イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

カラバッジョの映画見ずにケーキ焼いた満月の夜

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 日本で多くの皆さんが皆既月食を楽しまれた昨日、食が最大となったのは、イタリア時間では午前11時59分でした。そして、月が欠け始めてから月食が終わるまでの時間帯が、まだ月が空に昇っていない正午前後だったために、イタリアでは、月食は見ることができませんでした。

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Perugia, Umbria 8/11/2022 21:12

 けれども、夜9時過ぎに、空に輝く美しい白い月が見えました。西向きの急な斜面の下方に建つ我が家からは、東の低い空は、隣の家や背の高い木々に隠れているため、月はかなり高く昇ってから、ようやく見ることができます。

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 街灯も白くまぶしい光を放っていたので、街灯の光が木の葉の後ろに隠れるようにと、しばらく歩いたり、立ったり座ったりして、撮影するのにいい位置を探しました。

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 昨晩、外に出たのは、実は月を愛でるためではなく、温室の前にあるレモンの木に、レモンの実を採りに行くためでした。ウンブリア伝統のリングケーキ、トルコロ(torcolo)を作るのに、レモンが必要だったからです。トルコロの材料とレシピに興味がおありの方は、下のリンク先の記事をご覧ください。


 最近では鶏がそれほどは卵を産まないためもあって、久しぶりにトルコロを作りました。

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9/11/2022

 電気代が安い夜の間に、そうして夫が出かけていて、心やすく台所で作業ができるうちにと、生地を作ってオーブンに入れると、台所いっぱいに、いえ、家じゅうにいい香りが広がりました。

 牛乳の代わりに豆乳、白砂糖の代わりに黒砂糖を使う以外は、すべて義母のレシピどおりに作りました。わたしがトルコロを作ろうとするときに、夫がいると、横から口を出して、レーズンなど他の具や香りの強いハーブなどを入れたがるのですが、お義父さんにも食べてもらいたかったので、義母が作っていたように焼きたかったのです。





 夫は昨夜は、画家、カラバッジョの人生を描くこちらの映画、『L'ombra di Caravaggio』を友人たちと見に行って、さらにピザ屋で食事をしてから帰るために、帰りが午後11時頃と遅かったのです。

 わたしは、カラバッジョの人生や作品には興味があり、画集さえ持っていて、テレビの美術番組や歴史番組でカラバッジョの特集があれば、見るようにしています。それなのに、「カラバッジョの影」というその映画を、誘われたのに見に行かなかったのは、あまりにも残酷で生々しい場面が多く、画家の人生におけるそういう局面や場面を殊更に取り立てて制作した映画であるように、予告編を見て感じたからです。幼い頃、『まんが日本昔ばなし』で、夏に1話だけ放映されていた怖い話でさえ、見ると夜眠れないので見ないようにしていたわたしは、今も、血なまぐさい場面の多いテレビ番組や映画は、見ていても席を立ったり、目と耳を閉じたりしてしまうほどなので、見るのを極力避けているのです。

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Caravaggio, La Morte della Vergine, Museo del Louvre, Parigi, Francia 13/6/2013

 予告編にも登場する『聖母の死』(La Mort de la Vierge, 1601-1605/1606)は、パリで2週間のフランス語留学をしたときに、ルーブル美術館で鑑賞しましたし、ルーブルには他にもカラバッジョの作品が展示されていました。

 視覚から入った情報や記憶に、心がいつまでも揺さぶられ、穏やかでなくなるために、昔から、たとえば、キャンディ・キャンディやおしんがいじめられているような場面も、見ないようにしていました。そんなふうに主人公が辛い目に遭う場面や、暴力的、残酷的な場面も、本であれば読むことができていたのですが、せっかく楽しみで読むのだからと、最近では、読書でも内容が重そうなものは避けるようになってきました。そうは言いつつ、カール大帝の歴史書や塩野七生さんの歴史小説は読んでいるので、やはり物語の切り口や語り方、どこに焦点を当てているかということも多いように思います。

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Caravaggio, La Diseuse de bonne aventure, Vers 1595-1598

 閑話休題。映画自体も見るのを避けたかったのですが、午後9時過ぎに映画が終わってから、ダイエットにもコレステロールにも体脂肪にもよくないピザを、ピザ屋に食べに行くというのも、昨夜の誘いに乗らなかった理由の一つです。前回土曜日に、夫や友人たちと映画を見て、夜遅くにピザを食べて以来、高くなったまま下がらずにいた体脂肪率が、ようやく下がってきたところでもありました。

 昨晩、映画と食事を終えて帰ってきた夫は、映画はよかったけれども、やはり血なまぐさい場面が多かったと言っていました。ドアを開けたとたん、家に満ちていた甘い香りにうれしそうだったので、トルコロを焼いておいて、本当によかったです。以前は、平日も週末もバールで朝食を取りたがっていた夫が、最近になって家で食べるようになったのも、トルコロを久しぶりに焼いた理由の一つです。

 すぐ手が届くところにあると、つい食べてしまうというのも、トルコロをしばらく焼かずにいた理由ではあるのですが、お義父さんにも食べてもらうことですし、今朝は食べましたが、調子に乗って食べ過ぎないように気をつけたいと思います。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by nonkonogoro at 2022-11-10 08:43
私も 昔から 残虐な場面では
目を閉じています~"(-""-)"

刑事ものや ミステリーが好きなので
どうしても そういう場面が出てくるのです。

小説でも
飛ばし読み得意ですよ~

トルコロ
おいしそうですね。

甘い物は 本当に気持ちを温かくしてくれるのに
砂糖や脂肪が多いので 困りものですね。

Commented at 2022-11-10 12:02
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by goodlifegirl at 2022-11-10 14:58
ケーキ、とっても美味しそうです!お義母様からレシピを引き継がれてるんですか、それはお義父さんも嬉しいですね(*´▽`*)

午後9時過ぎにピザは、胃に重そうですね。私はピザに限らず遅い時間帯に食べると胃もたれがして寝つきが悪くなります(;´∀`)
なお子さんは、しっかり健康管理をして食事に気を付けたりウォーキングしていて、いつもすごいな~と思いながら読んでいます。

Commented by ciao66 at 2022-11-10 17:14
レモンの香りがするケーキは、それは美味しいでしょうね。
それがウンブリアの伝統レシピで、
おまけに自家製のレモンなら尚更そうでしょう。
ご家族に好評で良かったですね!

映画の残酷シーンは余り後味が良くないし、仰るように、
本でも、なるべく避けた方が、心安らかな気がします。
やはり、楽しめるような映画がいいですね♪
Commented by milletti_naoko at 2022-11-10 18:04
のんさんもですか! よかった。わたしだけではないのだと、お仲間がいるのを知って、うれしいです。そう言えば、お化け屋敷で姪たちも目を閉じると言っていたので、映画やテレビでも同じように感じて対応される方、少なくないかもしれないと、ふと思いました。昔、親が見ていた土曜ワイド劇場の恐ろしい場面を通り掛かって見かけて、すぐに退散した記憶もあります。

甘いものって、おいしくて幸せな気持ちにしてくれますよね。適度に食べて、そこでやめられるよう気をつけなければ。
Commented by harupita at 2022-11-10 19:58
なお子さん。こんばんは。


レシピ見てきましたよ。
計り方がヨーグルトのカップ基準なのが、ほっこりしますね。
きっちり計らないところが、隠し味かもしれませんね。

美味しい香りの漂う我が家に帰ってくる。。素敵な時間ですね。喜ばれたことと思います。

映画などあまりに過激過酷なシーンは辛くなりますね。

イタリアは月食のタイミング
日本とは大きく違いましたね。今回日本では最初から最後まで見ることが出来ました。

ただとても寒かったし
あちこちで素晴らしいフォト溢れたので、ネット月見も出来ました(*^^)v

ケーキ。美味しそうですね。
お義父様、喜ばれますね。葉流
Commented by cut-grass93 at 2022-11-10 22:32
リングケーキ、美味しそうですね。
ご主人が在宅だと横から口出しして
何かとやり難いという話、笑いますね。

添付の動画、イタリア語なんでパスしました。

そういえばヨーロッパでは古来残酷なのが好きなんですか。
コロッセオでも殺し合いとかライオンと戦わせるとかだったのでしょ。
オリンピックのレスリング競技でも18世紀頃は
まだルールが無くて武器は何でもOKで
本格的殺し合いだったようですし。

オペラでも90%以上が悲劇ですね。
殺し合いもあるし
ハッピーエンドは殆どないです。  
Commented by milletti_naoko at 2022-11-10 23:28
goodgirlさん、ありがとうございます。こんなふうに代々受け継がれている伝統のレシピというのが、どこの家にもあるようです。バターの代わりにオリーブオイルを使って作るところが、オリーブオイルの名産地であるウンブリアらしいところでしょうか。

いえいえ、誘惑に負けやすいことを知っているので、体重体組成計に乗って、ああこれではいけないと自分に葉っぱをかけ、なんとかウォーキングを続けています。
Commented by milletti_naoko at 2022-11-10 23:34
ciao66さん、レモンの皮とジュースの香りがする、素朴なおいしいケーキです。オリーブオイルをバターの代わりに使うところが、ウンブリアらしいと思います。

そうなんです。特に夜、食事前に見るのは嫌だなあと思って、行かなかったのですが、ケーキも焼けてよかったです。わたしは家で、最近おもしろいなあと思っているテレビドラマを楽しみました。
Commented by milletti_naoko at 2022-11-10 23:50
葉流さん、レシピもご覧くださったんですね。ありがとうございます。ヨーグルトカップで手軽に計れるので便利です。きっちり量を決めずだいたいというのは、イタリアのレシピではよくあります。夫にとっても義父にとっても、懐かしの味なので、喜んでくれて、わたしもうれしいです♪

日本では空も晴れて、きれいに月食が見られたんですね。皆さんの写真を通して、わたしも見ることができました。さすがに11月に入ってからだと、夜は寒いので、最後まで見るのも外では難しいですよね。
Commented by meife-no-shiawase at 2022-11-10 23:52
お義母様のレシピで作ったケーキ。
お義父さまもとても喜ばれたと思います。
過去のブログで分量を見ると「ヨーグルトの容器○○分」と書いてあって
とても面白いですね。

さっぱりとしたケーキの味を想像していますが、一度食べてみたいです。
オリーブオイルだとしっとりしていそうですね。
Commented by milletti_naoko at 2022-11-10 23:58
草刈真っ青さん、うちの夫は、普段料理をすることはまずないのですが、しようと思えばできるからと、あれこれうるさいので困ることがよくあります。おとなしく任せて、ありがとうと感謝して、おいしいと食べてくれればいいのですけれど。まあ、いろいろとお互いさまです。わたしが困らせていることもあるわけですから……

浄瑠璃も歌舞伎も悲劇がやはり多いですよね。どういうわけか、高校の国語の教科書も悲劇が多くて、「項羽の最期」、「木曽の最期」や義経の最期を芭蕉が偲ぶ「平泉」は、どの古文の教科書でも出てきていましたし、漱石の『こころ』でも、現代文の教科書に採用されるのは、Kが血のしぶきを上げて自殺をする前後の文章でした。
Commented by milletti_naoko at 2022-11-11 00:03
メイフェさん、ありがとうございます。
お義父さんが予想以上に喜んでくれて、わたしもうれしかったです。小麦粉も砂糖も、そしてオリーブオイルや牛乳まで、分量を皆、計量カップではなくてヨーグルトの容器で測るところが、おっしゃるようにおもしろいですし、何より便利です。

それが、スポンジケーキほどはふんわりしっとりしていなくて、硬さとしてはパンのような感じで、そのおかげもあってか、長持ちもするんですよ。
Commented by koito_hari616 at 2022-11-11 16:52
こんにちは

レシピも拝見させて頂きましたがご主人さまですか?

お義父さまも美味しく食べて頂けたことでしょうね
ショッキングな映画の後に帰宅したら甘い美味しい香りに
ご主人さまも癒されたことでしょうね
やはりイタリアでは朝はバールと言うのは普通なのでしょうか?
TVでも見たことが有ります♪



Commented by milletti_naoko at 2022-11-12 02:48
結うさん、こんばんは。
そうです。レシピを書いた記事で作っていたのは、夫です。最近は夫も義父もオリーブ収穫に忙しく、疲れてもいるので、喜んでくれて、わたしもうれしかったです。

バールの方が手早くさっと朝食を済ませやすいということもあると思いますが、テレビでも放映されていたんですね!
by milletti_naoko | 2022-11-09 23:34 | Gastronomia | Comments(15)