イタリア写真草子 ペルージャ在住、日本語教師のイタリア暮らし・旅・語学だより。

ロシア語でも「リュックサック」世界を満たせ 異国の人と文化への敬意と関心

 先日日本語の授業でリュックサックという言葉が初めて出てきて、この言葉は難しいんじゃないかしらと思っていたら、ロシア人の生徒もイタリア人の生徒も、すぐにzaino(「リュックサック」を意味するイタリア語)のことだと分かってそう言ったので驚きました。

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Sant'Angelo di Roccalvecce, Viterbo (VT), Lazio 6/6/2024

 リュックサックは、なんとロシア語でもリュックサックと言うのだそうです。イタリア人の生徒が英語でもこう言いますよねと言ったのは、イギリス英語のrucksackの二つ目の母音を、イタリアの人はイタリア語風に/u/と発音しがちで、イタリアではイギリス英語を学ぶためでしょう。英語でリュックと言うと、backpackとknapsackを思い浮かべるわたしは、英語にもリュックサックと表記や発音が似た単語があるのだと知って驚きました。

 そうして、いったいどこの国の言葉に由来するのだろうと調べてみたらドイツ語が元とのことなので、そう言えばドイツの人は登山やトレッキングが好きでよく歩きますよねなどという話になったりしました。

 そんなおしゃべりをしながら、遠い昔、小学生か中学生だった頃に学校の図書館で読んだ世界の童話全集の中に、「背のう」という言葉が出てきて、兵隊さんが背負うというその背のうとはどんなものだろうと当時は想像しながら読んだことを思い出しました。そして、その全集ではリュックサックを「背のう」と訳していたのだと、今になって気づいたりしました。

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 寿司にせよ、リュックサックにせよ、かつては世界のとある国で食べられていたもの、使われていたものが、他の国でも食べられるように、使われるようになり、それと共に言葉も世界の言語の中に浸透して伝わっていくというのは、おもしろいと思います。

 グローバル化が進む今では、物や言葉の国境を越えての浸透や定着がますます進んでいるように思います。わたしたち人間も、今ではもう自らが生まれた国にとらわれずに、外国に興味を持ったり、旅や暮らしの場として行ってみたり、住んだりするようになることが、かつてに比べてずっと増えているように思います。

 中国語と中国文化を、ロシアとイタリアという互いに遠い国に生まれ育った二人がそれぞれに祖国の大学で学び、中国での留学中に出会って結婚し、今は日本語に興味を持って、日本から来てイタリアに暮らすわたしから、いっしょに日本語を学んでいる。そういうことが自然に起こる世の中なのです。

 異なる国に生まれ育った人や異なる文化に対する敬意と関心、思いやり。本来人が率直に抱くであろうそうした思いを軸に、国と国が、そして人と人が、もっと尊重の気持ちを持って交わることができる、共に生きていくことができる、どうかそういう世界であってくれますようにと、最近の世相を見聞きするにつけ、願わずにはいられません。

 その思いや願いを、言葉や写真を通して、これからもブログなどを通して伝えていくことができますように。



 写真は昨年6月に友人たちとリュックを背に歩いた長距離トレッキングコース、Via dei Tusciの写真の中から、リュックサックを背負う夫たちと共に壁画の力作が写るものを選んでみました。

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Commented by getteng at 2025-04-16 20:14
naokoさん
壁画村の絵を描いたのはプロの画家なんでしょうね?
描かれている絵は数にしてどのくらいあるのですか?
Commented by nonkonogoro at 2025-04-17 10:46
今の若い人は リュックサックって言わないようですね。
スキー用語は ドイツ語が元になっているので
英会話教室では 通じませんでした。
シュプール ボーゲン など

背嚢
兵隊さんが背負っていたリュックですね。
外来語は使わない時代だったのかな?
第二次大戦の時は 英語圏が敵国だったので
野球用語も みな 日本語でした。

私達の高校は春の選抜高校野球の 大会歌を歌ってきましたが
私の頃は 「長棍痛打ちょうこんつうだして 熱球ねっきゅうカッと飛とぶところ」という歌詞でした。
カットは cutではなかったのですね(笑)
Commented by pothos9070 at 2025-04-17 18:06
こんにちわw
リュックサックとバックパックとナップザックは私、大きさや機能の違いで分けてあるんだと思っていましたが
リュックサックというのはもっと大きなくくりなんですね。
なるほどいろんな国で通用するんですね~
グローバル化…私は自分の生活の中では殆ど実感しないですが、ご説明を読んでなるほどと思いました(^-^)
Commented by milletti_naoko at 2025-04-28 17:22
gettengさん、訪ねてからずいぶん経つので、またいつか
この村の壁画について記事を書くときに、本などを見て調べて
詳しい数などをご紹介したいと思います。
100近くの絵があって、絵を描いたのが女性だけだと案内
があったことはよく記憶に残っています。
Commented by milletti_naoko at 2025-04-28 17:25
のんさん、なんと今の若い人はリュックサックとは言わないのですか!
日本の外来語がどこから来ているか、見てみるとおもしろいですね。

戦時中に外来語を規制するということは、イタリアでもありました。
2度とそういうことが起こりませんように。

Commented by milletti_naoko at 2025-04-28 17:33
ぽとすさん、ということは、バックパックも外来語として日本語に
定着しているんですね! 

今はイタリアでも、衣類の多くが、特にトレッキング関係だとアジア
の国で生産されていたりしますし、一方、チーズやオリーブオイルなども
世界に輸出されていて、世界全体が世界全体へと生産したものを送り出し、
またほしいものを取り寄せる時代になったのだなと感じています。
by milletti_naoko | 2025-04-16 06:17 | Viaggi | Comments(6)