イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

緑に花映えて美しい森をラヴェルナ修道院へ

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 6月25日土曜日に、ラヴェルナ修道院(Santuario della Verna)を頂く岩壁の下に向かって、

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Santuario della Verna, Chiusi della Verna (AR), Toscana 25/6/2022

草が生い茂る野原を横切って歩くと、

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聖ヨハネの日の翌日でもあり、聖ヨハネの草(erba di San Giovanni)とも呼ばれるセイヨウオトギリソウ(iperico)が、たくさん咲いていました。

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 そうして、ラ・ベッチャ(La Beccia)の駐車場から参詣路をしばらく歩くと、赤いひなげし(papavero)の花も、まだたくさん咲いていました。アッシジの聖フランチェスコの壁画を通り過ぎた先にある石垣に咲く、このひなげしの花は、年々花の数が増えて、咲く場所が広がっているように思います。

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 参詣路から、石の門の脇を通って中に入ると、この紫色の花が、たくさん咲いていました。もう何年もの間、幾度となく通っている道ですが、この花を見るのは初めてであるように思います。

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 苔むす岩とブナの葉の緑が美しいラヴェルナの森(Bosco della Verna)の中でもまた、清楚なピンクの花に出会いました。自生の白い蘭に似ているけれども、花がピンク色で、色と姿はグラジオラスにも似ていますが、それにしては花が小さいように思います。

 上の紫色の花にしても、このピンクの花にしても、不思議なことに、見かけたのは撮影した場所だけでした。雨が降らず、ひどく暑い日が続いていたのに、思いがけずまだ咲く花に出会えて、うれしかったです。

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 若干急な坂道を登り終えると、お気に入りの風景が、わたしを優しく迎えてくれます。風情ある岩が両側に並んでいて、森の神殿の入り口のようです。

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 咲く花に、蝶たちもうれしそうです。

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 この日、森であちこちに咲いていて、一番よく見かけたのは、こちら、フウロソウ属の花です。つぼみが鶴のくちばしのように長いのが特徴だと、2015年に通った薬草学講座で教わったのですが、似た花も多く、品種まで特定する自信がないため、ただ今、花の名前について、講座の仲間や先生に問い合わせているところです。

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 まだ咲いている蘭(orchidea)の花もありました。

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 かつて6月半ばに、黄花藤が一面に咲いていて、それは美しい場所を、ちょうど花盛りのときに通ったことがあり、山にある森の中だからひょっとしたらと期待していたのですが、もう花は終わっていました。その代わり、同じように日の光の色をした星の形の花が、地面にたくさん咲いていました。

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 もうかなり長い間、毎朝のウォーキングコースでも花盛りのチコリ(cicoria)の花が、ラヴェルナの森でも、日当たりのいいところに咲いていました。優しい蝶が、わたしが撮影を終えるまで、動かずにいてくれました。

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 ようやくラヴェルナ修道院の境内に入り、教会の傍らを歩くと、ちょうどそのとき、教会の中で合唱団が歌う『Fratello sole, sorella luna』の歌が聞こえてきたので、感動しました。アッシジの聖フランチェスコの人生を描く同名の映画の主題歌です。





“Dolce è capire che non son più solo
ma che son parte di una immensa vita
che generosa risplende intorno a me
dono di Lui, del Suo immenso amore
Ci ha dato il Cielo e le chiare Stelle,
Fratello Sole e Sorella Luna
La Madre Terra con Frutti, Prati e Fiori,
il Fuoco, il Vento, l’Aria e l’Acqua pura
fonte di Vita per le Sue Creature
dono di Lui, del suo immenso amore
dono di Lui, del suo immenso amore”


「もうひとりではない、僕の周囲で惜しみなく
輝きを放つ、無限の生命の一部なのだと分かると、
穏やかな喜びに胸が満たされる。
神から、その無限の愛情から授かった贈り物。
神は、私たちに空を、そして光り輝く星、
兄弟である太陽、姉妹である月を贈ってくれた。
母なる大地を果実、草原、花々と共に。
そして、火・風・空気に清水、被造物にとっての生命の源をも。
神から、その無限の愛情から授かった贈り物。
神から、その無限の愛情から授かった贈り物。」(石井訳)


 自然を、そして弱き者をことさらに愛した聖フランチェスコが、きっと慈しんだであろうひなげしの花が、このとき、右手の石垣の上にたくさん咲いていました。

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 この日は歌をよく聞こうと、このまま足早に教会入り口の前まで歩いて、歌がもう終わろうとしていたので、中には入らずに、扉の前で耳を澄ませて、最後まで聴きました。そのあとは、境内から駐車場へと坂道を下っていきました。

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 参詣路の傍らにある石垣を、涼やかな色をしたツリガネソウが彩っていました。

 翌週の土曜日、同じ森を歩いたときには、わずか1週間だというのに、かなりの花が姿を消し、森の緑がいっそう深くなっていました。けれども、歌が聞こえてきたとき、境内の石垣の上に咲いていたひなげしは、まだたくさんの花がきれいに咲いていました。いつかまた、その写真もご紹介できればと考えています。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by cut-grass93 at 2022-07-11 22:16
フウロの仲間は多いですね。日本でもたくさんあって代表的なのはゲンノショウコ。
生える場所が変わると少しずつ見た目が変わり名前も変わるのですが殆ど見分けがつかないです。
Commented by meife-no-shiawase at 2022-07-11 22:39
この音楽が合唱で聴こえてきたのですか!?
それは本当に感動してしまいますね。
なにかどことなくクリスマスの音楽のメロディも感じられて
惹き込まれます。

薬草学講座というのがあったのですね。
そういう知識があると植物を見て歩くのもまたもっと楽しくなりそうです。

星の形のお花。
色まで黄色で可愛い~♪
Commented by zao480 at 2022-07-11 23:55
そちらは今花盛り、どれも可愛らしい花で歩くのが楽しみですね。
セイヨウオトギリソウ、そういえばどうしてセントジョンズワート(聖ヨハネの草)と言うのか調べてみたら、可愛らしい花なのに斑点を血しぶきと見立てるところは、日本のオトギリソウと似たいわれがあるのでびっくりしました。
Commented by milletti_naoko at 2022-07-12 00:47
草刈真っ青さん、以前から存在する花や植物にせよ、誰かから持ち運ばれた植物にせよ、同じような花や植物が不思議と日本とイタリアに存在するのが、おもしろいなあと思います。

花は間違えてもあまり問題ないのですが(いえ、クロッカスと勘違いして有毒の花を食べてしまう場合があるとか)、食べられると思った実や歯が実は有毒だったという場合もあり、難しいですね。
Commented by milletti_naoko at 2022-07-12 00:54
メイフェさん、この歌、詩や歌が美しい上に、皆が敬愛する聖フランチェスコの心を歌う歌ということで人気があり、かつて合唱団で歌っていた夫が、できれば結婚式で皆に歌ってほしいと考えてもいたのですが、参加人数が少なかったので歌ってもらうのはあきらめたという記憶があります。結婚式だけではなく、葬儀でも歌われるのを聞いたことがあります。

薬草学講座、山や森を歩きながら出会った植物の名と効用を学ぶという授業もあり、興味深かったです。

この黄色い花、きれいですよね。夏はよく山で見かける花で、見つかると何だかうれしくなります。

そうか、甘すぎたのかと思いつつ、しまうまさんのアイス、包装の隅々までこだわったデザインと言葉がいいですね。「し」と「ま」と「う」だけでそこまで世界が広がるなんて、日本語の授業でも使えそうです。牛はもう教えましたので…… いつまで見ても飽きが来ないようなかわいらしい袋と楽しい言葉、いいですね。
Commented by milletti_naoko at 2022-07-12 01:00
zao480さん、なんと日本の名前の由来にそんな背景があったとは! 英語とイタリアで聖ヨハネの草と呼ぶのは、わたしが見た限り、聞いた限りでは、ちょうど聖ヨハネの日、6月24日の頃が花盛りだからということなのですが、perforatumという学名の後半は、斑点があるからで、品種がこれだと見分けるには、葉っぱを太陽に透かして、小さいたくさんの穴があるかどうかが鍵だと、薬草学講座で教わりました。
Commented by koito_hari616 at 2022-07-12 13:00
こんにちは

アッシジのフランチェスコ~!

「ブラザーサン・シスタームーン」の映画が思い出されます
色々な困難を乗り越えて聖人になられたアッシジのフランチェスコ

アッシジは数年前に地震に遭ったとか。。。
花が咲き乱れて本当に良い場所ですね
訪れたい場所の一つです
Commented by PochiPochi-2-s at 2022-07-12 14:34
最近、花との出会いも一期一会だなぁと思う時があります。
花がたくさん咲いていた時にラヴェルな修道院に行け良かったですね。
その上、修道院の合唱団が歌う感動的な歌を偶然にも聞くことができ
心にジーンときたのではないでしょうか。
Commented by milletti_naoko at 2022-07-12 15:36
結うさん、こんにちは。なんと映画をご覧になったことがあるんですね!

実はこれは、アッシジではなく、聖フランチェスコがよく祈りを捧げに行って、聖痕を授かったトスカーナの山中にある教会なんですが、自然を愛した聖フランチェスコゆかりのこういう山中の美しい廬や教会や大聖堂、イタリアの、特に中部には各地にあるんですよ。
Commented by milletti_naoko at 2022-07-12 15:44
PochiPochi-2-sさん、ありがとうございます。春から初夏にかけては花が多いのですが、そろそろ花の時期も過ぎたかと思われた頃、まだあちこちで花を見ることができて、うれしかったです。

美しい、自然や聖フランチェスコに深く関わりのある歌を、森を通って境界を通りかかったときに聞くことができたのも、何かの縁のようで、感動しました。
Commented by ciao66 at 2022-07-12 16:29
森の中で合唱団の美しい声が聞こえてくる、というのは感動的ですね♪
天上から降ってきたような歌声だったことでしょう。美しい花々と歌声がそこに一緒に有るというのも奇跡的な感じもします。
黄色、紫、ピンク、オレンジ色、と本当に色どりですね。その中でも、ひなげしの花がやはりいいなと思いました。
Commented by milletti_naoko at 2022-07-12 19:39
ciao66さん、映画やドラマなら、ちょうど盛り上がるこの場面というときに、ふさわしい音楽が流れてくるわけですが、日常生活ではそういうことはないので、ちょうど教会のそばを通りかかったとき、ふさわしいまさにその歌が聞こえてきたので、感動しました♪

赤い素朴なひなげしの花、わたしもとても好きです。
by milletti_naoko | 2022-07-11 20:36 | Toscana | Comments(12)