イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

最後の晩餐フレスコ画美しいオルヴィエート聖パオロ修道院

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 土曜日は、オルヴィエートの歴史的中心街の南東の崖の上に建つ聖パオロ修道院(Monastero di San Paolo)を訪ねました。

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Orvieto (TR), Umbria 14/10/2023

 今ではわずか数人の修道女が暮らすのみとなり、ふだんは訪ねることができないこの修道院を、この週末だけは、FAI(イタリア環境基金)の催しのおかげで、地元の高校生たちのガイドつきで訪問することができたからです。

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 車道からアーチをくぐってすぐのところに、冒頭の写真で鐘楼の見える教会があり、17世紀のフレスコ画に彩られた内部が美しいので、感嘆しました。

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 壁の上部や天井に聖パウロの生涯を語るフレスコ画が描かれていたのですが、天使たちに天国へと導かれ空を飛ぶ聖パウロが天井に描かれているのは初めて見たので、興味深かったです。

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 わたしが特に魅かれたのは、こちらのフレスコ画です。聖母マリアを始め、どの聖女たちも表情が控え目ながらも幼子イエスへの敬愛に満ちた優しい瞳と表情をしているなあと思いました。

 もともとは1221年から、ベネディクト会の修道院として建造が始まったというこの修道院は、長年の間に、中に暮らす修道院女たちの宗派もしばしば変わり、改築や増築も行われてきました。高校生たちが最初に案内してくれたのは、入り口近くにある中世の頃に築かれた回廊で、今はもう荒れ果てた感もあり写真は撮らなかったのですが、そんなふうにまずは今は飾り気のない簡素な場所から始まって、歩いていくたびに説明を受ける場所の装飾が増えていくというのも、おもしろいなあと思いました。

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 かつての教会が、現代になって一時期は学校の体育館となり、そのために床が張り替えられたという場所もあります。壁には今も古いフレスコ画が残っています。

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 入り口からどんどん奥に進んでいくと、凝灰石の断崖の端、柵から下方を見下ろしても、崖が切り立っているために、いつもわたしたちが歩く崖下周遊トレッキングコースさえ見えない場所に、もう一つの回廊がありました。

 1527年のローマの略奪の際に、教皇クレメンス7世が皇帝軍から逃れてローマからオルヴィエートに退避したとき、この修道院を選んだのは、こんなふうに絶壁に守られていたからだそうです。修道院滞在中に、教皇は回廊の下に貯水槽を築かせ、井戸に自らの紋章を刻ませたとのことで、メディチ家出身の教皇クレメンス7世の紋章には、教皇の象徴である教皇帽と鍵の下に、メディチ家の紋章があるのだと、ガイドの高校生が説明してくれました。

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 そのあとに紹介してくれた、16世紀のフィレンツェの工房、あるいはトスカーナの芸術家の手になるとされる最後の晩餐のフレスコ画も、みごとでした。人物の描き方などから、ラファエロと版画家、マルカントニオ・ライモンディの『最後の晩餐』を見て、参考にしているに違いないという話がありました。

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 海のないオルヴィエートの修道院のフレスコ画に、海が描かれているのは、手がけた芸術家が海のあるトスカーナ出身だったからだろうという説明があり、オルヴィエートに縁が深くかつ近いボルセーナの町のそばにあるボルセーナ湖かもしれないと、そんなことをぼんやり思いながら聞きました。

 岸辺の下、植物の装飾の上には、動物も多数描かれています。

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 ユダの肩の上には小さい悪魔がいて、絵の中に亀やリスが描かれているのが、この作品に独特のことだという説明がありました。犬や猫、亀はユダから遠ざかろうとしているのに、自らのしっぽで影を落とすリスだけは、ユダの方を向いているとのことです。

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オルヴィエート歴史的中心街に立つ案内看板の地図から引用

 さて、今回訪ねた聖パオロ修道院(上の地図中ピンクの丸)は、崖のすぐ上に建ち、かつ、上の地図中ピンクの正方形で囲んだアルボルノス城塞と長方形で囲んだ城壁を補強してある場所との間にあります。

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 そこで、日曜は、修道院を訪ねたあと、崖下周遊トレッキングコース(Anello della Rupe)を歩いたときに、城塞の門が遠ざかり始めたあたりから、

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おそらくこのあたりの断崖の上に、修道院が建っているのだろうなあと思い、

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崖の上を見上げながら歩いたのですが、

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崖が垂直に切り立っている上に高いので、修道院は見えませんでした。修道院から見下ろしても、トレッキングコースが見えなかったので、下からは見えないだろうと、予想はしていたのですけれども。

 家に戻ってから、かつてこの崖のすぐ南方に建つ元修道院から、崖とその上の町並みを撮影した写真があることを思い出して、そのときに撮影した写真を探したら、

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17/6/2020

写真上方のほぼ中央に、修道院の建物が大きく映る写真がありました。断崖が切り立っている上に、修道院のすぐ下方に緑の木々も立っているので、トレッキングコースからでは見えない理由がよく分かりました。

 FAIの催しのおかげで、近年よく訪ねるようになったにも関わらず、知らずにいた聖パオロ修道院を訪ね、興味深い説明も聞くことができて、よかったです。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by koito_hari616 at 2023-10-16 20:46
こんにちは

聖パウロ修道院、荘厳で謙虚な修道院ですね
見る事が出来てとても嬉しいです
聖パウロが天使に誘われて天国へ。。。
聖パウロの人間っぽい所が好きです
そして、マリア様と女性4人(天使の輪があるので聖人かな?)がイエスを囲んでいる
このような絵画は初めて見ました
ありがとうございます♪

最後の晩餐の絵画も興味深く見ました
ユダの肩に悪魔。。。。キョーレツですね。。
そして、小動物たちがなぜ?と、思いました

沢山の画像をありがとうございました!
Commented by milletti_naoko at 2023-10-16 23:00
結うさん、こんにちは。
ありがとうございます。記事を喜んでくださったと知って、わたしもうれしいです。

聖パウロは、結婚式のミサのときに、その手紙の中から、好きな章を読んでもらいました。

聖母子を取り囲むのがすべて女性というのは珍しいですよね。ひょっとしたら、修道女が暮らす修道院の教会であることや、かつて近くにあった他のやはり修道女が祈りを捧げていたいくつかの修道院がこの修道院に併合されたことが、その理由かもしれません。

動物たちは、犬・猫・亀など忠誠などよきことを象徴する動物たちはユダから遠ざかり、悪を象徴するリスだけがユダの方を向いているのだと、ガイド係の少女が説明してくれました。

こちらこそ、うれしいコメントをありがとうございます!
Commented by pothos9070 at 2023-10-17 15:54
こんにちわ~
私全然疎くてユダの位置はイエス様の向かって左側だけ
だと思っていました。
あら~ 一番右にいる場合もあるのね^^;
気になっていろいろ画像を調べると、バリエーションが多いですねw
勉強になりました^^
Commented by milletti_naoko at 2023-10-17 16:04
ぽとすさん、いろいろな時代にいろいろな芸術家が手がけているので、ユダの位置を始めとして、それぞれに違いがあるのがおもしろいですよね。

この修道院の絵では、他の『最後の晩餐』には見られないリスと亀が描かれているのだとガイドの少女は言っていましたが、他にもこの絵ならではのことは、他作品と比べるといろいろあることと思います。
Commented by ciao66 at 2023-10-17 16:23
空を飛ぶ聖パウロ! 見たことないですね。
天井画にふさわしい絵ですが、見事なフレスコ画ですね。
昇天しているところなのでしょうか。
最後の晩餐の絵も、素晴らしいものですね。
表情がよく描かれていますし、色彩も美しい♪

そして、かわいい筈のリスが、なぜか悪魔の手先とは!
なぜなのか調べてみました。
暴食の大罪なんだと!
豚、虎、リス、鰐、蝿が同罪ということですが、
動物たちがちょっと気のどくですね。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%83%E3%81%A4%E3%81%AE%E5%A4%A7%E7%BD%AA

隠された素晴らしい修道院が見られて良かったですね。
地図と最後の写真で位置関係が良く判りました。
Commented by cut-grass93 at 2023-10-17 16:32
ライモンディという画家の最後の晩餐に
ついての解説を興味深く読みました。
この当時の絵は人々に教えを説く意味合いがあるので
背後にいろいろ物語があって説明を知ると面白いです。

度々訪れている場所でもまだまだ未知の場所があるんですか。
面白いですね。
Commented by milletti_naoko at 2023-10-18 02:33
ciao66さん、そうなんです!
空を飛んでいて、しかも天井に描かれているのがいいなあと思いました。最後の晩餐も細部までていねいに細やかに描かれていて、美しいですよね。

猫も中世には悪とみなされていたのが、後世になってペストを広めるネズミを退治することから、よき動物とみなされるようになったのだと、説明がありました。

この修道院はふだんは訪ねられないからか、オルヴィエートの町の地図を見ても記載されていないことが多いんです。たまたま手元にきちんと書いた地図があり、しかもそれが写真を撮ったことのある案内看板の地図と同じだったので、ブログにこうして利用して、かつ、わたしも位置を確認することができてよかったです。
Commented by milletti_naoko at 2023-10-18 02:36
草刈真っ青さんは絵を描かれるので、この当時の絵の動物などが象徴していたものなど、教えの意図なども、より興味深く読まれたことでしょうね。

ふだんは一般人は立ち入ることができない修道院なので、今回訪ねることができて、本当によかったです。
Commented by katananke05 at 2023-10-18 14:08 x
フレスコ画 美しいです〜
最後の晩餐は 実物を見ましたが
高いところにあるから
もっぱら 画像でよく知ってるのが
ユダは正面左手にいる、、というのですが これは 右端に
肩に悪魔をのせ 描かれているのですね〜
わかりやすいけど 手にイエスを売って得た 銀貨の入った袋ももっていて、、
構図はいろいろに 「最後の晩餐」は 存在するのですね〜
ヨハネ? パウロ? だかダヴィンチの絵の イエスの右にえがかれている 女性のような
美しい弟子は
これにはいない??
Commented by milletti_naoko at 2023-10-18 15:34
katananke05さんはダビンチの最後の晩餐もご覧になったのですね!
岩壁近くにある回廊と井戸へと案内してくれている途中、廊下から美しいこの絵が見えたので、この最後の晩餐についても紹介してくれて、詳しい説明もあって、うれしかったです。

ユダが持っている袋については、売り渡して得た銀貨が入っていたかもしれないし、ユダはイエスや使徒たちのお金を管理する係だったので、そのためかもしれないという説明がありました。

女性のように見えるので、マグダラのマリアではないかという人もいる使徒ヨハネは、この絵ではイエスのすぐ右手に描かれています。この絵では、使徒は、ユダは別として頭の近くに名前の最初の2文字が書かれているので、誰だか分かると、これもガイド役の少女が説明してくれました。
Commented by katananke05 at 2023-10-19 13:37 x
なるほど マグダラのマリアかもしれない女性ぽい人は
イエスの右に描かれていて
彼女? 彼だけたしかに ヒゲがないようですね〜
画家の好きなように?描かれてるところが 楽しくもおもしろいですね〜
Commented by milletti_naoko at 2023-10-19 19:26
katananke05さん、この絵では横にIOと書かれているので、聖ヨハネに間違いはないのですが、確かに他の人と違って、ひげがありませんね。

題材は同じでも、画家によって描き方や構図が異なるのがおもしろいですね。
by milletti_naoko | 2023-10-16 20:14 | Umbria | Comments(12)