イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

降る雨に登山道に滝・小川のように水流れ野の花咲くラヴェルナの森 テベレ川も上流・中流からほぼ満水

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 車でラベッチャへと向かう途中、前方に崖の上に築かれたラヴェルナ修道院(Santuario della Verna)が見えるところがあり、そのたびにカメラを構えては、夫に「もう何度も撮影しているのに」と言われながら、写真を撮ります。

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La Verna, Chiusi della Verna (AR), Toscana 15/3/2025

 夏は緑、秋には紅葉が美しい森も、今は雨がちの曇天の下、裸の木々が並ぶばかりです。

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 3月15日土曜日にラベッチャの駐車場から岩壁の下へと野原を横切って歩くと、けれども、吹く風に雲がなびき、わずかの間ですが青空が見えるときがありました。

 冒頭の写真を走る車の中から写したのは、トレッキングコースからでは、岩壁があまりにも近くにあるために、その上に建つ修道院の一部は見えても、教会は隠れて見えないからです。

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 降り続く雨に、苔の緑がいっそう鮮やかです。マツユキソウ(bucaneve)の花もつぼみも、そして緑の葉も雨のしずくをまとっています。

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 マツユキソウもヘレボルスも、花が下を向いて咲くため、濡れた落ち葉の上にひざをついても、撮影が難しいです。

 このすぐ上の写真の奥の方で、夫がしゃがみこんで写そうとしていたのは、木に育つキノコです。わたしは夫と同じ場所ではなく、

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しばらく歩いた先で、その同じキノコを撮影しました。花が咲くような、そんな生え方と色をしていて、おもしろいです。

 雨の日が続くので、こんなふうにキノコが育つのですが、雨が降り続くために、

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 トレッキングコースなどに水がたまるばかりか、小川となって流れているところさえ、土曜には少なからずありました。

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 ふだんはまったく水のないところを、こんなふうに時に小さな滝さえあって水が流れ落ち、その傍らにマツユキソウが咲いています。

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 流れがゆるやかなところでは、木々の間からのぞく青空も水面に映っています。

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 木々も水が流れる森もまだ冬の風情ですが、その岸辺には、冬の花であるマツユキソウと並んで、早春の花であるプリムラ(primula)ミスミソウ(epatica)が咲いています。ラヴェルナの森は、雨が降り続くとトレッキングコースが泥だらけになる箇所がいくつかあるため、泥の道を予想して、夫もわたしも登山用のゲイターをつけて歩いてはいたのですが、まさかこんなにあちこちに水が流れているとは思いもしませんでした。

 ラヴェルナ修道院は、標高1128mの高みにあります。昨年12月29日は雪が積もっていたため、歩きにくかろう崖下の森を避けてペンナ山へと登ったのですが、おそらく森には、その頃に積もった雪やその後に降り積もった雪が、雪の森を歩いた2023年2月のようにまだ長い間残っていて、その雪が最近気温が上がったために溶けて、こうして森を流れているのかもしれません。

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 落ち葉の間にできた水たまりに、苔むす岩が映る様子に、日本庭園を思いました。

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 この左下に見えるトレッキングコースは、冬の最中は雪が凍って足もとが滑りやすく、今のように気温が高く氷に足を取られる心配がないときでも、雨が降ると泥がちになります。その泥の道を避けて時々歩いていた右手の斜面に、今は歩きやすい細道が自然にできていました。

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 そうして、その小道を歩いたおかげで、そのさらに上の斜面に、ヘレボルス(elleboro)が群れ咲くところがあるのに気づくことができました。

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 雨が多いためでしょう。こんな珍しいキノコも見かけました。

 このラヴェルナの森を通って修道院へと向かうコースは、いくつものトレッキングコースや巡礼路と交わり、重なっている上に、修道院を訪ねたついでにと散歩をする人や、週末に団体で歩く人も多いため、どんなに天気の悪い日でも、たいていはわたしたち以外にも歩く人がいます。ところが先週の土曜日は、午後2時から、あるいは午後4時から雨がぱらつくという予報が出ていたものの、たいした雨は予想されていなかったというのに、森では誰も他の人に出会わなかったので驚きました。

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 この水仙の傍らにある車道のすぐ向こうに、森を通るトレッキングコースがあり、ここは修道院の境内にも近いため、そのコースの入り口にはいつもたくさんの車が駐車されていますが、この日は1台も車がありませんでした。すぐ近くにあるピアディーナ屋兼レストランも、土曜だというのに閉店でした。

 今ニュースでしきりに満水や洪水について報道があるアルノ川の水源も、ローマへと流れていくテベレ川の水源も、アッペンニーニ山脈の山中にあり、前者はトスカーナ州、後者はエミリア・ロマーニャ州のフマイオーロ山と州は異なりますが、どちらもラヴェルナからそう遠くない山にあります。わたしたちがこの日見たラヴェルナの森を流れる水は、やがては山のふもとを流れるテベレ川に注ぎ込むと思われます。ふもとのピエーヴェ・サント・ステーファノを流れるテベレ川は、ふだんはとても水位が低いのに、土曜には水量がかなり多く、さらにその下流にあるテベレ川のダム湖、モンテドッリョ湖(Lago di Montedoglio)が、かつて見たことのないほどの満水となっています。

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https://it.wikipedia.org/wiki/Tevere#/media/File:Tibre.pngの地図にわたしがピンクで書き込んでいます。

 エミリア・ロマーニャ州のフマイオーロ山を水源とするテベレ川(Fiume Tevere)は、トスカーナ州、ウンブリア州を流れ、ローマのあるラッツィオ州へと向かいます。トスカーナ州にはモンテドッリョ湖、ウンブリア州にはコルバーラ湖(Lago di Corbara)と、テベレ川の水を堰き止めるダム湖があり、この二つのダム湖の位置を上の地図にピンクの星印、で示しています。また、ダムの正確な位置や周辺地域の地図については、かつてこちらの記事でご紹介しています。ウンブリア州でも最近はしばしば雨が降っているのですが、下流域の洪水を避けるためでしょう、先々週の土曜日にオルヴィエートに行く途中、すぐ傍らを通ったコルバーラ湖はかなり低い水位に抑えられていました。けれども、先週土曜日にペルージャからラヴェルナへと北上して何度か横切ったテベレ川は、ペルージャ付近でもトスカーナ州でもほぼ満水で、ウンブリア州のテベレ川についても、トスカーナ州のテベレ川のダム湖であるモンテドッリョ湖についても、満水とその後の危険が地方ニュースになっています。

 というわけで、多くの川の水源があるイタリア中部のアッペンニーニ山中で、たとえしばらく雨が降らないという予報が出ているにしても、今は森を流れる水が川に注ぎ込んで上流の水量が増える可能性があるわけです。どうかダムの放流について適切な判断が下されて、中・下流域で大きな被害が出ることがありませんように。

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ブログテーマ:冬の風景
Commented by getteng at 2025-03-18 08:10
naokoさん
崖の上にある修道院って興味があります。
外部、内部の写真を撮ることは禁止されているのですか?
Commented by koito_hari616 at 2025-03-18 11:35
こんにちは

小さなお花が下を向いて俯いて咲くのは小さなニンフが居るから?
なんて。。乙女チックに想像してしまいました
へレボルスというのはクリスマスローズの種類なのですね
どうも、中々クリスマスローズの種類が覚えられません
林の中に雨で小川になり緑色の苔が石を覆って。。。自然の一部だと思ってしまいます
そんな所を散策できるなおこさん羨ましい💕
Commented by milletti_naoko at 2025-03-19 01:06
gettengさん、修道院の中には修道士以外、あるいは宿泊する人以外は立ち入り禁止の場所もあるのですが、それ以外の場所では、たとえばミサや大きな十字架を携えた修道士に続いて行われる行進など、宗教的な儀式や儀礼の最中でなければ、内部を撮影することは可能です。

わたしたちは年に10回ほど、わたしだけでもこれまでにおそらく数百回訪ねて森も歩いていて、記事もかなりの数を書いているため、内部の写真をご紹介している記事を見つけるのが難しいのですが、例えば次のような記事が見つかりました。二つ目は昨年末の記事なので、おそらくgettengさんもご覧になったことと思います。

・義父母とラヴェルナ、聖フランチェスコが聖痕を受けた聖地
 https://cuoreverde.exblog.jp/25527107/
・聖フランチェスコ聖痕800周年控えたラヴェルナ修道院へシクラメン咲く森を通って
 https://cuoreverde.exblog.jp/35893481/

ラヴェルナの修道院や森、トラジメーノ湖やペルージャ、シビッリーニ山脈などは、それだけでタグやカテゴリができるほど記事が多くはあるのですが、それぞれトスカーナを訪ねて、ウンブリアを訪ねて、旅行などといったタグにまとめてしまっているため、そうして、現在ではブログ内を検索しても投稿した年月順には並ばないため、自分でも探すのがなかなか大変な状況になってしまっています。
Commented by milletti_naoko at 2025-03-19 01:18
結うさん、こんにちは。
この季節の山や森は、いろんな野の花が咲き、水にあふれていて、
歩くのが楽しかったです。

今頃クロッカスやスミレ、プリムラがきれいに違いないフィオンキ山に
行ってみたいとしばらく前から言っているのですが、標高が高くて
風が冷たいだろうと、夫がなかなか乗り気になってくれません……
Commented by meife-no-shiawase at 2025-03-19 15:17
雨に濡れたラヴェルナの森の情景が、
写真とともにまるで目の前に広がるようで、心を奪われました。

苔むした岩や水に濡れたマツユキソウ、プリムラやミスミソウ、そして珍しいキノコたちまで…。
キノコの色は森の中でも目立つような感じでかなり鮮やかですね。
それでも森の静けさと美しさが、しっとりと伝わってきます。

水の流れがいつもと違うようすや、満水のテベレ川、ダムの水位の変化など、
自然の力の大きさを改めて感じました。

穏やかな美しさの中に、どこか緊張感も漂うこの季節ならではの景色ですね。
どうか下流域に大きな被害がでませんように・・・。
Commented by milletti_naoko at 2025-03-20 05:13
メイフェさん、ありがとうございます。気温の変動に花たちも
とまどったのでしょう。いろんな花がいちどきに咲いていて驚きましたが、
緑の森が花いっぱいで、とてもきれいでした。
感慨をメイフェさんも感じてくださったと知って、うれしいです。

こういう黄色いキノコは初めて見ました。この手のオレンジ色、あるいは赤みがかった
キノコは以前にも見たことがあるのですけれども。
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by milletti_naoko | 2025-03-17 20:46 | Toscana | Comments(6)