イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

アリスの前出発し幽霊村チェッレーノ古城跡へ Via dei Tusci 3日目 Sant'Angelo - Castel Cellesi

 3日目、6月6日木曜日は、朝早くにサンタンジェロ(Sant'Angelo)の村の家に描かれたおとぎ話などの壁画を、リュックサックなしに見て回ったあと、9時過ぎに宿を出発しました。

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Sant'Angelo di Roccalvecce, Viterbo (VT), Lazio 6/6/2024 9:19

 急な坂道を登り、村の中心広場にある不思議の国のアリスと白うさぎが描かれた壁の前を通っていきます。

 過疎化が進み、幽霊村になりかねなかった村を救った村じゅうを壁画で彩る計画のために描かれた最初の絵であるこのアリスの壁画は、2017年11月17日に除幕式が行われ、それを記念して、懐中時計の針は11時27分を指し、右手には紐を引いて除幕を行う二人の子供の絵が描かれています。

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9:21

 白雪姫が描かれた壁の前を通って道を下り、さらに進んでいくと、

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9:22

この日、下っては登ってを繰り返して訪ねていく予定の、小高い丘の上に建つ二つの村が見晴らせる眺めのいいところがあります。最初に訪ねる村は、すぐ目前に見えるロッカルベッチェ(Roccalvecce)、次に訪ねる村は、奥の方に茶色い塔と古城の跡が小さく見えるチェッレーノ(Celleno)です。

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Roccalvecce, Viterbo (VT), Lazio 9:52

 天使の絵で飾られた一画があったり、みごとな館や庭園があるものの閉まっていたりしたロッカルベッチェ(Roccalvecce)は、基本的にはVia dei Tusciの道しるべに従いつつも、気になる小路や街角にも足を伸ばして散歩をし、それから道案内に従って、坂道を下っていきました。

 このあと、右には野原が広がり、左には木々が生い茂る森がある緑の中の一本道を進んでいたら、友人が、道ばたの大きな桜の木の高い枝にサクランボの実がなっていることに気づきました。わたしにも分けてくれたので食べてみたサクランボは、甘くておいしかったです。

 道はやがて登りになり、

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Celleno, Viterbo (VT), Lazio 10:45

アスファルトの坂道を登っていくと凝灰石の城壁が現れ、その城壁に沿ってひたすら登り続けました。坂を登る途中で、夫が城壁の入り口を見つけて中に入っていったので、わたしも後について中に入りました。

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11:02

 そこには、今では無料で訪ねられる野外博物館となっている幽霊村、チェッレーノ(Celleno, Borgo Fantasma)がありました。

 紀元前に古代エトルリア文明が栄えていた時代から交通の要所にあったチェッレーノで、城壁に取り囲まれた村に人々が暮らし始めたのは中世の頃と考えられ、その小さな城塞は、14世紀末になって領主の要塞化した邸宅となり、その当時の邸宅の面影は今も見ることができます。

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10:54

 16、17世紀からすでに地震や土砂崩れの被害があったチェッレーノは、1930年代初めに何度も地震が起こり、特に北の斜面にある住宅地が危険にさらされていたため、過疎化が進んでいく古い地区の再建を放棄して、村の中心を1km以上離れた場所へ徐々に移していくことが決まりました。

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11:17

 こうして中世を起源とする古い居住区は、1950年代には住む人がなくなり、今では、1836年当時の村を再現した上の模型のうち、ピンクの楕円形で囲んだ部分が残るばかりとなっています。

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14:54

 この幽霊村を11時半頃後にして、昼食休憩のあと、さらに見晴らしのいい広い草原を歩き続けていたら、午後3時頃、城壁に囲まれたかつての住居跡が遠くに小さく見えたので、上の写真を撮影しました。

 今も残る古い城塞跡の、すぐ上の写真ではその左手にも、かつては居住地区がずっと続いていたのです。

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11:07

 けれどもその上の写真では左手にあったかつての居住地区には、今ではわずかに草が茂るばかりです。

 チヴィタ・ディ・バニョレージョが、度重なる地震や土砂崩れのために、かつては地面でつながっていたバニョレージョから分断されて過疎化が進み、もろい地盤の崩れがなおも続いているために、「死にゆく村、死にゆく町」と呼ばれるのに対し、このチェッレーノは同じ理由で、過疎化が進み村が放棄され、死んでしまい、幽霊になった村なのです。

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10:56

 上の写真で夫がのぞき込んでいる壁の中では、かつてパンが作られていて、奥の方には、十数人の人が、立ったまま中に入ることができるほど大きな窯があります。

 今では幽霊村、チェッレーノは、こんなふうにかつての村人の暮らしや職業を知ることができたり、付近で発見された陶器などを見たりすることができる博物館となり、観光地として訪ねる人も増えてきているとのことです。

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14:28

 興味深いチェッレーノの古城跡を40分ほどかけてじっくりと訪ねたあとは、さらにチェッレーノの新たな居住地区まで歩き、スーパーで昼食用の食べ物を買いました。そうして、公園の木陰のベンチで食事をし、しばらく休んでから、バールでコーヒーを飲んで、再びリュックを背に歩きました。

 かなり長い間、上の写真の広い草原を歩き続けていたら、遠くにボルセーナ湖畔にある村、モンテフィアスコーネが見えたり、先に写真でご紹介したチェッレーノのかつての古城や居住地区の跡が小さく見えたりしました。

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15:29

 この日の最終目的地に到着する前に、その近くにある大きな滝に、Via dei Tusciが示すのとは別の道を通って寄りたいと、昼食後に友人たちが言いました。けれども、わたしたちはすでに疲れていた上に、違う道を通って道に迷ったり標高差がさらに増えたりしては困ると考えて、トレッキングコースに従って歩くことにしたため、途中で友人たちとは二手に分かれて歩きました。

 日差しが暑かったのですが、幸いこんなふうに木々が影を落としてくれているところもしばしばありました。

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Castel Cellesi, Bagnoregio (VT), Lazio 16:24

 歩き続けて、最終目的地のカステッル・チェッレージ(Castel Cellesi)の中心広場らしき場所に着いたのは、午後4時24分のことでした。

 朝の出発前に、すでにサンタンジェロで壁画を見るために散歩をしていた上に、この日の行程は本来は13kmだったはずなのに、幽霊村であちこちを回ってじっくりと訪ねたりしたため、暑い中、リュックを背負って、この広場までにすでに15km近く歩いていました。(スマートウォッチのウォーキング記録はうっかりここで終了にしてしまいました。)宿は村はずれにあったので、このあと宿に電話をして道を尋ね、さらに歩いて午後4時40分頃にようやく到着しました。

 この日に夕食を食べた場所の写真とスマートウォッチによるウォーキング記録は、旅行中に投稿した次の記事にあります。



 暑い日だったので歩き続けるのが大変でしたが、サンタンジェロの美しい壁画の数々や、チェッレーノの興味深いかつての古城や居住地区の跡を見ることができて、充実した1日となりました。

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Articolo scritto da Naoko Ishii

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ブログテーマ:私の推し活!~推しは○○です~
Commented by yuta at 2024-06-29 07:25
ご無沙汰してました。
人が住んでる家に壁が描かれてるのですね。
村中見て回ると面白そうです。
日本は地震大国で最近も伊豆諸島で地震があり、
我が家も揺れました。
イタリアも地震国でしたね。
Commented by pothos9070 at 2024-06-29 08:39
こうした居住区がなくなっていくのはほんとに残念ですね。
居住区を再現した模型のお写真を拝見していると
ぎっしりと建っている住居の様子から
長崎の軍艦島を思い出しました。

不思議の国のアリスって、お国によって多少描き方が違うのでしょうか。
私のイメージよりはずっとお姉さんに見えます(^-^)
Commented by koito_hari616 at 2024-06-29 15:04
こんにちは

冒頭の画像の壁画「不思議の国のアリス」?
トランプ、忙しいウサギの執事に懐中時計、とアリス
凄いですね~
2枚目は少し悩みましたが7人の小人のようなので白雪姫?
かなぁ。。。。と(笑)

死にゆく村、死にゆく町  死んでしまい、幽霊になった村
イタリアは日本と同じく地震国ですね。。
Commented by milletti_naoko at 2024-06-29 16:19
yutaさん、お久しぶりです。
そうなんです。家の壁に壁画がある村はこれまでにも訪ねたことが
あるのですが、この村の特徴は、その絵がおとぎ話や物語など、
子供も大人も楽しめるものが多いことと、特に中心街ではあちこちが
絵で彩られていることだと思います。

それは心配ですね。どうかこれ以上大きな揺れがありませんように。
Commented by milletti_naoko at 2024-06-29 16:32
ぽとすさん、そう言えば軍艦島も幽霊島ですし、
遠くから見ると模型の村も軍艦のように見えますね。
後で草原から振り返って写した写真では、かつて家が
建っていたであろうところが崩れ落ちて崖になってしまって
いるようであるのが分かり、地盤がもろいためにまたいつ
崩壊するかも予測ができず、村を後にすることになったのだと思います。
イタリアでは地震のあとの再建にひどく年数がかかるのですが、
地震のたびに建て直して暮らしている村もあります。

確かに、言われてみれば、アリスの顔立ち、大人の女性のようにさえ
見えますね。
Commented by milletti_naoko at 2024-06-29 21:14
結うさん、こんにちは。
中心広場を美しい、誰もが知る物語の壁画が彩るなんて、
すてきだなと思います。
2枚目は猟師や小人がいるので、わたしも白雪姫だと思います。

何度も地震が起きてもそのたびに再建する村もある中、
この村はもろい土地の上に建つために、地盤そのものが崩れる
恐れがあったための判断だと思います。
Commented by ciao66 at 2024-06-29 21:28
途中でサクランボの実が食べられたり、
冒険のような街歩きだったり、
疲れる長歩きですが、とても変化に富んでいますね。
地盤が崩れて移転を余儀なくされても、
アートで飾られた町が残っているのは
元の住人にも観光客にも素敵なことかもしれません。
廃墟のような、でも、廃墟ではないような・・・
Commented by katananke05 at 2024-06-29 22:21
カナダに行った時に三階か4階建ての建物の壁いっぱいに いかにもそこに道があり 人が往来してるような トリック画が描かれていて
面白いと思ったのですが
イタリアは壁画が多いですね〜
童話のお話、、と言っても前の
おばあさんの絵は 笑ってるようだけど」怖いです〜
西洋のおばあさんは堀が深いだけに 怖さを感じること推しですね〜

1日目のところに ちょっと書いてしまっただわ〜ごめん 振り返ってみてちょ〜
Commented by milletti_naoko at 2024-06-29 22:38
ciao66さん、ちょうどこのあたりはサクランボのおいしい
産地であるようなのですが、何もない野山にも実のなる
桜の木があって、ありがたかったです。

すみません。ちょっと紛らわしい書き方をしてしまいましたね。
最初のアリスの壁画がある村と、地盤が崩れて移転を余儀なく
されて廃墟となった村は、別の村なんです。
Commented by milletti_naoko at 2024-06-29 22:41
katananke05さん、それはかなり大きいトリック画ですね。
イタリアでもたまにトリック画を見かけることがありますが、
壁画が多いように思います。
おっしゃるようにこのおばあさん、わたしもこわいなあと思いました。
Commented at 2024-07-10 11:07
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by milletti_naoko at 2024-07-10 16:17
鍵コメントの方、buongiorno!
イタリア語で別に説明した方が端的に情報を伝えられるかと思って、
時々バイリンガルになることがあります。それぞれ別の読者を
想定してのことなのですが、2か国語で書かれていることを
喜ばれる方が、学習者などでいらっしゃるかもしれないなとふと
気づきました。
そう言えば、マントで人々を守る聖母のフレスコ画、この旅行中にも
見かけたんですよ。
Commented at 2024-07-14 14:43
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by milletti_naoko at 2024-07-14 16:02
7月14日の鍵コメントの方へ
マントで人々を守る聖母の絵はあちこちで見かけるので、
トレッキング中に写真を撮ったかどうか、どこでだったか
記憶にないのですが、もし見つかったらまた何かの機会に
ご紹介しますね。
by milletti_naoko | 2024-06-28 23:36 | Via dei Tusci | Comments(14)