昼食は海の幸入りピアディーナ

　昨日は朝突然出かけようという話になり、雨の降らないところはどこだろうと天気予報とにらめっこして、アドリア海岸にあるセニガッリアに行くことにしました。海沿いに車を走らせると、魚料理が食べられる店がそこかしこにあり、前を通るたびに「ここはどうかなあ」と夫が言うのですが、まだ町から遠いこともあり、そのまま進んでいきました。いったん車を駐車場か路傍に停めて、店の口コミや値段などを調べてから入ってはどうかとわたしは思い、かつて何度か二人で食べたことがある中心街のグルメ・パニーノ店で食べようかという考えも夫にはありました。

　ただし、わたしたちがこの店で食べたのは、いつもパン祭りが開催中の９月で、パニーノがおいしかったのは覚えているものの、屋外席だけだったという記憶があったので、冬に外で食べるのはいかがなものかという気持ちもありました。いったん車を停めてくれたら、店がどこにあって、屋内でも食べられるのかどうか調べられるのですが、せっかちな夫はそのまま突き進んでしまいます。かつてパン祭りのときに、セニガッリアにあるという日本料理店の露店で食べたことがあり、そのとき日本の方にいただいた名刺にあった店名を思い出して調べてみたのですが、値段が高いのを見て、今回は断念しました。

　というわけで、結局、中心街からも海からも近い川沿いの駐車場に車を停めて、それから歩いて昼食を食べるのによさそうな店を探すことにしました。かつてのパニーノ屋は、この位置からでは遠いからと今回は見合わせました。

　そうやって歩いていて、夫がここはどうだろうと言ったのが、こちらのピアディーナ屋、Piadineria La Gradiscaです。店頭に料金も書かれた料理の一覧があり、それを見て、わたしもよさそうだと思って入店しました。午後１時半近くになっていて、おなかもすいていましたし、海辺を散歩したいという思いがあったので、さっと食事を済ませたいと考えてもいました。朝調べた天気予報のうち、一つは１日中雨が降らないという予報だったのですが、もう一つは午後３時頃から雨になると言っていたのです。

　生ハムやサラミをはさんだピアディーナもあったのですが、せっかく海の近くにいるのだからと、魚が入ったグルメ・ピアディーナを食べることにしました。「焼き鮭の切り身が入ったピアディーナを食べようか、でもチーズも入っているので花粉症の今は避けたほうがいいかなあ」と悩んでいて、すぐ下にあるマグロのたたき入りのピアディーナならチーズがないことに気づきました。夫が鮭のピアディーナを注文したことに驚きつつ、まだどちらにしようか迷っていたので、店の人にそう伝えつつ鮭を選んだら、「マグロのたたきを選んで、お二人で２種類のピアディーナを楽しんではいかがですか」と店の人が言います。それで勧めに乗ることにしました。

　中身が分かるように、二つに閉じられていたピアディーナを開いて写真に撮りました。野菜がたくさん入っているのがありがたいです。ピアディーナは３種類から選ぶことができます。最初は、夫と同じようにラードを使った伝統的なピアディーナにしようかと思ったのですが、夫の言葉を聞いて、別の味も見られるようにと、わたしはオリーブオイルと全粒粉の小麦粉を使ったピアディーナを選びました。
　円形をしたピアディーナに具をはさんで二つ折りにし、それを半分に切って運んできてくれたので、夫とわたしはそれぞれ、鮭のピアディーナとマグロ入りの全粒粉のピアディーナを一切れずつ食べました。どちらもそれぞれおいしかったのですが、ラードが入った伝統的なピアディーナの方が生地が柔らかく、鮭もマグロよりも切り身が大きかったです。

　食事を終えた頃に、店の人がテーブルの間を回って、一人に一つずつヌテッラ入りの小さなピアディーナをサービスしてくれました。少し甘めのチョコレートを食べるようで、おいしかったです。
　夫がビール、わたしが水半リットルを頼んで、会計は３５ユーロでした。「あのパニーノ店だったら、もっと安くて量が多かったかもしれないね」と夫は言うのですが、この２、３年の間に、イタリアでは食料品も外食での料理の値段もかなり値上がりしているため、かつての店でもやはり同じくらい支払うことになったことと思います。それに、ピアディーナは、小麦粉に塩と水、ラードを加えた生地を伸ばし、酵母を使わずに焼くために、薄くても１枚が約340kcalで、米やパスタなら１００g、パンなら１３０ｇに相応するほどのカロリーがあります。

　このあとは、途中でバールでコーヒーを飲み、海辺と中心街の散歩を楽しみました。食後すぐにコーヒーを飲むと鉄分の吸収を妨げるので、３、４０分ほど経ってから飲んだ方がいいと読んだので、普段から、できるだけ時間を空けてコーヒーを飲むようにしているのです。海辺近くを歩いて探しても、なかなか普通のバールが見つからなかったのですが、途中でいいバールが見つかったので、ほっとしました。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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