イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

悪魔の豆シビッリーニ山脈ノルチャ特産けれどその実は

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 去年10月、巡礼に旅立つ友人たちをノルチャ(Norcia)まで送った夕方のことです。わたしがホテルの部屋でオンラインの日本語の授業を終え、一足遅れて宿を出て、すでに町を散歩していた夫たちを見つけると、

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Norcia (PG), Umbria 7/10/2022

皆はノルチャの特産品店の店先で、店の人と何やら話し込んでいました。ちょうど夕日が沈もうとする頃で、せっかくはるばる遠くまで来たのだから、明るいうちに少しでもノルチャの町や夕景が見たいと思ったわたしは、そのまま夕日に色づく雲が見える奥の方へと歩いていったのですが(記事はこちら)、実はこのとき夫と友人たちは、店の人からシビッリーニ山脈やノルチャの特産の珍しい豆について話を聞いていたのだそうです。

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Pian Grande di Castelluccio, Norcia (PG), Umbria 28/12/2022

 そのことをわたしは、その2か月後、年末に夫と二人でカステッルッチョの高原を歩いた帰り、ノルチャの町に寄ったときに初めて知りました。

 勧められて豆を買った友人たちから、「料理して食べたら、とてもおいしい」と聞いた夫が、この日店に寄って、その豆を購入したからです。

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Norcia (PG), Umbria

 2016年のイタリア中部地震で崩れ落ちてしまった聖ベネデット教会の再建が、ようやく本格的に始まっているのを見て、この日はほっとしました。

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10/2/2023

 以来夫がずっと食べたいと言っていたこの珍しい豆を、昨晩初めて食べてみました。

 あれこれレシピを探して、玉ねぎとセロリ、ニンジンを細かく切って炒めてからトマトソースと煮込んで、煮た豆と合わせるのがよさそうだとわたしは考えたのですが、夫は、豆自体の味を十分に味わうために、煮込んだ豆は塩とコショウで味つけし、上からオリーブオイルを回しかけて食べようと言います。

 一晩水に浸し、2時間じっくり煮込んだ豆は柔らかく、栗やうずら豆のような風味が感じられて、おいしかったです。

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 fagioli del diavolo「悪魔の豆」というこの一回りも二回りも他の豆よりも大きい豆は、わたしたちも食べたのが初めてで、「リミニでは見つからないのでまたノルチャに行く機会があったら買ってほしい」と友人たちに頼まれたほど珍しい豆なので、日本では知られていないだろうし、名前もまたおもしろいので記事にしようと考えたわたしは、ところが、調べてみて、この豆がメキシコ原産で、日本でも食べられていることを知って驚きました。

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https://www.mame.or.jp/syurui/feature/syurui_10.html

 日本語では花豆、ベニバナインゲン豆の名で知られているようで、主産地が北海道であるとのことです。



 ノルチャの特産品店では、店頭で量り売りで購入したため、またイタリア語の豆の名で検索しても学名や原産地が書かれているページが極めて少ないために、突き止めるのに苦労したのですが、学名を探して写真を見比べて検索し、まずは学名はPhaseolus coccineus、英語名はScarlet Runner Beanであることを突き止め、

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https://laprovinciapavese.gelocal.it/

その豆がイタリアの「悪魔の豆」と同一であることは、専門家がそうと語る上の記事をはじめ、料理や食関係の記事数本(こちらこちら)に言及があることで確認しました。英語名があることから、ひょっとしたらと調べてみて、日本でも食べられていることが判明したわけです。

 イタリア語のWikipediaのPhaseolus coccineusのページには、けれどもイタリアではfagioli del diavolo「悪魔の豆」として食べられているという言及がないからか、そうと知らずに生産している人、売っている人、食べている人が多いのではないかという気がします。

 何はともあれ、節分には雪のシビッリーニ山脈に登り、節分らしいことをしなかったわたしたちも、昨日はようやく鬼を追い払う力がありそうな名の豆を食べることができたのでありました。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by cut-grass93 at 2023-02-11 18:01
悪魔の豆ってナニコレ
ウイキで見たら「ひよこ豆」と出ているし
どうもよくわからない。
悪魔の豆だと知ったら気持ちよくは食べられない (^^♪
似たような豆はたくさん種類があるので日本でも食べてるんですか?

それはそうと一枚目の写真、ここではブタを犬のように飼ってるんですね。
Commented at 2023-02-11 18:41
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by okojo55 at 2023-02-11 20:49
映画「ジャックと天空の巨人」に登場するマメのようですね。本当に実在したら、怖いですが…
Commented by katananke05 at 2023-02-11 22:18 x
花豆として売ってますよね、、
インゲン豆の種類ですね〜
軽井沢や長野あたりでは よくみかけます〜
ホクホク美味しいけど
日本だとお砂糖を入れて柔らかく
甘く煮るかことが多いから 塩味にするのが面白いですね〜
おかずと見るか 「デザート」風と見るかの違いかな?
Commented by kakanonokoko at 2023-02-11 22:47
こんばんわ。こちらでは紫花豆とよんでいますよ。我が家でも作っています。日本では甘い煮豆にして食べるので 塩味って意外です
今度試してみます
Commented by yuta at 2023-02-12 08:26 x
煮豆美味しそうですね。
日本人にも合いそうです。
しかしなぜ「悪魔の豆」と言われるようになったのでしょう。

私のブログはイタリアに関係がある記事をアップしてるので、
見てください。
Commented by sunandshadows2020 at 2023-02-12 14:19
場所によって名前がグッと変わるのが興味深いですね。
それにしても「悪魔の豆」の由来を知りたいですね。
こちらではその花の色からの名前、日本ではやはり花からくる名前ですが。
きっとその黒っぽい色が悪魔を連想させるのかなと思ったり。
でもどのように料理しても美味しい豆です、そして私の大好物です。
イギリスの義父もこの豆を育てていました。
Commented by koito_hari616 at 2023-02-12 15:01
こんにちは

お豆さんは大好きです
悪魔の豆 のネーミングは赤黒い色だからでしょうか??
花豆は好きで煮ますが甘く煮ますので、塩と胡椒とオリーブオイルは
面白い味付けですね~TVを見ているとイタリアの食では
結構 お豆さんを食べておられるのを見ますが
甘煮ではないだろうなぁ。。と、スープ煮かな?
と、思っていました。。
Commented by meife-no-shiawase at 2023-02-12 15:21
花豆♪
甘納豆が好きでお取り寄せなどするのですが、
よくそのお店で花豆の甘納豆を見かけます。
粒が大きいのでちょっと栗のような感覚で食べられます。

でも悪魔の豆とはどうしてそんな風に呼ばれてしまうのでしょう。
食べたら美味しいから、食べさせないために?でしょうか。笑。
Commented by ymomen at 2023-02-13 06:13
はじめまして。
もめん、といいます。
北米に住んでいます。
豆、に惹かれて伺いました。
帰国のたびに豆を持ち帰っていましたが、重いので、ここで調達するばかりになりました。
立派な豆。怪しい名前。
ここでも探します。
甘い豆も好きですが、総菜にするとたくさん食べられていいですよね。
Commented by tawrajyennu at 2023-02-13 11:41
こんにちは♪
花豆、甘く煮て、よく食べますよ。
道の駅とか、京都の錦市場で売ってます。
そちらでは、悪魔の豆と呼ばれているのですね。
どうしてそのような名前が付いたんでしょうか?
美味しくて、食べ始めると止まらなくなるのかしら?

2016年のイタリア中部地震で崩れ落ちてしまった聖ベネデット教会の再建がやっと始まったのですね。
ということは、私がイタリアに行ってからもう6年も経ったなんて!
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 02:01
草刈真っ青さん、イタリアではきっと色からそう呼ばれるのだと思うのですが、確かに食べ物としてはどうかなあという名前ですよね。

日本でも食べられているようで、知ったときには驚きました。

一枚目のブタはよくできた像で、ノルチャは豚の加工肉の産地として古来有名で、この店の中でもサラミや生ハムなど、そうした豚の加工肉が売られているため、店頭に置かれているんです。
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 02:05
2月11日の鍵コメントの方、法隆寺のお店で食べられたことがおありなんですね。同じ日本の方のコメントにも、まったくご存じない方、旅行先などで食べた経験がおありの方、産地をご存じでご自身でも時々料理される方がいて様々で、興味深いです。

ありがとうございます。よい1週間となりますように。
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 02:28
okojo55さん、ジャックと天空の巨人! 『ジャックと豆の木』を幼い頃に読んだのを覚えているのですが、この話に想を得た映画もできていたとは知りませんでした。確かに、大きな豆からは大きな豆の木が育ちそうですよね。実際には、豆の木は数メートルの高さまで育って、赤いきれいな花が咲くようです。
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 02:37
katananke05さんはご存じで、料理されることもおありなんですね! なんと日本では砂糖を入れて甘く煮るんですね。食べ方の違いも興味深いです。
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 02:42
kakanonokokoさんはお宅でよく作って食べられるんですね! 紫花豆と呼ばれているのですね。

わたしには日本で甘い煮豆にするというのが興味深くて、いろいろレシピを見てみて、かなりの量の砂糖を使うのに驚きました。

塩を入れると豆の皮が柔らかくならないので、十分に豆の皮が柔らかくなってから、塩を入れてみてください。
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 02:47
yutaさん、悪魔の豆と呼ぶ理由、わたしも調べてみたのですが、まだ確かなことは分かっていません。夫が言うように、色からそんなふうに呼ぶのかもしれません。

そうですか。さっそくおうかがいしますね。
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 02:54
お転婆シニアさん、おっしゃるとおりです。
どこに着目するかで、呼び方が変わってくるのでしょうね。
名前の由来は調べたものの見つからずにいるのですが、おっしゃるように黒っぽい色のためではないかと、夫も言っています。

なんとアメリカにお住まいのお転婆シニアさんもよくご存じで、イギリスのお義父さまも庭で育てられていたとは! イギリスは涼しいので気候があっていたのでしょうね。
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 02:57
結うさん、こんばんは。
花豆、料理をして食べていらっしゃるんですね!
皆さんのコメントに、わたしは日本では甘く煮て食べることがおもしろいなあと思いました。
イタリア料理では豆はスープにして食べることも確かに多いですし、いずれにせよ味つけには、他のハーブを使ったり、トマトを足したりすることがあったりしても、塩を使うんです。
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 03:04
メイフェさん、なんと花豆の甘納豆を売っているお店があるんですね! おっしゃるように、大きさも味もよく栗に似ていますよね。

悪魔の豆とはどうしてかと、わたしもいろいろ調べてみたのですが、今のところ分からずじまいです。夫や上のコメントで皆さんが言うように、色のためかもしれません。
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 03:12
もめんさん、はじめまして。北米にお住まいなんですね!
グローバル化が進んで、今はアメリカでも様々な国の豆が食べられることでしょうね。怪しい名前の豆、そちらにもあるんですね。
そうですね。こちらでは豆スープになるとメインのおかずになるので、かなりたくさん食べることになります。
Commented by milletti_naoko at 2023-02-14 03:23
タワラジェンヌさん、こんばんは。
タワラジェンヌさんも、甘く煮て食べられることがあって、しかもしばしばなんですね!
名前の由来は、黒い色のためではないかと思うのですが、調べてみたものの、今のところ確たることは分からずじまいです。

なんとちょうど地震の頃にイタリアを旅行されたんですね!
by milletti_naoko | 2023-02-11 17:47 | Umbria | Comments(22)