イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

秋の幸甘くとろとろ日本の味熟した渋柿

 今朝のわたしの朝食は、懐かしい日本の味。

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 柿の実を半分に切って、スプーンですくって食べました。甘くとろとろになった実がおいしかったです。

 渋柿が、十分に熟すと甘くなり、こうしておいしく食べられることを、わたしはイタリアに来て初めて知りました。熟すまで待っていると、鳥などがつついてしまうからと、まだ青いうちに収穫して、りんごといっしょに袋に入れておくと、赤く熟して柔らかくなるということも、義父母から聞いて、初めて知りました。今朝のこの写真の柿は、夫が同僚からもらったもので、義父はもう少し柿がオレンジ色に色づいてから摘んでいるように思います。


 近年でこそ、柿の実がスーパーなどの店頭に並ぶようになったものの、イタリアでは今も柿を、もっぱら観賞用に町や庭に植えてあるところも多いようで、晩秋から冬は、出かけた先でこんなふうに、すっかり熟したオレンジ色の柿の実がたわわに実っているのに、収穫されて食べられることもないのを見て、もったいないなあと思うことも少なくありません。上の記事の写真の柿は、オルヴィエートで2019年の12月半ばに撮影したものです。

 そうして、近年になって食卓に上るところが増えてきたためか、柿のイタリア語名を、間違ったままに呼んだり書いたりしているのを、聞いたり見たりすることが時々あります。イタリア語には、日本語名から外来語として入ったため、イタリア語では柿を、cachiあるいはkakiと言い、外来語から入った他の多くの名詞と同様に不変化で、単数形も複数形も同形です。



 一方、イタリア語では、名詞の語尾が-iとなるのは、単数形が-oである男性名詞の複数形である場合が圧倒的に多いのです。例えば、日本でもご存じの方が多いと思われるバーチチョコレートの名は、「キス、口づけ」を意味するイタリア語、bacioから取られているのですが、口づけもバーチチョコレートも一つであれば単数形なので、bacioですが、二つ以上になると複数形となり、baciとなります。おっと、これは-oが-iとなる代わりに、-iが落ちる数少ない例でした。



 生クリームを間にたっぷりはさんだマリトッツォは、今でも日本で人気があるのでしょうか。このマリトッツォも、イタリア語では男性名詞で単数形はmaritozzoなのですが、複数形では語尾が-oから-iに変わってmaritozziとなります。



 そうして、cachiは日本語から入った外来語なので、単複同形であるにも関わらず、まだまだ新しい言葉できちんと定着していないために、男性名詞で複数形がcachiだから、単数形はcacoだろうと思って、そう言ったり書いたりしてしまう人が今もいるのです。つい先日、シチリアで柿を栽培する農家の方が、cacoと言っているのをテレビで見て、驚いていたところです。

 何はともあれ、今日は朝から、おいしい柿を食べることができて、うれしかったです。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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ブログテーマ:秋の食材
Commented by cut-grass93 at 2022-10-01 19:53
そうそうイタリアでは男の名前はOで終わるって聞きました。
確かにそういう名前を耳にします。
「なぜNAOKOは男の名前をつけているんだ?」
って言われませんでした? (^^♪
Commented by koito_hari616 at 2022-10-01 20:16
こんばんは

秋の味覚で一番好きなのは柿です
 cachiは外来語なのに男性名詞と思う人がいるとは
それほどにイタリアで普通に流通していると言う事ですね

1枚目の柿色の柿(笑)本当に美味しそうな色ですね♪
Commented by Kazeango at 2022-10-01 20:58
私もシエナの植物園で柿を見つけて、cachiと呼ばれるのを知って、こんなところに知り合いが〜と嬉しかったことを思い出しました。
1990年のシエナは、旧市街に植物園があったのですよ。
今もあるのかなぁ。
その頃はもちろん柿を食べている様子はありませんでした。
珍しい日本の植物の見本ていう扱いだったのでしょう。

Commented by meife-no-shiawase at 2022-10-01 23:00
以前は柿はあまりポピュラーではなかったのですね。
柿ってたしかにちょっと「和」のイメージです。
台湾では柿自体を食べることは日本よりも少ないですが、渋柿のように干したものが売っています。

実は一時帰国中で山形に旅行に行ってきました。
山がなだらかで水田が広がる美しい風景を見た時に
なおこさんがご紹介されているイタリアと少し重なるところがありました。
そしてその山形で美味しいピザを食べました。笑。
ふっとなおこさんを思い出すことが多かった旅でした♡
Commented by yuta at 2022-10-02 07:46 x
硬い柿もとろとろの柔らかい柿も好きです。
イタリアに日本から入ってきた外来語があるというのは初めて聴きました。
他にもあるのでしょう。
どんな言葉があるのかちょっと興味があります。
Commented by ciao66 at 2022-10-02 15:25
スプーンですくって食べる、という柿は美味しそうですね!
見た目で初めはみかんなのかと思ったのです。
渋柿が甘くなるとは聞いていましたが、こんなふうにして食べるとは知りませんでした!
甘くとろとろになった実を、一度私も試してみたいものだと思いましたが、さて渋柿は売っていませんし、勝手に獲るわけにもいかず、さて・・・。
cachiは単数も複数もcachi、外来語だから、なるほどです!
Commented by katananke05 at 2022-10-02 18:33 x
柿は生も美味しいけど
干し柿はなお甘みがまし
美味しいですね〜
チーズを挟んだのは とても高い高級お菓子です〜

我が家柿の木 隣との境にうえてるので 伸びた枝をばさりと
きり落とすこと多しで
あまりならないです〜
柿は短枝果ですからね〜
ことしは 10個くらいかな、、
Commented by milletti_naoko at 2022-10-03 00:09
草刈真っ青さん、イタリア語でも例外的に、Luca、Andreaなど-aで終わる男性名はありますし、Andreaは他の国では女性名だったりということもありますので、どうして-oで終わると聞かれたことはないのですが、会ってしばらくは、Naokaと名前を勘違いして呼ぶ人が、特に高齢の方に時々います。
Commented by milletti_naoko at 2022-10-03 00:11
結うさん、こんにちは。柿、おいしいですよね。さつまいもやモンブランも懐かしいです。

今朝も朝食は柿でした。朝の始まりのうれしいひとときです。
Commented by milletti_naoko at 2022-10-03 00:22
未来子さん、なんとシエナの植物園には、その頃から柿があったんですね。日本の植物を外国で見かけるとうれしいですよね。

調べてみると、シエナ大学の植物園が、今も旧市街のすぐはずれにあるようなのですが、どうでしょう、かつてお訪ねになった同じ植物園でしょうか。
Google Maps - Orto Botanico dell'Università di Siena
https://bit.ly/3fBBjdz
↑ リンクがあまりにも長いので、短くしておきました。
Commented by milletti_naoko at 2022-10-03 00:27
メイフェさん、柿を食べる人がイタリアでも少しずつ増えてきているようです。なんと渋柿、台湾でも売っているんですね!

山形の記事、拝見しました。田園風景も建物も美しいところですし、お食事もとってもおいしそうで、すてきな旅を楽しまれましたね♪ 旅先でまで思い出してくださって、ありがとうございます。
Commented by milletti_naoko at 2022-10-03 00:34
yutaさん、硬い柿もおいしいですよね。とは言え、我が家の柿は渋柿で、硬いうちに食べたら、渋かったので、以来柔らかくなってから食べることを覚えました。

日本語からイタリアに入った外来語については、イタリアで最も流通する四つの辞書で採用されている外来語を調べて、すべてに採用されているのは48語などということを調べた最近の研究論文があり、次のブログの記事で、わたしの考察も交えてご紹介していますので、ぜひお読みください。

・武術・食 イタリア語になった日本語の語彙、四つの主要伊伊辞典を対象とした研究結果から
https://cuoreverde.exblog.jp/32096631/
Commented by milletti_naoko at 2022-10-03 00:42
ciao66さん、それが天然の味と食感が、ゼリーのように柔らかで甘くて、とってもおいしいんです。機会があればぜひに。

日本では柿の木があれば、みんな収穫してしまいますから、実がなっているのを見つけるのも、なかなか難しそうですね。
Commented by milletti_naoko at 2022-10-03 00:45
katananke05さん、なんと干し柿にチーズをはさんだ高級なお菓子があるのですね。おもしろい組み合わせですね。

せっかくお宅に木があるのに、枝を切らなければいけないとは残念ですが、それでも10個のとれたての柿、さぞかしおいしいことでしょうね。
Commented by Kazeango at 2022-10-03 15:58
そうそう、大学のその植物園です。
調べて頂き、ありがとうございました。
Commented by milletti_naoko at 2022-10-03 16:33
未来子さん、どういたしまして。
そうだったんですね!
いつか行く機会があれば、わたしたちも訪ねてみたいと思います。すでに行ったかもしれないのですが、植物園は季節ごとに違う顔を見ることができまもの。
by milletti_naoko | 2022-10-01 18:54 | Gastronomia | Comments(16)