イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

被災の跡今もカステルライモンド 清き水辺歩くピオーラコ 思い出の宿で昼食

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 10月28日土曜日の朝は、まずはマルケ州のカステルライモンド(Castelraimondo)を訪ねました。

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Castelraimondo (MC), Marche 28/10/2023

 2016年のイタリア中部地震で大きな被害があったマルケ州マチェラータ県の村であるカステルライモンドで、なかなか再建が進んでいないということは、事前に調べて知っていたのですが、冒頭の写真に建つ、市民の暮らしにとって大切な村役場でさえ、

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7年後の今も、中に入ることができない状況であることに驚きました。

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 こちらの鐘楼が美しい教会も、中に入るどころか近づくことさえできませんでした。



 カステルライモンドに行ったのは、夫が多数のスライドフィルムのデジタル化を、村の中心街の写真店に依頼することに決めたので、そのスライドフィルムを店に届けるためでした。(詳しくは上の記事を参照)カスステルライモンドの近くに城があって、その周囲が散歩できると夫は調べていたのですが、写真店の店主によると、地震後は居住不能となり、今も立ち入ることができないとのことです。店のショーウィンドウに、たまたまわたしが行きたいと考えていたピオーラコの緑の散歩道で撮影した写真があり、それで店主に尋ねると、「このトレッキングコースなら、今は修復されていて歩くことができますよ」と教えてくれました。店主も、たまたま店内に居合わせた女性客もとても親切で、「ピオーラコに行くなら、食事はフィウミナータのアグリトゥリズモ、カスタンニャがおいしいですよ。」と教えてくれました。



 そこで、その店で昼食を食べてから、ピオーラコで散歩をしたのですが、カステルライモンドで紹介してもらった店は、なんとわたしたちが2010年6月に、結婚3周年記念の小旅行で、一泊したアグリトゥリズモでした。わたしは名前を聞いて、すぐに「あの宿だ」と分かったのですが、夫は実際にアグリトゥリズモまで行ってみても、まだ思い出せずにいたようでした。

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Agriturismo La Castagna, Fiuminata (MC), Marche

 手元にメニューはなく、給仕の若者が声でメニューを読み上げたあと、わたしは子羊の肉とカリフラワー、夫はグリル肉の盛り合わせとミックスサラダ、ローストポテトを注文しました。

 ところが、注文を終えたあとで、他の給仕の人が他の客に、「前菜として子羊の内蔵煮込みがあり、クレッシャもありますよ」と言っているのを夫が耳にはさみ、半人前の子羊の内蔵煮込みとクレッシャを追加して注文しました。

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 こちらが、夫が追加注文し、テーブルに真っ先に運ばれてきた子羊の内蔵料理とクレッシャです。実は、この店を勧めてくれた写真店の店主が、この二つが特においしかったと言っていたのです。夫もおいしいと、満足そうに食べていました。わたしは内臓は食べないので、味は見ていません。

 わたしが食べた子羊肉も、とてもおいしかったです。この他、ワイン4分の1リットルと水の大瓶も頼んで二人で合計32ユーロで、肉の量もほどよく、最近旅行先で食べて払っていた金額よりもかなり安いので、懐に優しいので助かりました。ただし、ひょっとしたら、プリモ・セコンド・コントルノをそれぞれ頼んでいたら、水とワインとコーヒーもついて、一人12.50ユーロだったかもしれないという疑問が、レジの近くにあったメニュー表と店のサイトのこちらのページを見て浮かびました。店に行く前にも確認はしていたのですが、「平日の昼食のみ」とのことで、この日は土曜日だったこともあり、わたしたちはフルコースは頼まなかったのですが、後から来た客のほとんどが、フルコースを注文していたからです。

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Pioraco (MC), Marche

 さて、昼食後、散歩予定の清らかな水が豊かなピオーラコ(Pioraco)に着いたときのことです。「食事をしたばかりだから、30分ほど車内で休みたい」と夫が言うので、わたしはその間、この川のほとりを15分ほど歩いてから引き返すことにしました。

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https://www.outdooractive.com/it/route/escursione/pioraco/

 こちらの地図やこちらの記事から、歩いてみたいと考えていたトレッキングコース、Sentiero Li Vurgacciには、短距離・中距離・長距離の三つのコースがあることが分かり、わたしは「できれば長距離コース(percorso lungo)を歩きたいなあ」と思って、出発前に上の地図を印刷しておきました。長距離コースでは、ピンクの矢印で示した川沿いの道を歩くのですが、中距離コースではこの道は歩きません。そこで、長距離コースだけに含まれる道を、先に一人で歩いてみようと考えたのです。

 わたしたちがこれまで何度かピオーラコを訪ねたときは、たいてい、岩に築かれた教会のあるすぐ上の写真の川沿いの風景を見ていました。それで、わたしはてっきり、この岩壁の傍らを通る道こそ長距離トレッキングコースの道だと思い込んでいたのですが、この日コースを歩いたあとになって、そして家に帰ってさらに地図で確認して、この日わたしが昼食後に一人で歩いたのは、上の地図の左側に青で示した道だということが分かりました。

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 けれども、出発したときには青空も広がり、下方を見やれば、水鳥たちもいて、

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青空と雲が水に映る様子や秋の風情も楽しみながら、散歩をすることができました。

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 ここまで歩いて渡り、引き返そうと決めた橋がなんと口づけの橋(Ponte del bacio)という名だと知って驚きました。

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 橋は長く、二つ目の川の上も通って、向こう岸まで渡っています。橋を渡ったあとは、上の写真の右手に見える緑の土手の上を通って、夫が車の中で休んでいる駐車場へと戻りました。

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 時々強い風が吹いて、空を雲が覆ったかと思うと、さらに吹く風で再び暖かい日差しが戻ってきます。前を見やっても、

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後ろをふり返っても、流れるように空をゆく雲がきれいで、そんな空の眺めも楽しみつつ、約30分の散歩を終えて、夫の待つ駐車場へと向かいました。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by cut-grass93 at 2023-11-03 07:45
紙に描いたメニューが無くて読み上げる
ってそれ言葉が分かる人でも最後まで
聞かなければ値段もアレだし、そりゃフルコースまで
たどり着けないですね。

綺麗な散歩道。
えーー、ところで優雅な生活に見えるんですが
お仕事はないんですか?
うらやましい。(^^♪
Commented by milletti_naoko at 2023-11-03 08:08
草刈真っ青さん、おそらくはメニューが日によって変わるので、
紙に書いたメニューが渡されなかったのだと思いますが、
こういうときは料金が分かりませんし、こんなふうに「読み上げて
くれなかったので分からなかった」ということもありますから困ります。

この日は土曜日で、パリ旅行の記事は7年前の旅行について書いたんですよ。
役所勤めの夫は土日が休みなので、わたしも土日には、執筆や翻訳の仕事に
追われることはあっても、個人授業などは入れないようにしています。

今週は、祝日だった11月1日から友人たちが泊まりがけで遊びに来る予定
だったので、わたしは授業も他の仕事もすべて前倒しにして終えてしまっている
ので、幸い時間に余裕があるのですけれども。おかげで真夜中過ぎまでかかって
寄稿記事の原稿を投稿したりすることにはなったのです。
Commented by minoru2703 at 2023-11-03 10:25
32ユーロは5,100円くらいですね。うーん(笑)
日本は30年ほど成長が止まって各国にGDPが抜かれたりしてますが
確かに賃金も低いですが物価も低くインフレも低水準です
外国に行かず外国製品も買わなければどっちがいいのやら?
水も有料なんですね
長閑な風景です。復興が遅れているのは残念でした
ススキがイタリアにもあるのにビックリ(*_*)
Commented by koito_hari616 at 2023-11-03 12:16
こんにちは

最後の2枚の画像が美しいですね
特に最後から2枚目の白い雲の流れ。。
北風と太陽の雲が噴き出す白い雲のような。。。(*´σー`)エヘヘ

口づけの橋って。。ロマンチックすぎます💦
Commented by ciao66 at 2023-11-03 15:52
Ponte del bacio ! なんと素敵な名前でしょう。
木製の橋で雰囲気も有りますね。
最後から2枚目の天使がふっと一吹きしたような?
面白い形の雲がいいですね。
空を見上げながらの散歩。ちょっと間違えても、
雰囲気のいいところを歩けて良かったですね!
Commented by pothos9070 at 2023-11-03 18:41
地震後の再建は大変なのでしょうね。
こんなに丈夫そうで立派な建物でも
長い間使えないとは残念ですね。
ご主人はリバーサルフィルムで写真を撮っておられたのですね。
きっと素晴らしい記録になっているのでしょう。
フィルムも長年の間には劣化してくるので、フィルムとデジタル、両方で保存しておくのが一番だと思います。
一度どんなお写真か拝見したいものです(^-^)
Commented by milletti_naoko at 2023-11-03 22:53
みのるさん、円安があまりも進んでいることに驚いています。
野菜や果物などの価格は、不思議とイタリアの方がずっと安いのに、
日本は外食が安いという印象があるのは、それだけお食事どころで
働く方の賃金が安いためなのかもしれませんね。
そうなんです。こちらの店では、法律上は水道水を頼めば無料ということには
なっているのですが、頼みづらいこともあって、大抵は有料の水を頼んでいます。
ススキのように見えるのは、おそらく葦ではないかと思います。
Commented by milletti_naoko at 2023-11-03 22:56
結うさん、こんにちは。
青空に風が息を吹きかけて雲で絵を描いているようで、
流れる雲がきれいだなあと、空に見とれながら歩きました♪
共感してくださったと知って、うれしいです。

口づけの橋と数年前に村長が名づけたそうで、橋の上で立ち止まって
口づけをするようにという標識さえあると、2019年の記事に
ありました。今もあるのかもしれません。
Commented by milletti_naoko at 2023-11-03 23:02
ciao66さん、2019年の記事に、「ピオーラコは愛の村、
橋の名は口づけの橋こそふさわしい」と、村長が名づけて、
当時は「ここで口づけを交わすように」という標識さえあったようです。
https://www.cronachemaceratesi.it/2019/08/03/pioraco-borgo-dellamore-sul-ponte-e-dobbligo-baciarsi/1284022/
わたしは川や風景をきれいに撮れそうな場所や角度を探しながら橋を渡ったので
気がつかなかったのですが、今も標識があるのかもしれません。

本来の長距離コースの川沿いの道より、以前にも歩いたことのあるこの道の方が、傍らに教会もある岩壁、奥に中心街の中世の町並みも見えて風情があるので、
この道を歩けてよかったです♪
Commented by milletti_naoko at 2023-11-03 23:11
ぽとすさん、2016年のイタリア中部地震は、何度かにかけて2017年まで
続いた上に、広範囲にわたって四つの州に被害が及んでいることもあって、
再建のための費用を分けたり、再建のための許可手続きをしたりするにも、
かなり時間がかかっているようですし、中でもこの村のあるマチェラータ県は、
震源地や周辺の山村の被害が大きいためか、他の地域に比べて再建が遅れているように
思います。

夫のスライドフィルムは、数十年前、まだ若い頃に友人たちとしたアジアや
南米などの旅を撮ったものが多く、わたしも一部見たことがあるのですが、
「なんとこんな旅を、こんなところにまで」という経験もかなりしていて
興味深いので、いつか機会があればご紹介できればと思います。

まずは夫が承諾して、これはという写真を探し出すという作業をしてくれないと
いけないので、デジタル化が終わってからもそこが難関となるのですけれど。
Commented by katananke05 at 2023-11-04 21:44 x
石造りの建物は 長く残ってるものが多いけど 一度 地震などがあると 見かけは大丈夫でも
いつ崩れるかわからない危険性を
孕んでいますね〜
あぶないから 立ち入り禁止は
正解です〜

それにしても まるで人が住んでいないような大自然と 人気のない道で 人口過多の日本にいると
不思議な村の風景です〜

本当に深まりゆく秋の澄んだ青空と
刷毛ではいたような 白い雲、、
とっても美しい写真です〜
Commented by gerneremake at 2023-11-04 21:58
イタリアでの大きな地震の放映を私も覚えているような❓ 復興が進みますよう、地震は中部に多いのでしょうか? 日本と同じ長い地形の中、北はアルプス、南は陽気なイタリア、文化の中部の復活が楽しみです。
カラーチェのマンドリンが懐かしいです。
綺麗なメロディを奏で〜元気いっぱいのイタリアが楽しみです。
Commented by milletti_naoko at 2023-11-05 18:13
katananke05さん、2016年の地震では、夏の地震のときには
耐震性があって耐えたノルチャの建造物も、10月に大きな地震の震源地
となったときは被害が出て、石造りの建造物に耐震性を持たせる難しさ
を思いました。

実はこの道、他にも歩いている人がいたのですが、多くの人は短距離コースを
歩いて、この急な上り坂は避けるようです。人の顔ができるだけ入らないよう、
写真は撮影しています。背中を向いてくれていれば、風景に取り込みやすいのです
けれども。登る前にわたしが歩いた土手にも、仲よく並んで座っている恋人たちが
いたりしたんですよ。
Commented by milletti_naoko at 2023-11-05 18:40
gerneremakeさん、イタリアの地震は北や南でも起こっていますが、
イタリア中部のこの地域は、古代から何度も大きな地震の震源地に
なっている地域であるようです。

以前に他の村の人たちが被災した方たちを励まそうと、歌や音楽を
披露しているのに居合わせたことがあります。

本当に一刻も早く以前の暮らしが戻ってきますように。
Commented by goodlifegirl at 2023-11-06 15:17
わぁ、偶然にも紹介されたお店が結婚3周年記念で訪れたお店だったのですか。
素敵な偶然、嬉しいですね~♪
メニューを読み上げて決めるとは、メニュー数は少ないのでしょうか?
子羊の内臓煮込みですか。私も内臓は食べたことがないのですが、見た目はとっても美味しそうです(*^^*)
それにしても絵本の世界に入り込んだような可愛らしい街並みに綺麗な雲!素敵ですね(*´▽`*)
Commented by milletti_naoko at 2023-11-06 16:25
goodlifegirlさん、まさか同じ店で食べることになるとはと驚きました!
おそらくメニューが日によって変わるからだと思うのですが、
わたしたちを担当した若者がすべてをきちんと読み上げてくれなかったことも
あって困りました。

空の雲がきれいで、風景を楽しみながら歩くことができました♪
by milletti_naoko | 2023-11-03 06:40 | Marche | Comments(16)