イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

『坊っちゃん』読んだ生徒が喜んでくれた菓子箱と夏目漱石と漱石枕流

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 夫婦いっしょに日本語を勉強する若い二人の授業では、今、趣味について話したり書いたりできるように勉強しています。

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 木曜日の授業中、趣味は「どくしょです」と若い奥さんが答えたので、さらに続けて日本語で話していて、ふと思い出し、「少し待ってくださいね。」と言って、

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こちらの菓子箱を取りに行きました。

 春に、1日をどんなふうに過ごすかについて会話をしていたときに、「まいにち日本語の本をよみます。」と言っていたので、本の名前を尋ねたら、「夏目漱石の『坊っちゃん』を読んでいます。」と答えたのを覚えていました。

 それで、5月に帰国したとき、夫へのお土産にと弟が贈ってくれたこの菓子詰めの箱に、坊っちゃんの登場人物たちの絵とあだ名が書かれているのを見て、いつかこの奥さんに見せてあげたいと思い続けていたのに、授業のときには忘れてしまって、見せそびれていたのです。

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 ちなみに、夏目漱石の『坊っちゃん』のイタリア語での題名は『Il signorino』です。

 二人ともとても喜んでくれて、箱に書かれたひらがなやカタカナをうれしそうに読んでくれたので、わたしもうれしかったです。

 「でも、漱石は本名ではないんですよね。」と質問されたので、

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 「漱石枕流」という故事について、どういういきさつで「間違いを認めない頑固な人」のことを言うようになったかを説明したら、もともと大学で中国語・中国文学を共に専攻していて知り合った二人は、興味を持って聞いてくれました。そうしてウォーキング中にふと「漱石枕流、イタリアにはこういう人が多いなあ、特に政治家には」と思ったりしたのでありました。

 若い奥さんは『坊っちゃん』、『草枕』、日本文学史の本を読んだあと、今は芥川龍之介の短編小説集を読んでいるのだとのことで、わたしが日本の高校で国語を教えていた高校生たちよりも、次々に日本文学の本を読んでいてすばらしいなあと感心しています。平安時代の作品などについても質問されたことがあるので、読書はそれほど好きではないだんなさんにも配慮しながら、日本の古典作品についても、時々授業で触れていけるように工夫したいと考えています。

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Matsuyama, Ehime, Giappone 17/5/2024

 愛媛大学教育学部の国文学の授業で『坊っちゃん』について学んだときに、「実は小説の中には松山という地名はまったく出てこないんですよ」と聞いて驚きました。もうずいぶん昔のことなのですが、わたしの記憶違いでなければ、その先生は「漱石は作品中で松山を馬鹿にしたような書きぶりをしているのに、松山の人はありがたがって坊っちゃん列車と名づけたりしている」とさえ言っていて、それを聞いて驚いた覚えがあります。漱石の作品の中では『坊っちゃん』は好きな作品で、楽しんで読んだ記憶があったからです。

 その先生の言葉が本当かどうか、松山の描き方がわたしの心にはどう写るかを知るために、いつか『坊っちゃん』を読み直してみなければいけません。

 そんなことを考えつつ、最後に一枚、松山城の写真を添えておきます。

Articolo scritto da Naoko Ishii

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Commented by Kazeango at 2024-10-13 10:17
翻訳家はすごいですね!
書名「坊ちゃん」はそのまま日本語しかないんじゃ無いかと思いきや、signorinoとは。
未熟な紳士感が出ていて言い得て妙だと拍手です!
(って、上から目線で失礼ですが)

私も久しぶりに「坊ちゃん」を読みたくなりました。
Commented by bondgirl123 at 2024-10-13 11:23
こんにちは。
坊ちゃんが地方に来たのをグチるのが狭量に感じるのが、ちょっとイヤな感じなんですが、キャラクターが際立っているから、人気なんでしょうか❓
Commented by ciao66 at 2024-10-13 15:16
なるほど「漱石枕流」は、「枕石漱水」の故事を言い間違えた、
「間違いを認めない頑固な人」だったんですね。
そのほかに、
「ひどく無理矢理なこじつけ」という意味もあるようで、
ひょっとして、この考えもぴったりかもしれません。
漱石には世間の考え方とのズレが有ったでしょうから、
そのように誤解されたかもしれませんので。

文庫本の表紙がいいですね!
今はリニューアルしてこうなっているんだと。
Commented by nonkonogoro at 2024-10-13 19:53
お菓子の包装紙のイラスト
坊ちゃんって こんながっちりした人だったのねえ(笑)
なんとなく スマートな姿を想像していました。

小説では
松山をバカにしているというのでもなく
他の先生方のことを あれこれ言っていただけのような~
東京から見ると やはり田舎というイメージで
捉えていたような。。。
Commented by katananke05 at 2024-10-13 21:13
わたしは 読書が大好きですが「坊ちゃん」も 「吾輩は猫である」も読んだことがないです、、
イタリアの方が読んでいるとは 恥ずかしい次第ですが 読後感でもかかされれば きっと読むことでしょうが、、 情けないね、、

松山城はロープウェイで上がったけど 高いところにあり
街が眼下にみえて 景色が良かったですよ〜
Commented by milletti_naoko at 2024-10-14 23:23
未来子さん、言い得て妙ですよね。
わたしも題名を聞いて、そう思いました。
読んだのがもうずいぶん昔なので、わたしも近いうちに
読み返してみたいと思います。
Commented by milletti_naoko at 2024-10-14 23:33
bondigirlさん、わたしも地方とか田舎とか、先進国ではないとか、
自分のものではない町や国に対して、どうも色眼鏡で見たり
話したりしがちなのは、特に教養も学識もある明治時代の大人の作家
としてはどうかなと思います。

大学時代は読まなければいけない本が多数あったので、すでに読んでいた
『坊っちゃん』はあえて読み返さなかったのですが、また読んでみて、
自分なりに考えてみたいと思います。
Commented by milletti_naoko at 2024-10-14 23:35
ciao66さん、どんな理由で漱石がこの名を選んだのか、
またどこかに書かれていたら、分かったらおもしろいですよね。

そうなんです。この表紙、わたしも味があっていいなあと思いました。
Commented by milletti_naoko at 2024-10-14 23:44
のんさん、そうなんです。
わたしも坊っちゃんはほっそりとしたイメージを持っているので、
この絵を見て驚きました。

わたしは確か高校生のときに読んで以来だと思うので、また読み返して
みたいと思います。ご感想をありがとうございます。
Commented by milletti_naoko at 2024-10-14 23:47
katananke05さん、実はわたしも『吾輩は猫である』は
まだ読んだことがありません。時間は限られていて、
読みたい本は無数にあるので、どうしても選ぶことになりますよね。

松山城にロープウェイで! 5月に歩いて城山を登りはしたのですが、
ロープウェイで登ったのはずっと前の話で、懐かしいです。
by milletti_naoko | 2024-10-13 07:33 | Insegnare Giapponese | Comments(10)