イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

朝は日に光る窓と月 夕べは湖畔の店へ


 昇りゆく朝日の光に、窓ガラスがきらめき、その丘の上には沈みゆく白い月。

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Perugia, Umbria 19/3/2025

 昨日の朝は窓の向こうにそんな珍しい風景が見えて、カメラでぱちりと撮影しました。先週楽しみにしていた満月は、夜も翌朝も雲に隠れて見えなかったので、朝日と月のこんな共演が、ことさらにうれしかったのです。


 イタリアでは、昨日、3月19日が父の日でした。そこで、夕方は帰宅した夫と共に、お義父さんにプレゼントを贈ってお祝いを言い、それから、3月15日に営業を再開したトラジメーノ湖畔のお気に入りの店に向かいました。

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Magione (PG), Umbria

 6時20分には日が沈んでしまい、着いた7時半頃の外気温が5度と低いので、わたしたちも他の客同様に、屋内で食事をしました。外は暗いのですが、それでも左手には、芝生の向こうに広がる湖と、対岸である西の岸辺の明かりが見えています。右手の窓ガラスに、屋内が幾重にも映り込む様子もおもしろいです。

 先日別の店で食事をしていたら、たまたまこの店を経営する一家となじみの給仕の人とその家族も夕食にとやって来て、しばらく皆と話をしました。そのときに、これまで長い間勤めてきた店の給仕の人たち数人と、作るピザがおいしく写真も得意なピザ職人が、今年は個人的な事情で店で働かないという話は聞いていました。その誰もが何年も親しんでいる人たちなので残念に思ったのですが、ピザ職人は、そのピザがとびきりおいしく、どんな粉を使うかも日々研究を重ねていて、夫は店に行くたびに、職人さんとのおしゃべりとピザを楽しみにしていました。

 ですから、今年初めてのお気に入りの店での夕食は、きれいな夕焼けは見られなくともなじみの皆と会えるのが楽しみであった一方で、新しい職人さんはいったいどんなピザを焼くのだろうという心配がありました。夫はピザにはうるさく、自分はこういうピザが好きだという好みがあって、ほぼ間違いなく毎回おいしいと喜んで食べられる店は、かつてのこの湖の店を含めて三つありました。ほぼ間違いなくというのは、そういう店でもまれに残念というピザもあるからです。

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 「三つありました」というのは、残念ながら、昨日夫が食べたピザは、一般的な基準から考えればおいしくはあるのだけれども、「ピザがおいしいからぜひまたここに食べに来たい」と、夫が思うほどのピザではなかったそうだからです。ピザの生地が厚いか薄いかには地域差や個人の好みがあるのですが、夫はナポリ風の厚みのあるピザが好きで、かつての職人さんはそういうピザを焼いていました。ところが、昨晩のピザは味も残念だった上に、生地も薄かったのです。支払いの際に夫がレジの若者に自分の感想を伝えると、「今夜はまだ早いので窯の温度の問題もあるでしょうし、新しいピザ職人は長い経験はあっても、この店ではまだ働き始めたばかりですから、これからまたおいおい、お客さんたち皆が満足できるおいしいピザを焼くようになると思いますよ」と言っていました。今はもうピザ職人としての仕事はしていないというかつての職人さんの焼くピザを、夫が他の店に増してことさらに好きであったことも、湖の夕景が美しく店の人が皆なじみで居心地がいいことに加えて、近年は春から初秋にかけて、ピザはもっぱらこの店に食べに行っていた理由でした。

 夫のためにも店のためにも、そうして、今年もまたかつてのようにこの店で湖の美しい夕焼けを楽しみながら食事ができるように、どうか次回は職人さんが、夫がおいしいと喜ぶピザを焼いてくれますように。あそこまで夫が好きだったピザと同じようにおいしいピザを期待することがそもそも難しいとは思うのですが、心からそう願っています。

 わたしが食べたヨーロピアンパーチの串焼き(spiedini di persico)は、おいしくて量も多かったのです。そうして、店のなじみの人たちとあいさつを交わして、おしゃべりすることもできました。中には久しぶりに会う人もいて、わたしはとてもうれしかったのです。


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Nel cielo la luna, sulla finestra
il sole mattutino
si salutano, ci salutano
Perugia, Umbria 19/3/2025
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ブログテーマ:今日いち「ハピネス」だった事
Commented by meife-no-shiawase at 2025-03-21 17:12
ご主人様のピザへのこだわりにも、思わず頷いてしまいました。
「この店のこの人のピザが好き」という確かな好みがあって、
それがまたご夫婦での食事をより特別なものにしていたのですね。

“とびきり好きだった味”に出会うことはなかなか簡単ではないけれど、
その味にまた出会える日が来たらきっと格別な喜びになるのだろうなと思います。
なおこさんがご主人様の好きな味であることを願っていらっしゃるお気持ち
優しいな~♪と思って拝読しました。

心がやわらかくなるような朝と夜の風景も
幸せな気持ちになりました。
Commented by milletti_naoko at 2025-03-21 18:18
メイフェさん、湖に沈む夕焼けや店の人の温かさ、居心地のよさはもちろんですが、
しばしば出かけていたのは、何と言っても夫好みのおいしいピザが食べられたから
なんです。週に一度はピザを食べないと禁断症状が出そうなほど、夫はピザが好きで、
以前は夏も週ごとに、この店とマジョーネのやはりお気に入りの店に交互に行っていたのが、
近年はほぼここにばかり行くようになったのは、ピザのおいしさのためだと思います。

店主自身がもともとおいしいピザを焼く職人さんでもあったのですが、長年の仕事で腕を
痛めてしまい、別の職人さんでよい人を見つけ、そのピザがまさに夫の好みにあっていた
んです。おいしい職人さんが焼いても、ピザの具が違ったり、窯が熱すぎたり、よくあること
なのですがここに限らず夫を見てサービスにとふんだんにチーズを載せてくれると、夫は
実はチーズが多すぎるピザはあまり好きではなかったりと、必ずしも夫の希望どおりで
ないこともあります。どうか次回は、夫がおいしいと思えるピザでありますように。
夫のためでもありますが、そうでないと行く機会がぐんと減ってしまう恐れがありますので、
わたしのためでもあるんですよ。

温かいお言葉をありがとうございます♪
Commented by katananke05@ at 2025-03-21 20:58
夫様の大好きな美味しいピザがまた たべられるように、、と気を揉んでいる なお子さんは
ほんと優しいですね〜
われらも ずう〜と町に行きつけの 居酒屋が あったのですが、、(20年以上)
ご主人が目利きで 本当に美味しいマグロを リーズナブルな値段で出してくれ
他にも 高級料理屋でしかおめにかかれない 珍しい魚のお刺身など
ずいぶん楽しませてもらったけど 街の再開発と ご主人の体調とで クローズしたのが
本当に残念でした〜
でもきっと 次のピザ職人さんも 切磋琢磨して(味のわかるご贔屓のかたのために、、) 美味しいピザ すぐに出してくれるように なりますよ〜  
Commented by milletti_naoko at 2025-03-21 22:38
katananke05さん、ありがとうございます。夫のためでもありますが、
夫がおいしいピザが食べられないと、店に行ける回数が減ってしまいますから、
わたしのため、店のためでもあるんですよ。
なじみのお店が閉店してしまうというのは、食事はもちろん、居心地の
よさやお店の方とのつながりとか、いろいろなものが失われてしまうので、
寂しいですよね。そういうお店を大切にしたいと思います。
わたしもきっとそうあるだろうと期待しています。
Commented by getteng at 2025-03-22 11:15
naokoさん
貴国ではどちらの方向にカメラを振ってもいいシ-ンが撮れそうですね。
家屋に高さや色彩、形状などの制限がありますか?
意識的に見られてもいい雰囲気になっているように感じます。
Commented by milletti_naoko at 2025-03-22 18:40
gettengさん、山や自然公園、歴史的中心街などには
景観を損なわぬよう、改築などの際にかなり厳しい基準が
あります。

山の家も、窓の位置や大きさなど、あれこれ規制があって改築が
大変だったのですが、おっしゃるように、その基準のおかげで、
山でも町でも景観が保たれているのだと思います。
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by milletti_naoko | 2025-03-21 00:25 | Umbria | Comments(6)