イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作_f0234936_23191054.jpg
 2016年6月にエトルタ(Étretat)を訪ねたのは、友人の誘いで急にモン・サン・ミシェルとシャルトルに行くことが決まり、フランスを旅行したときのことです。旅行ガイドでノルマンディーの観光地を参照していて、青い海にそびえる白い断崖の美しい風景を、ぜひ見てみたいと考えたからです。

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作_f0234936_22105814.jpg
Étretat, Normandie, France 18/6/2016

 宿泊していたルアーヴルからバスでエトルタに着き、

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作_f0234936_22295144.jpg

海岸まで歩いていくと、モネが描いた風景と絵を紹介する案内看板があります。

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作_f0234936_22325595.jpg

 まずは、象のような長い鼻が壁面から突き出して海へと下り、そうしてできているPorte d'Aval、アヴァルの門(アヴァルのアーチ)へと歩いていき、

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作_f0234936_22415655.jpg

散歩にちょうどいい細道を歩いていって、すばらしい眺めを楽しみました。

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作_f0234936_22423718.jpg

 そうして、その後は、再びモネが好んで絵を描いた浜まで戻り、その向こうに伸びる海岸線の崖の上を歩いていきました。

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作_f0234936_22445773.jpg

 歩くにつれて、刻々と変わっていく風景がどれも美しく、

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作_f0234936_22483042.jpg

階段で崖の下まで降りていったり、崖を貫く穴を通って反対側まで歩いたり、おもしろい経験もできて、いい思い出になりました。

 どうして、今になって7年前のこの旅の話をするかと言うと、昨日は少し熱がぶり返したため、ベッドで休んで、時々起き上がっては『L'Aiguille creuse』、アルセーヌ・ルパンシリーズの第3作、『奇巌城』の原書を読んでいたのですが、


その最後の部分の舞台が、このエトルタだったからです。アルセーヌ・ルパンシリーズの作者であるモーリス・ルブランの家があることは知っていましたが、まさか作品にとってこれほど重要な舞台となっているとはと驚きました。

 以下の文章は、すでに『奇巌城』を読まれた方と、『奇巌城』を読むおつもりのない方だけ、お読みください。

 冒頭で殺人と盗難があって、推理小説のように話が運び、百ページ近くになってようやくルパンの名が出てきたり、次々にどんでん返しがあったり、歴代のフランス王だけに伝えられていた秘密が少しずつ明かされていったりと、最後の2ページまでは、時に後の話の展開を知らずにルパンに憤ったりしながらも、楽しみながら読みました。

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作_f0234936_23004557.jpg

 アヴァルの門の傍らにそびえる先のとがった岩の内部が、実はフランス王たちが秘宝を隠し、いざというときに潜んだり、敵襲に備えたりするための城塞、奇巌城(L'Aiguille creuse)になっている。その内部や下部の構造にしても、ジュール・ヴェルヌやモーリス・ルブランなど、この時代のフランスを生きた作家たちの想像力の豊かさと、実際に存在する場所やできごとを下敷きにして生み出す物語の独創性に感嘆しました。

 そうして、本を読んでいたときにも、エトルタを散歩したときにも知らなかったのですが、この奇巌城へ行くための入り口となる洞窟、小学生のために菊池寛が書いた抄訳では、「令嬢室」と記され、「ドモアゼルむろ」と仮名がふられている洞窟、La Chambre des Demoisellesの近くを、自分たちが知らずに通り過ぎていたことに、今日あれこれ調べて、写真を見直していて、初めて気づきました。

エトルタ散歩と仏語で読了『奇巌城』アルセーヌ・ルパン第3作_f0234936_23191054.jpg

 上の写真の左手にある通路が、洞窟、「令嬢室」への入り口だったとは!

 通路の先に洞窟があり、その洞窟には『奇巌城』に書かれているようにDとFの文字が岩の上に書かれていて、小さなのぞき窓があり、奇巌城も見えるのだそうです。興味のある方は、こちらのページの動画にその映像がありますので、ご覧ください。

 何はともあれ、懐かしく美しいエトルタの風景も目に浮かべながら、読書を終えることができました。


 わたしがフランス語を最後に真剣に勉強したのは、この7年前のフランス旅行の前だったのではないかと思います。旅行前に書いた上の記事を読み返して、このときほど熱心にとは行かないまでも、今年は再び、フランス語を少しずつ勉強していこうと、改めて思いました。

Articolo scritto da Naoko Ishii

↓ 記事がいいなと思ったら、ランキング応援のクリックをいただけると、うれしいです。
↓ Cliccate sulle icone dei 2 Blog Ranking, grazie :-)
にほんブログ村 海外生活ブログ イタリア情報へ   

Commented by cut-grass93 at 2023-01-17 08:58
ご病気少し回復されたのですね。
でもまだ熱がぶり返したとか、昔から風邪は万病のもとと言われますし充分静養なさってください。

奇岩城、高校時代に虜になったルパン、わたしもこれがルパンの最高傑作だと思います。
それにしてもフランス語ですか。
参った参った (*- -)(*_ _)ペコリ
Commented by sunandshadows2020 at 2023-01-17 10:36
なおこさんはフランス語でルパンを読めるほどお上手なのに、今年はフランス語の勉強再開なさると仰るのが刺激となります。私も短文ならスペイン語で読めますが時間が掛かります。スペイン語学習はこれからもずっと続けたいと思っていて少しづつ上達しているのが励みです。なおこさんを習って本を読めるまで頑張らなくては!
Commented by mzdog7 at 2023-01-17 12:45
おお、ルパン対ホームズ・・・読みましたよ~
子どもの頃。
あの舞台ですなあ。
ううむ、秘密基地やルパンの(^o^)
Commented by koito_hari616 at 2023-01-17 15:36
こんにちは

お身体は如何でしょうか??
今日の画像の海にせり出している掛けを見る度に
地球は同じだなぁ。。と
沖縄の万座毛を思い出してしまいます💦

フランス語!頑張って下さいね~♪
Commented by meife-no-shiawase at 2023-01-17 17:10
フランス語やフランス語で本が読めるって・・・
なんだかすごいです。
私も中国語で読むことはありますが、やはり漢字なので
なんとなく日本語を読んでいるのと同じ感覚ですが
ヨーロッパ言語とかで読む時の頭の中の構造を見てみたいです。笑。

2016年のブログを拝見して
なおこさんはブログの雰囲気が変わっていなくてすごいです。
私は数年前のを読むとなんだか自分で恥ずかしい気持ちになります。笑。
Commented by BBpinevalley at 2023-01-17 17:30
こんにちは。
お年始はどうしてられるかと思ったら、ご夫婦でご病気されていたのですね。
胃腸炎は苦しいですよね。
私もたまにやりますが、あれは辛いです。

フランス語でアルセーヌ・ルパンを! 素晴らしい。
子供の頃、かじりつくようにして読んだ本です。
フランス語で読まれると、また違うのでしょうね。

どうぞ、早く完治されますよう。
Commented by milletti_naoko at 2023-01-18 02:35
草刈真っ青さん、ありがとうございます。幸い、元気が戻ってきました。
ウォーキングにも出かけたいところですが、しばらくは大雨が1日降る日が続き、がくりと気温が下がって厳寒となるという予報が出ていますので、外に出るなど無理をせずに、家の中でできる運動をしようと思います。動画が指示する運動に従う方が実は大変なように感じてはいるのですけれども。

おお、高校時代に読まれて、虜となられるほどだったんですね! 最後の最後までどうなるか分からない展開で、わたしも夢中で読みました。最後の場面があまりにも…… フランス語の力は、特に音声面はまだまだですが、英語とイタリア語を知っていると、その語彙や文法に助けられて読めるんですよ。
Commented by milletti_naoko at 2023-01-18 02:44
お転婆シニアさん、英語とイタリア語でかなりの数の本を読んできたおかげで、フランス語は文法にイタリア語と共通する点が多く、かつ語彙が英語かイタリア語から推測できるものが多いので、この二つの言語の知識が、読書を助けてくれるんです。

フランス語はイタリア語やスペイン語と違って、表記と音声の乖離が甚だしく、英語のように中学生からみっちり勉強したわけではないので、やはり聞き取りが難しいですし、読むことはできて、読みながら語彙や文法のおさらいはできるものの、やはり文法を最初からやり直す必要を感じています。

お転婆シニアさんがそこまで言ってくださると、これは本当にフランス語の再勉強を始めなくては!

お転婆シニアさんこそ、こつこつとスペイン語学習を継続されているのがすばらしいです♪
Commented by milletti_naoko at 2023-01-18 02:59
mzdog7さんは、子供時代に読まれたんですね!
「秘密基地」、確かにそうですよね。
今もよく覚えておいでですね。
Commented by milletti_naoko at 2023-01-18 03:07
結うさん、ありがとうございます。
ようやく元気が戻りました。

沖縄の万座毛、初めて知りました。地形がよく似ていますね。海は遠く離れた場所でも同じように崖を浸食していくのですね。

結うさんが刺繍教室でされているように、まずは今年は何をするか、問題集や読む本などを決めてしまい、年間にふりわけていかなければ、実行が難しいのだろうなと感じています。ありがとうございます。頑張ります!
Commented by milletti_naoko at 2023-01-18 06:18
メイフェさん、英語やイタリア語でまずは学習のため、それからは趣味や勉強や仕事のために本をたくさん読んでいるおかげで、親戚関係にあるフランス語の小説は、内容にもよりますが、読んで理解がしやすいので助かります。

大学生のとき、漢文購読を担当した留学生の中国人の先生がなんと中国語会話の入門授業をしたために、第二外国語がドイツ語だったわたしはとても苦労したのですが、そのときに、現代中国では漢字が日本よりもさらに簡略化されていることを知って驚きました。単語が一音節でしかもイントネーションによって意味が変わる、そういう中国語の世界の中でお仕事をされて暮らされているメイフェさんこそ、わたしはすばらしいなあと思います。

以前の記事も読んでくださったんですね。ありがとうございます。メイフェさんの「うれしい、おいしい、幸せ」という気持ちが心に伝わってくる文章、わたし、大好きです♪

いい意味でも悪い意味でも、書くときも話すときも、職業柄もあるのですが、ていねいにきちんとした言葉を使いやすい傾向があるわたしです。学校での同僚は大先輩の先生が多かったですし、昔は国語、今は日本語の教師で、通訳や翻訳にせよ、記事の執筆にせよ、ずっと日本語、言葉が大切な仕事をしてきているので、硬すぎず、読みやすくともきちんとした文章になるように意識しているためだと思います。と言うより、そこから外れすぎた文章にならないように無意識のレベルでさえ自分が舵を取っているという感じでしょうか。友達に、なんでそんなに改まった話し方をするのと言われたこともあります。

何度かお会いしたことのある長いブログのお友達で、以前はかっちりした文章を書かれていたのが、それでは堅い印象を持たれるという発見から、かなりくだけて、きさくな話し言葉調の文章に改めた人がいます。彼女の場合は、できるだけお客さんとなる可能性のある人に親しみをもってもらいたいということが、その書き方の大幅な変更の背景にあったのだと思いますし、それぞれの人の生き方や好み、描いている対象となる読者などによっても、書き方は違ってくることでしょう。
Commented by milletti_naoko at 2023-01-18 06:24
BBpinevalleyさん、なんとたまになられるとは!
わたしはずいぶん久しぶりでしたが、以前は確かちょうど年末のパーティーの前で、さらに辛かったように覚えています。何も食べられない間は特に本当に辛いですよね。

お子さんの頃ルパンシリーズがお好きで読まれていたんですね!
わたしはホームズは子供の頃に日本語で読みましたが、外国語で読むということよりも、大人になってから読むということの違いの方がひょっとしたら大きいかもしれないなあと思いました。

ありがとうございます。体調がようやく戻って、ほっとしています♪
by milletti_naoko | 2023-01-16 23:34 | Francia & francese | Comments(12)