたいことが二つあります。憲法が抱える二つの敵についてです。(中略)

 二つの敵とは、政治に対して無頓着であること、つまり政治への無関心です。
I due nemici sono l'indifferenza alla politica cioè il disinteresse per la politica.

 皆さん、わたしにこうおっしゃることでしょう。ベニーニ、今みたいな時代に、政治に敬意を表せと言うのか、と。実際、そうは言いません。政治に敬意を表するようにとは言いません。皆さんに、政治を愛するようにと言っているのです。政治は、わたしたちの人生(暮らし。イタリア語のvitaは「人生」も「暮らし」も意味する言葉です)をいっしょに築いていくための、平和と平穏と仕事を実現していくための、人間の思考の中で、最も崇高なものです。政治があるばかりで、他の学問があるわけではありません。政治に携わる人には、それが分かっています。だから、政治を愛してくださいと言っているのです。

 政治に無関心であることは、人生に無関心であるようなものです。何にも関心がないと言うんですか。政治に無関心ですって? もしそうなら、自分の人生に関心がないばかりか、息子さんの人生にさえ無関心だってことです。

 学校に行くだろうか、いい教育を受けるだろうか、病気になったら治療が受けられるだろうか、結婚するだろうか、仕事を見つけるだろうか。
  Se andrà a scuola, se avrà un buon insegnamento, se s'ammala se sarà curato, se si sposerà, se troverà un lavoro.

 いや、自分には関係ないね。あんたたちでやってくれ。〜あんたたちでやってくれですって? あなたの息子の人生を? あなた自身の人生を? これが政治というものなんです。わたしたちの人生を実現していくこと、築き上げていくことなんです。(中略)

 政治を軽蔑することは、自分自身を軽蔑するようなものです。
 Disprezzare la politica è come disprezzare se stessi.

 それに、政治体制を、その時々に政治を代表する人物と混同してはいけません。とんでもない政治家は存在します。もし父親が、朝から晩まで息子の顔を平手打ちしているとしたら、父であることが恐ろしいのではありません。父であること自体は、すばらしいことです。恐ろしいのは、平手打ちするその父親です。

 どうにも好きになれない政治家はいます、でも誰もが同じではありません。これもとんでもない言い草です。「政治家はみんな同じだ」と言うとき、腹黒い政治家や不正直な政治家、愚かな政治家に大変な恩恵を与えるようなものです。と言うのも、わたしたちが、そういう腹黒さや不正直や愚かさに気づかなかったということだからです。こういう政治家たちは、市民が十把一絡げに政治家を評することを、喜んでいます。「あ、誰もおれたちがしたことを見てないぞ。おまえもこっちに来いよ。ここでは、誰も何にも気づきやしない。おれたち、みんな同じだからな。恐ろしいことです。政治家のこういう行為や考え方を助長するようなものです。(中略)


 投票すること、投票すること。わたしたちが持つ唯一の手段です。けれども、投票に至るまでには、わたしたちが望むことを表現する手段をわたしたちが獲得するためには、何千人もの人々が、何百万人ものとは言わないまでも、命を落としているのです。いつでも必ず違いがあります。たとえ選択肢二つが恐ろしいものであったとしても、どちらかは必ずいくらかはましなはずです。

 よく考えてください。わたしたちの誰もが、自身が考える以上に、世界において力を持っているんです。わたしたちの誰もが、目に見えないけれども具体的な自らの貢献を、善か悪か、正義か不正かに対して与えているのです。とても小さいけれども、あるのです。
Guradate che ognuno di noi ha più potere di quel che pensa sul mondo. Ognuno di noi porta il suo contributo invisibile ma concreto verso il bene o il male, verso il giusto o l'ingiusto. Piccolissimo ma c'è.

 最も恐ろしいのは、自分は関与しないと退くこと、投票しないことです。(中略)「あらゆる手段を与えるけれども、棄権をしてはいけない! もし間違って、間違ったことに票を投じるとしても、自分に君と対峙する手段を与えてくれ、自分は反対だと言う手段を与えてくれ。そうやって、自分たちの人生を実現していこう。けれども、もし棄権したとしたら、恐ろしいことだ。」

 このあと、ベニーニは、新約聖書で、総督ピラトに、死刑からの恩赦を誰に与えるか決めるように求められた群衆が、暴動と殺人の罪を犯したバラバの赦免とイエスの処刑を求めたくだりに言及し、こう締めくくっています。

「群衆は、いつでも必ずバラバを選びます。もし自分の権利を他人に与えてしまったら、必ずバラバを、間違った方を選んでしまうのです。そんなことを許してはいけません。

 ベニーニが言うように、これから日本が、世界がどういう方向に向かっていくのか、平和に向かっていくのか、戦争に向かっていくのか、誰もが幸せに暮らせる世界になっていくのか、安心して学び、働ける社会になるのかどうかは、わたしたち一人ひとりの票にかかっています。投票しに行きましょう。

 以上、ロベルト・ベニーニ(ベニンニ)の言葉を、意訳も混じっていますが、わたしの方で訳してみました。

 わたしも先日、ペルージャのローマの日本大使館に行って、在外投票を済ませました。



 上のYouTube映像は、画面の下方にあるアイコンをクリックすれば、自動生成のイタリア語の字幕つきで視聴することが可能です。また、今回わたしが、ぜひ選挙に足を運んでくださいという思いが強いために、日本語訳をお伝えしたイタリア語の原文は、次の記事にも記載されています。



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Articolo scritto da Naoko Ishii

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by milletti_naoko | 2022-07-10 06:32 | Lingua Italiana