イタリア写真草子 ウンブリア在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

ヘロデ王が導くオルヴィエート カーヴァの井戸のプレゼーペ

 12月26日は、夕方に大家族でモッルッツェで村人が幼子イエス生誕場面を再現するプレゼーペを見に行く前に、夫の希望でオルヴィエートに行きました。地下にあり古代エトルリア人も利用していたカーヴァの井戸(Pozzo della Cava)や隣接する洞窟に設置されたPresepe nel Pozzo「井戸の中のプレゼーペ」を見るためです。

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Presepe nel Pozzo, Pozzo della Cava, Orvieto (TR), Umbria 26/12/2023

 今年はテーマが「英雄の歌」(Il Canto dell'Eroe)でもあり、心を勇気づけてくれるような明るい展示を期待して行ったら、幼子イエスの生誕場面にこそ光が当たっているものの、例年と違って、

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全体的にあえて照明の利用を控え、暗くしてあるような印象さえ受けました。

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 しかも今年は、一人称でプレゼーペを案内するのが、残酷非道で知られるヘロデ王(re Erode)です。

 暗い井戸の上に浮かび上がるように立つヘロデ王のはるか下方には、

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深いふかい井戸にたたえられた水が見えています。

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 この王が浮かび上がる井戸へと下っていく階段の手前には、こんな言葉が書かれています。

 わたしの名の意味は「英雄の歌」だ。あらゆる手を使って勝利を手にしようとする定めにあった身には完璧な名前だ。

 (中略)わたしが生きた時代に、権威を手に入れ名を馳せるためには、陰謀から身を守り、策略を企てて敵を絶滅し、戦争に勝ち、町を築く必要があったのだ。」

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https://www.bible.com/ja/bible/1819/MAT.2.新共同訳

 自らの王位を脅かす幼子イエスを抹殺しようと、ヘロデ王はベツレヘムとその付近に2年以内に生まれた男の子をすべて殺害させます。けれども、幼子イエスは危機を逃れます。

 出口付近には、こんなふうに書かれています。

「わたしは間違っていた。何が何でも栄光を手にしようとした。けれども、羊飼いや東方の三博士、使徒たち、そして大勢の信者たちを引きつけた力は、愛だったのだ。」

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 そうして、現代に生きるわたしたちに問いかけています。

「2千年後を生きるあなたたちは、わたしたちの過ちから学ぶことができていますか。あらゆるところに平和と愛をもたらすことができましたか。それとも、近年になってまたさらに大多数の子供たちの命を奪う虐殺が何度も行われてはいませんか。」

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 こんなふうに当時の暮らしを再現してある場面もありはしましたが、全体的に暗い印象を受けるような設置をあえてしていたのは、おそらく、今もなお続いている戦争を意識してのことなのでしょう。

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 全世界が直面し、真剣に考えなければいけない問題ではあるのですが、クリスマスを祝おうと、このプレゼーペを楽しみに訪れる子供たちや観光客もきっと多いことでしょうから、もう少し希望や明るさを持たせつつも警鐘を呼びかけるプレゼーペにはできなかったかと、少し残念に思いました。

 掲示されたヘロデ王の述懐の中には、「愚かで親不孝の我が息子、アンティパトロスの子供を、ナザレのマリアとかいう女性が宿したといううわささえ広まった」という言葉もあり、「そんな説や話は聞いたことがない」と、夫は憤慨していました。

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 井戸から出たところには、綿を雪に見立てたクリスマスツリーがあり、

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サザンカの花がきれいに咲いていました。

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 来年度の井戸のプレゼーペのテーマは「朝の天使」(l'Angelo del mattino)とのことですから、例年のようにもっと明るい、喜びを感じさせるような展示であることを願っています。

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Morruzze, Baschi (TR), Umbria 26/12/2023

 このあと訪ねたモッルッツェのプレゼーペに、

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ヘロデ王の宮廷も再現されていたことは、昨日の記事でもお話ししました。

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 わたしたちがオルヴィエートからモッルッツェへと向かっている途中に日が沈み、まだ赤らみの残る空にかかる白い月が、道中も到着した村からも見えて、うれしかったです。
 
Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by cut-grass93 at 2023-12-29 12:21
平和への道は全ての宗教が求めていること。
まず他の宗教の考え方を尊重して
受け入れることから始めることでしょうね。

イスラムもユダヤも宗教であれば
平和を願うべきなのに
自分と相いれないから殺し合いをする。
バケスチナの人たちは殺し合いで悲惨な目に合って
助けを求めている。
だったらイスラエルに戦争を仕掛けるべきじゃなかったはず。

いつまでも野良犬のような喧嘩をして情けない。
それでも彼らは人間なのですかねえ。

来年は平和になりますように。



Commented by meife-no-shiawase at 2023-12-29 16:02
なおこさん。
年末何かとても忙しくて毎日バタバタしているうちに
今年も残すところ2日となってしまいました。
今、読めてなかったブログ、一気読みいたしました。笑。

かなり遅れてしまいましたがお誕生日、おめでとうございました!!!
ご家族の皆さんとお祝いができてよかったです。
いつも思うのですが美人さんの多い家系ですね―♡

プレゼ―ペ。またたくさん見せていただきました。
とても神聖なものだと思うのですが、リカちゃん世代の私には
何かちょっとあの頃の小さいもので遊んだ記憶が蘇ってワクワクしてしまいます。

Commented by milletti_naoko at 2023-12-29 21:49
草刈真っ青さん、イスラム圏の人たちは、ユダヤの人々がヨーロッパで差別を受け、しばしば理不尽な追放の憂き目にあったのに対し、長い間唯一、税金こそ貸しつつも、受け入れて共存をしてきたのだそうです。

テロリストの集団とパレスチナの人々を混同してはいけないと思います。
どうか来年こそ平和が訪れますように。
Commented by milletti_naoko at 2023-12-29 21:55
メイフェさん、ご多忙の中、ご訪問とコメントをありがとうございます。
わたしも最近はばたばたしがちなので、時間のないときはとりあえず
いいねだけお返ししておいて、後で時間のあるときに、まとめて拝読
することが多いです。

ありがとうございます♪ クリスマス前にこうして祝ってもらえる機会が
持ててよかったです。そうなんです。姪たち、すっかりきれいになって!

リカちゃん、懐かしいです。確かに小さいプレゼーペの場合には、特に
日常生活などを現したものは、日々の暮らしで使うものは少しずつ違う
ものの、共通点もありますよね。
Commented by katananke05 at 2023-12-30 22:37 x
戦争も一部の狂った 権力欲の強い人たちがおこしたもので
それによって 憎しみが相対する国民の間にも芽生える、、ということでしょうね〜
ただ 宗教も 相手を攻撃するような盲信的になれば これはもう宗教とはいえないものでしょうね〜

ヘロデ王のやり方はいまの 2箇所で起こっている争いそのものですね〜 大昔も今も人間は 
いちばんおそろしい「いきもの」です〜
Commented by milletti_naoko at 2023-12-31 07:59
katananke05さん、国民の意思に関わらず、指導者が思うように戦争を始めたり続けたりする国もありますが、民主主義国家であるはずの日本やイタリアでは、どうかそんなふうに為政者の恣意で戦争に突入していくことのないよう、本当に国民のことや平和を考えてくれる人を国民が選ぶようであってほしいと願っています。
by milletti_naoko | 2023-12-28 23:58 | Umbria | Comments(6)